戸田奈津子のスターこのひとこと:Pick Up Movie『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』
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元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件

■8月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:ギャガ

【STORY】キャリアウーマンの道を歩むサラが降り立ったのは、インド洋に浮かぶ楽園の島。そんな南国の開放的なバケーションを満喫しながらも、彼女の心が落ち着かないのは、元カレのジャクソンの存在だった。そんな中、ひょんなことから元カレと年季の入った小型機に乗ることになってしまい…。

このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。

 友人の結婚式に出席するためにインド洋にある楽園の島に向かったキャリアウーマンのサラ。ところが、乗った小型機のパイロットが離陸直後に死んでしまい、機内にサラと元カレのジャクソンだけが残された! そんな空でのサバイバルを描いた『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』。ふつうではめったに遭遇しないシチュエーションですが、そこは映画の醍醐味。ほとんど操縦経験のない2人のスリリングな奮闘を楽しみましょう。現代の若い“元”カップルが出ずっぱりなだけに、セリフも今どき風で、よく使われるものばかり。たとえば、数年ぶりに再会したサラに、ジャクソンがちょっと席をはずして外に出ていく時に言うセリフ。

ジャクソン:I’ll be back in a sec.

すぐ戻るよ。

 <a sec>は<a second(1秒)>の略。「すぐ」の意味で、とてもよく使われます。「I make a phone call. Give me a sec.(電話をかけるから、ちょっと待って。)」などですね。
 かつて島で出会って恋をした2人。ダイビング・インストラクターとして島に残っているジャクソンは、再会したサラを島に引き止めるために「君の下着を盗んだ」とウソの告白。するとサラが笑って。

サラ:You want me to go command?

私にノーパンでいろと言うの?

 <commando>は「コマンド部隊」というように「突撃隊」「ゲリラ隊」などを表す軍隊用語。この部隊の隊員たちの行動は勇気を必要とするので、同じように勇気を必要とする「下着を着けない」「ノーパン」の意味に転化。文字通り<go command(勇気ある)>の転化で、アメリカンな面白い発想ですよね。もうひとつスラングをピックアップ。シーンは、結婚式の前夜パーティ。サラは別れたジャクソンが来ているので、その姿から目が離せない。そんな彼女のソワソワを見とがめた親友のパスカルが。

パスカル:What are you looking at?

いったい、何を見ているのよ?

サラ:Busted.

バレたか。

 <Bust>は「犯人を逮捕する」であり、<Busted>は受け身になるので「逮捕される」こと。つまり、「身元がバレる」「化けの皮がはがれる」。ここではジャクソンを見ていたことが、パスカルにバレた(見抜かれた)という意味に。たとえば、隠し事が友人にバレた時に「Busted!」と言えばピッタリ。
 さて、本作のような危機はめったに遭遇しないけれど、それでも飛行機に乗った時にヒヤリとした経験をお持ちの方もいるはず。私の場合は、『地獄の黙示録』を撮影中のフィリピンのジャングルで、フランシス・フォード・コッポラ監督が自らの操縦でロケ現場に向かう時のヘリ。操縦席は両側にドアがなく、つつ抜け。私は当時6歳か7歳だった監督の娘ソフィアを膝に抱かされ、監督に「絶対に手を離すなよ」と言われて……機体の揺れもさることながら、「大事なお嬢さんを落としたら!」というハンパない緊張感。いや~、怖かったです(笑)。
 ちなみに、本作のもうひとつの見どころは、美しいモーリシャス島の蒼い海と空。十数年前によく訪れたハワイ島にある小さな入り江を思い出しながら、見入ってしまいました。いつも無人で、朝などはビーチでウミガメが甲羅干しをしていたり、美しいサンゴ礁の海中では魚が乱舞していて、まさに楽園。サポートもつけずたった1人でシュノーケリングを存分に楽しんでいたのですが、いま思えばかなり大胆? 昔は怖い物知らずで、無鉄砲だったんですねぇ(笑)。

▽“楽園”のような秘密の隠れ家が登場するロマンスあり笑いありのアクション

『ナイト&デイ』より

トム・クルーズ演じるスゴ腕スパイがキャメロン・ディアス扮するふつうの女性を危険な旅に巻き込むロマンチックコメディ。2人が飛行機に乗った途端に敵と大乱闘。しかもパイロットが殺されたために、トムは飛行機の不時着を試みるが…。セリフは空港のチェック・インでキャメロンが言った言葉から。

The bag is wicked heavy.

このバッグ、とっても重いの。
Point

<wicked>は「悪い」「邪悪な」の意味ですが、最近は真逆に「すごく」「超~」など、いい意味で使われます。たとえば「He is wicked handsome.(カレって、すごくハンサムなの。)」という具合。

(情報は記事公開時点の内容です)

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