■2020年12月18日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開
配給:キノフィルムズ
【STORY】 夫を亡くしたダイアン、複数の男性と関係を楽しむビビアン、過去の離婚に苦しむシャロン、結婚生活の危機に直面したキャロルの4人は長年の友人で…。
このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。
ダイアン・キートン=『アニー・ホール』(’77年)、ジェーン・フォンダ=『コールガール』(’71年)、キャンディス・バーゲン=『パリのめぐり逢い』(’67年)、メアリー・スティーンバージェン=『メルビンとハワード』(’80年)……。これだけ懐かしのスター女優が勢ぞろいなんて、まさに夢の共演。それぞれに長~い年月を重ねてきても、人生の後半戦で<女としての幸せ>をもう一度追い求める超・熟女たちを嬉々として演じているのは、あっぱれです。
4人が演じるのは、それぞれの悩みを抱えながらも、読書をネタにおしゃべりを楽しむ“ブッククラブ”に集まる女性たち。まずは、大昔の離婚にいまだ苦しむシャロンと複数の男性との関係を楽しんできたビビアンの会話から。
シャロン:Who get involved in a relationship at 67? What’s the point?
67になって、誰が恋愛関係を始める? どんな意味が?
ビビアン:The point is to get laid. It’s always the point.
それはセックスよ。いつだってセックスに意味があるのよ。
<point(点)>は、広い意味で「問題点」「要点」。会話でよく聞く「What’s the point?」は、「要点は何?」「何の意味があるの?」「だから何なの?」と、シチュエーションによっていろいろと訳せます。<laid>は<lay>の過去形で、<get laid>は「(異性に)寝かされる」=「セックスをする」。日本語でいう「~と寝る」ですね。あからさまに「セックスをする」と言いたくない時は「get laid」。例えば、「Seems he got her laid at last!(彼、やっと彼女と寝たらしいわ!)」といった使い方ですね。
ダイアン・キートン演じる主人公のダイアンは夫を亡くしたばかり。偶然知り合ったパイロットのミッチェルの猛アタックに応えて。
ダイアン:Dinner tomorrow night?
明日の晩、お食事どう?
ミッチェル:Sounds great. I thought you’d never ask.
いいね。その言葉を待っていた。
「I thought you’d never ask.」の直訳は、「君は絶対に、そういう誘いをしないだろうと思っていた。」で、言い換えれば「やっと誘ってくれたね」、「そう言うのを待っていた」。例えば「I thought you’d never say sorry.(やっと謝ってくれたね。)」など、相手が願っていることを言い出さずに、やっと言ってくれた時によく使われるセリフです。
ところで、本作では豪華な女優陣のみならず、それぞれのお相手を務める男優陣の顔ぶれにも注目です。ミッチェルを演じるのは、『ゴッドファーザーPART Ⅲ』(’90年)で、ドン・コルレオーネの後継者に指名されるビンセントを演じたアンディ・ガルシア。まだまだセクシーな魅力たっぷり。ビビアンの長年のボーイフレンド役のドン・ジョンソンもTVシリーズ「特捜刑事マイアミ・バイス」でブレイクしたナイスガイ。そして、シャロンのデート相手には『JAWS/ジョーズ』(’75年)、『未知との遭遇』(’77年)でおなじみのリチャード・ドレイファス。みなさん、素敵に歳を重ねています。
ちなみに、シャロンの飼い猫の名前が<ギンズバーグ>なのは、嬉しい発見。判事である彼女は、今年9月に亡くなった実在の連邦最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグを尊敬している設定で、名付けたのでしょう。ちなみに、私が最初に飼った猫の名前は、その時に字幕を手がけていた『ハロー・ドーリー!』(’69年)にちなんで<ドーリー>と命名。以来、そのパターンを踏襲。『愛と哀しみの果て』(’85年)でロバート・レッドフォードが演じた<デニス>、オスとメスの2匹が来た時には『ターミナル』(’04年)の、トム・ハンクスの役名の<ビクター>。同じ母親を持つ雌猫にはキャサリン・ゼタ=ジョーンズの役名から<アメリア>。長い間、猫との暮らしが続いていますねぇ。
リチャード・ドレイファスが俳優としての円熟味を披露した感動ドラマ
『陽のあたる教室』より
作曲家の夢を抱きながら、高校の音楽教師の道を選んだホランド先生が、ニューヨークで歌手になりたい女生徒にアドバイスを。
If you have the passion and hunger, then go to New York and do what you want to do, no matter what anyone says.
もし情熱とやる気があるならニューヨークへ行って、自分の望むことをするといい。誰が何と言おうとね。
<no matter what>は、「たとえ~が~であろうと」という熟語。「Jodie is great no matter who she workswith.(ジョディは誰と共演しようと素晴らしい。)」、「I always make time to go to a movie, no matter when.(映画を見るためなら、いつでも時間を作る。)」など、<who>と<when>のバリエーションも一緒に覚えましょう。
(情報は記事公開時点の内容です)