主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』やドラマ『まだ結婚できない男』などに出演し、等身大の魅力で輝きを放つ女優・深川麻衣。そんな彼女の最新主演作となるのが、ヒューマンドラマ『おもいで写眞』だ。たった一人の家族だった祖母の死をきっかけに東京から富山に帰郷した29歳の音更結子。依頼人の思い出の地で“おもいで写真”を撮影するカメラマンとして働くことになり、次第に自身の心の傷を癒していく。これまでの活動や演じてきた役柄から穏やかなイメージをもつ深川が、不愛想な主人公を演じるため笑顔を封印したという本作。その撮影秘話を彼女に語ってもらった。
“結子”という役の作り方
「シャッターを切るリズムや声のかけ方にこだわったつもりです」
演じた結子は、嘘が大嫌いで、なんでも白黒ハッキリさせないと気が済まないという性格。笑顔は少ないし、いつも自分や何かに対して苛立っているという場面が多かったです。幼い頃に母に捨てられたというトラウマを抱えている結子を、そういった背景も含めて表現していきました。この映画には“怒り”がひとつのテーマだと思って撮影に望みましたが、実際に現場入ってみたら熊澤尚人監督の求めている感情が、脚本を読んで自分が想像していたものより遥かに大きかったです。そのズレを監督と相談しながら撮影しながら調整していきました。
幼なじみの一郎(高良健吾)との2人のシーンでは、監督から「ここで一郎を殴ってみて!」という脚本になかった演出も追加されて…! もちろん高良さんはドンと構えていて下さったのですが、今回いっぱい叩いてしまったので申し訳なかったです(笑)。
役作りとして、富山の方言やカメラの使い方、メイクアップなど技術面を撮影前から練習しました。特にカメラは普段は撮られる側なのですが、プロのカメラマンさんは「リラックスさせる“空気の作り方”が本当に上手だなぁ」と感じていたので、それを参考にしました。個人的には、シャッターを切るリズムや声のかけ方にこだわったつもりです。写真を通じて人と向き合い始める結子が、最初はぎこちないけど次第に会話を投げかけていくなど、変化をつけていきました。
“結子”と似ている部分
「 人生の壁にぶつかりもがいている感覚は同世代の女性として共感 」
社会に出ると“お世辞”や“社交辞令”のひとつも言えないといけないのかもしれないけれど、私自身結子と同じで思ってもいないことを言うのは苦手かな。例えば、お店で接客される時も褒められてばかりより、相手に寄り添って正直に接してもらえた方が私は嬉しい。一郎とお酒を飲んでいる時、結子が「29歳で何にもなれていない」と弱音を吐く場面がありますが、人生の壁にぶつかりもがいている感覚は同世代の女性として共感してしまいます。そんな白黒ハッキリつけないと気が済まなくて、“嘘”と“本当”のどちらかしかない不器用な結子を私は可愛らしいなと感じます。
心強い先輩方
「みなさんの存在が私にとって本当にとっても心強くて頼もしかった」
同じ事務所の高良さん、香里奈さん、井浦新さんと共演させていただきました。みなさんの存在が私にとって本当にとっても心強くて頼もしかったです。新さんは1日しかお会いできなかったのですが、その後にスタッフさん含めての中打ち上げで、「自分もそうだったからすごく分かるけど、監督からの演出に対して答えたいって気持ちで入っているから、ちょっとでも腑に落ちてないことがあったらちゃんとぶつかっていった方がいいよ」っていう言葉をかけて下さって…。自分のお芝居をやりつつも、周りのことも見て下さってたことがすごく嬉しかったです。だから私も、いつか仕事で後輩と一緒になったら、先輩方がしてくれたことを自分もできるような力をつけたいなと今回すごく思いましたね。
大ベテランとの共演
「 臨機応変に芝居に向き合う姿が印象的」
依頼人を演じた、俳優の大ベテランである吉行和子さんと古谷一行さんとも共演させていただきました。なにより印象に残ったのは、これまで培ってきた圧倒的な経験があるにも関わらず、臨機応変に芝居に向き合う姿です。私は監督の演出に上手く応えられず「はぁ、どうしよう…」と悩んでしまったり、必死になり過ぎて苦しくなってしまうことも多いのですが、お2人とも「監督がこう言うならこうしよう。こんなこともできるよ!」と、柔軟にその場その場を楽しんでいらっしゃるんですよね。そんな先輩方を見習い、私も芝居を“楽しむ”を今後の大きなテーマにしていこうと思いました!
MAI FUKAGAWA
1991年3月29日生まれ。
2011年から16年まで乃木坂46のメンバーとして活動し、卒業後は女優として活躍。初の主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』(18)ではTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞した。その他、連続テレビ小説『まんぷく』や『愛がなんだ』(19)、『水曜日が消えた』(20)など話題作に多数出演している。
Photo:菅慎一 Text:水越小夜子・エムクラ編集部 Styling:原未来 Hair&Make:白水真佑子
メイクアップアーティストになる夢に破れ、東京から故郷の富山へと帰ってきた結子(深川麻衣)。亡くなった祖母の遺影がピンボケだったことに悔しい思いをした彼女は、町役場で働く幼なじみから依頼された、お年寄りの遺影写真を撮る仕事を引き受ける。
監督:熊澤尚人
出演:深川⿇⾐ほか
2021年1月29日(金)全国ロードショー
(情報は記事公開時点の内容です)