戸田奈津子のスターこのひとこと:Pick Up Movie『Our Friend /アワー・フレンド』
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Our Friend /アワー・フレンド

■10月15日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座 ほか 全国ロードショー
配給:STAR CHANNEL MOVIES

【STORY】2013年の秋。夫婦のマットとニコルは2人の娘たちに、ある秘密を打ち明けようとしていた。そして、彼らを祈るように待っているのは親友のデインで…。

このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。

 今回の『Our Friend/アワー・フレンド』は、ジャーナリストのマシュー・ティーグが実体験を綴ったエッセイをもとに映画化。こういうテーマは、お涙頂戴になりがちですが、あまりセンチメンタルにならずハートウォームな仕上がり。後味は良好です。ピックアップするフレーズは、ニコルとマットとデインが知り合った頃の回想シーンから。舞台女優のニコルが舞台スタッフのデインに女友達のシャーロットを紹介しようとするが。

シャーロット:I’m not into him.He’s totally not my type.

私、彼ってダメなの。全然、私の好みのタイプじゃないから。

そして、その言葉を聞かされたデインは。

デイン:So, she’s not into me.

そうか、僕に興味ないのか。

 <into 〜>だけで、「(恋愛感情がらみで)〜に興味がある。~に関心がある」の意味。すごく簡単に使える表現で、たとえば「The moment I saw him, I’m into him!(彼をひと目見て、好きになっちゃった!)」など。回想シーンに登場する簡単な単語をもうひとつ。ジャーナリストのマットは各国の紛争地の取材に飛び回って留守ばかり。そんな彼に不服なニコルは予定を知らせてと言うと。

マット:I can’t give you a timeline.

予定なんか、分からないよ。

 「予定」が<schedule(スケジュール)>なのは誰でも知っていますが、最近はこのセリフのように<timeline(タイムライン)>と言うことが多いので、覚えてください。
 さて、病状が急変したニコルは入院。父親マットが2人の娘の世話をしているが、長女モリーはちょっと反抗期。そんな姿を見たデインが「なぜ父親に反抗する?」と尋ねると。

モリー:Mom gets sick and Dad just bosses us around.

ママが病気になったら、パパったら私たちに威張り散らすんだもの。

 <boss>は「(マフィア、ギャングの)ボス」とか、「権力を振りかざす人」。それを「動詞」にすると、「取り仕切る」「威張る」「こき使う」という意味になります。例文としては、「He bosses me around. Who does he think he is?(彼ったら、私をこき使うのよ。自分を誰だと思っているのかしら?)」。ところで、本作は過去を語る回想シーン、いわゆる “フラッシュバック”が多く、年代もランダムに挿入されているのでちょっと煩わしいところがあります。原作エッセイのタッチを尊重したのかもしれませんが、もう少しストレートに描いたほうがわかりやすいと思うのですが。そういえば、本作のエグゼクティブ・プロデューサーは巨匠リドリー・スコット監督。映画界屈指の映像派として知られ、SF映画や歴史劇など、幅広く良質作を生み出し続けているのはご存知でしょ? そんなスコット監督がコラボを望んだ本作の新鋭ガブリエラ・カウパースウェイト監督ですから、素晴らしい先達をお手本にさらに“技”を磨いて欲しいですね。ちなみに、スコット監督とは2005年公開の『キングダム・オブ・ヘブン』来日時にお会いしました。大御所ですから、ちょっと気難しさも感じさせ、どんな質問にも、ご自分が興味を持つ色彩やデザイン系の答えになってしまい、記者の方が困っていたのを覚えています。凝り性で変わり者の評判もありますが、だからこそ長きにわたり優れた作品を生み出し続け、今もなお現役。さらには後進の育成にも尽力しておられます。この先も数少ない大ベテランとして、よい映画を創っていただきたいものです。

▽リドリー・スコット監督&ラッセル・クロウ!『グラディエーター』コンビの再タッグ作

『ロビン・フッド』より

12世紀末のイングランドを舞台に、義賊ロビン・フッドの伝説に史実を織り込んだところは、さすが凝り性な監督。セリフは、死を目前にした騎士から家宝の剣を父に渡して欲しいと託されたロビンが。

Fate has smiled on me.

運命が私に微笑みかけた。
Point

日本語にするとちょっと芝居がかって聞こえますが、英語では友達に普通に使うフレーズ。<Fate has smiled on you.>と言えば「あなたって、ツイてるじゃない。」といった感じ。<You are lucky!>よりカッコいいでしょ?

(情報は記事公開時点の内容です)

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