【映画×音楽】あのころハマった日本語ラップの青春がよみがえる!『SR サイタマノラッパー』の魅力

元レコ屋の店員が音楽関連の映画を好き勝手にレビューしていくコーナー。初回は2009年公開の『SR サイタマノラッパー』をご紹介。

今でこそ日本語ラップって、Creepy Nutsなどの活躍もあり、市民権を得ている感じがありますが、ひと昔前は、一部の熱狂的なファンだけが好きなジャンルだったのかなって思います。ちょいダサい?的な。

でも実は、この映画が公開されたタイミングって、日本語ラップが今以上に盛り上がってた時期でもある。そういう背景を知っていると、この映画って魅力が満載なんですよね。

そもそも何なの!? このコーナー

というか、このコーナーって何?っていう・・・。

そもそもな話で申し訳ないんですが、音楽って、一昔前は趣味娯楽のメインジャンルだったと思うんです。多種多様な娯楽が増えた今、その存在感って昔ほどじゃないのかなって。

音楽ファンとしては、また昔のようにもっと盛り上がってほしいから、「音楽ってこんなに素晴らしいものだよ」ってことを伝えたいけど、ただ「MV見てね」、「この音源聴いてね」ってだけじゃ何も引っかからない気がするんです。

なぜなら、それより面白くて魅力的なコンテンツが多すぎるから。ユーチューバーとか。

とはいえ、やっぱり音楽が魅力的なコンテンツであることは伝えたい。

そこで、深く知って好きになってもらうには、音楽映画を観てもらうのが一番かなと思って、こんな雑な感じで紹介させてもらうってコーナーです。

『SR サイタマノラッパー』とは

というわけで、本題に入っていこうかと思います。

今回紹介するのは、『SR サイタマノラッパー』。簡単なあらすじは以下の通りです。

【あらすじ】

サイタマ県の片田舎でラッパーを目指す不器用な青年たちの、青春ストーリー。

レコ屋もライブハウスもないサイタマ県北部の「フクヤ市」。その地元のヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバーは、フクヤ市でライブをやろうと夢見ているが・・・。

メンバーである「ニートラッパー」の主人公イック、「おっぱいパブラッパー」のトム、「ブロッコリーラッパー」のマイティ、それぞれがある意味一途に音楽と向き合っていて、ふとした瞬間にグッとくる。同級生役で出演している元セクシーアイドルのみひろも良いアクセントに。

もちろん、一般的に有名な俳優が出てくるような商業映画でもなく、ロマンティックな恋愛ドラマでもないです。

興味深いのは、ワンシーン・ワンカットで撮影されていること。

妙なリアル感があり、知らず知らずのうちに自分も作品の中に入り込んでしまいます。

と、ざっくりと紹介すればこんなものだし、万人受けするかと言われればそんなことはなく、なんならちょっとB級映画的な雰囲気を感じます。

ただ、このコーナーで言いたいのは、この映画が面白いですよって話だけではなくて、この映画をどういう視点で楽しむかということです。

2000年代は日本語ラップ黄金時代

筆者が高校生で青春真っ只中だった2000年代初頭、軽音部ではMONGOL800やASIAN KUNG-FU GENERATIONをコピーする人が多いなど、まだまだロックが幅を利かせていた時代でした。

その中でも、ロックとヒップホップを融合させて一時代を築いたアメリカのリンキン・パークやDragon Ashなどの台頭により、ヒップホップが一気にメインストリームに登場した感じがありました。

特に、1999年にリリースされたDragon Ashの「Grateful Days」(ZeebraとACOがフィーチャリングアーティストとして参加)の衝撃は大きいと言えます。

すでに、RHYMESTER、キングギドラ、ECDなど日本語ラップレジェンドにより、そのジャンルが徐々に市民権を得始めていた時期でもあったため、注目されるのも時間の問題だったのかもしれないです。

そして、『SR サイタマノラッパー』が公開された2009年付近は、KICK THE CAN CREW、KREVA、RIP SLYME、ケツメイシ、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDなど、メジャー・インディーズ問わず、多くの実力派アーティストが登場した、日本語ラップ黄金時代と言っても過言ではないでしょう。

だからこそ、主人公のイックたちが夢を見るのもとてもよく理解できる。かっこいいリズムと刺さるリリックがあれば、もしやもしや、一気にスターダムに・・・なんてこともあり得るわけで。

ちなみに、日本語ラップにさらに火をつけた立役者的な番組でもある「フリースタイルダンジョン」は2015年から始まったので、そこから日本語ラップにハマったよって方は、ぜひ1990年代~2000年代の曲も聴いてみてください。

というわけで、この映画は、そういう時代的背景を感じながら観てほしいです。

なんかこの不器用さがかっこよくて好きなんですよね。

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