小芝風花&川村壱馬『貞子DX』インタビュー 恐怖と緊張感とポップさが作る新しいホラー映画

 『貞子DX』のタイトルは「さだこディーエックス」と読む。社会のDX化――デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)が叫ばれるようになったこの2022年、日本が世界に誇るホラーアイコン・貞子までがDX化してしまった。本作ではかつて“呪いのビデオ”を媒介として拡散されていた貞子の呪いが現代社会に順応し、恐ろしいことにSNSの動画として流行してしまう。さらにビデオを観てから死に至るまでのタイムリミットが7日間から、たったの24時間へと短縮。危機と恐怖の連続で観客を震え上がらせる超体感型〈謎解き〉タイムサスペンスホラー”となった。主演は人気ドラマの劇場版『妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-』も話題の小芝風花と、人気グループ・THE RAMPAGEの川村壱馬。今回、新しく現代に蘇った貞子と対峙することになった2人に本作の感想を伺った。

いまや世界的ホラーアイコンの貞子

4c01da41e0d58443693b867081d2b9fd - 小芝風花&川村壱馬『貞子DX』インタビュー 恐怖と緊張感とポップさが作る新しいホラー映画

小芝:実はホラーって少し苦手なんですけど(笑)、貞子シリーズに出演できたことは本当に光栄なことだと思っています。呪いも割と信じるタイプなので、家族からは「絶対に(貞子の霊を)連れて帰って来ないで!」と言われていたので、「家の玄関に塩を撒いたほうがいいのかな?」なんて気をつけていたんですけどね。特に怖いこともなく、最後まで楽しく撮影できました。

川村:貞子という存在があまりにもビッグすぎるので、最初にオファーをいただいた時は正直半信半疑でした。映画の現場はまだ2作しか経験がなくて、どちらも不良の役でしたから、今回の「ちょっとズレていて残念な自称王子様」という役柄は自分にとって貴重な経験になりました。僕はホラーへの抵抗はそんなにないですね。映画だけじゃなくて、ホラーゲームの動画を観たりもしますし。いや、でも呪いは信じるタイプですね……(笑)。撮影前にお祓いをしっかりしていただきました。

小芝:安全祈願とヒット祈願のお祓いだったんですけど、神主さんに名前を間違えられたでしょ。「本当にちゃんとお祓いできてる〜?」って心配になっちゃいました。

川村:そう! せっかくお祓いしてもらうのに自分の名前が間違っていたのが一番怖かったです。これは不安でしょ(笑)。

「貞子シリーズ」は松嶋菜々子が主演を務めた『リング』(1998年)を第1作として、20年以上続く人気ホラー映画シリーズに成長した。2002年には『ザ・リング』としてハリウッドでリメイク版も制作され、日本で独自の進化を遂げた「ジャパニーズホラー」の魅力が世界的に知られることとなった。いまや「あまりにもビッグ」な存在となった貞子は『貞子DX』でさらに形を変え、容赦なく彼らに襲い掛かる。彼らは今回どんな役柄を演じるのか。

IQ200の天才&ちょっと残念な王子様

d7739c6f2328110656fac4d8c93148e0 - 小芝風花&川村壱馬『貞子DX』インタビュー 恐怖と緊張感とポップさが作る新しいホラー映画

小芝:文華という役柄は私の性格とは真逆だと思いますね。IQ200でとにかく頭が良い役なので、常に強くて動じないキャラクターなのかと思ったら、決して完璧な人間ではなくて、少し抜けてるところもあったりするんです。でも、そのほうがずっと人間味のある感じがしますよね。撮影現場で監督に追加していただいたセリフが意外とお茶目だったりして、撮影は最初に台本を読んだ時にあった、文華の冷たいイメージを崩していく作業でした。

川村:王司も実際の僕の性格とは全然真逆のキャラクターです。彼女が呪いを解くために一所懸命頑張っている横で、いちいちポーズをとってわざとらしく名言らしいことを言うような奴ですよ。いかに大袈裟にならず、自然にズレていくか。ホラー映画のなかで、今回の自分のようなキャラクターを上手に成り立たせることができるかどうか? というのは一つの課題として、特に大切に取り組みましたね。

監督は『屍人荘の殺人』(19年)や『仮面病棟』(20年)など、ホラーやサスペンスを得意としている木村ひさし。今回はこれまでにない貞子映画ということで、セリフの掛け合いのテンポや、物語が展開していくスピード感を重視した演出が大きな特徴になっている。木村監督は現場で台本にないセリフや動作をその場で追加し、演じている役者たちですら先の予想ができないという独特の緊張感を演出。その結果、SNSの普及で情報拡散のスピードが一段と早まった2022年という時代の空気が大きく反映された映画が完成した。

「自意識って要らない」

b63f15b1f5d951481e6559ab20b3b740 - 小芝風花&川村壱馬『貞子DX』インタビュー 恐怖と緊張感とポップさが作る新しいホラー映画

小芝:掛け合いがポップな部分も多いんです。怖いシーンとのバランスも良くて、とても面白いエンタメ作品になったなと思いました。監督がその場で演出されることが多かったですし、私が咄嗟に付け加えた一言がそのまま採用されることもありました。「なにがどこまで台本通りだったっけ?」というくらい(笑)。あのポップなテンポは現場で作っていった感じですね。王司(川村)の声はいつも落ち着いているから、彼なりにテンションを上げて演じていても監督から「もっと上げて! もっと!」と言われていて、「役と本人のギャップがすごいなぁ」と、横でニヤニヤしながら見ていました。

川村:自意識って、要らないですね……。自分が”恥ずかしい”という感情を少しでも抱いていたら、共感性羞恥で観客に伝わっちゃいますから。それだけは絶対にやっちゃいけないぞと。

小芝:わかる! 私も「映画のなかで自分がどういう風に見えているのかな?」と探りながら演じていました。

川村: お芝居のお仕事はどんな時でもそうなんですが、自分という要素を完全に消すことをまず意識して、まったくの別人である、という大前提を作るんです。普段の自分が少しでも残ってると違和感が出ちゃうので、そのタガというか、フィルターというか。それを外さないとできないリアクションってあるんですよね。そうすると、普段の自分であれば絶対にしないような行動が自然にできるようになったりする。

「ポスターのポーズも監督が考えました」

30dadc400d25113707b8c0926bfb1ca5 - 小芝風花&川村壱馬『貞子DX』インタビュー 恐怖と緊張感とポップさが作る新しいホラー映画

小芝:これも台本にまったく書いていなかったんですが、現場で監督が「(両耳の下を親指で押さえながら)ちょっとこうやってみて」とおっしゃって。これはツボを押して血流を良くする動作で、それで頭の回転が良くなったり、忘れかけていた記憶を取り戻したり……ということらしいんですよ。最初は冗談かと思って「なんですかこれ⁉︎ ホントにやるんですか?」と言ってしまいました(笑)。これも監督の演出なんです。まさかポスターになるくらい重要なポーズになるなんて、思いもしませんでした。しかも監督は動作の速度とか、指の開き方とか、こだわりというか、私にどうしてほしいかというイメージを強く持っていらしたみたいで、「もっとこうして!」と細かく直されながらポーズを作りました。

川村:監督と現場でディスカッションをしていくなかで、「そこまで激しく演じてもいいのか!」と思う場面がいくつもあったんです。僕もせっかくのチャンスですから、ここは自分をスポンジだと思って、まずはきちんと意見を聞いて、実際になんでもやってみて、でもちょっと戦うところは戦ってみよう、という感じです。僕がなにか言うたびにポーズをとるのも監督のアイデアです。現場で台本にないこともいろいろありましたが、むしろこちらからも「それならこんな感じですか?」と意見を出して、楽しみながら演じました。

俳優としての技量が大きく試される現場をともにした彼ら。お互いの印象についてはこう語った。

小芝:(川村は)真面目でちょっと天然なところもあるのかな。クランクインする前に川村さんの名前を検索してみたら、イカツい写真ばかり出てくるでしょう(笑)。知り合いから人見知りらしいとも聞いていたので「どうしよう!」と思っていたんですが、撮影前のお祓いの日もひとりで少し離れたところにいて、お祓いを受ける儀式の練習をすごくきちんとした姿勢でやっているんですよ。近くの人に「ひじをこうやって動かすらしいですよ?」なんて話をしているのを見てたら面白くて(笑)。実際はすごく接しやすいし、可愛らしいところがある人なんだなって。

川村: (小芝は)むっちゃいい子。ビビるくらい。座長としての振る舞いというか、仕事に向き合う姿勢もすごい。当たり前だろと言われるかもしれないですけど、スタッフさんの名前をバッチリ覚えてくるとか。当たり前のことを当たり前にやるって、実はすごいことだと思います。人として、素敵だなと。そういう姿を現場で見て、勉強させていただきました。その後の撮影の仕事で、今回の経験があったおかげで上手くできたこともありました。

厳しさとポップさのバランス

6829689b33e9bcb4d7b969dc2ad50705 - 小芝風花&川村壱馬『貞子DX』インタビュー 恐怖と緊張感とポップさが作る新しいホラー映画

小芝:それにしてもタイムリミットが24時間しかないっていうのも、なかなか絶望的ですよね(笑)。私が演じた主人公は基本的に冷静な性格なんですけど、「いつ呪い殺されてしまうのか?」という緊張感は常にありました。

川村:本当にね。時間なさすぎでしょう。僕の役って、「ホラー映画にこんなキャラクターがいてもいいだろうのか?」と正直自分でも思ってしまうくらいで、緊張感という意味では僕はそれを削いでしまう場面が多かったんです。それも監督の計算なんですけど。

小芝:妹(八木優希)やお母さん(西田尚美)の命も危機に陥っていて、特に私は焦る場面が多かったのですが、その緊張感をどうやって出していくんだろう? 厳しさとポップさのバランスをどうやって取ろう? というのは難しかった気がします。王司(川村)も最初からずっと危険な状況で、よくずっと一緒にいられたよな〜って。

川村:結果的に完成した映画では僕のキャラクターがいることで、ホラーが苦手な人でも観られる映画になったんじゃないかなと思います。うちのグループの仲間もホラーが大の苦手だというのに映画を観てくれて、「壱馬さんのキャラがいたから最後まで観られました!」って、本当に面白そうに話してくれました。そう言ってくれたら何よりですね。やってよかったなと思います。

主人公たちに残された時間はたったの24時間。あまりにも大胆にアップデートされた呪いのルールを、IQ200の天才と、自称“王子様”占い師のコンビが解き明かす。これまでの「貞子シリーズ」の設定を受け継ぎつつも、まったく新しい映画としても楽しめる作品になった『貞子DX』。演じている彼ら自身も完成品を観てビックリしたというサプライズを、同じように劇場で体験することができるだろう。

小芝風花 FUKA KOSHIBA

1997年4月16日生まれ。ドラマ「息もできない夏」(12年)でデビュー。映画初主演作『魔女の宅急便』(14年)ではキキ役で新人賞に輝く。その後もドラマ「トクサツガガガ」(19年)「美食探偵 明智五郎」「妖怪シェアハウス」(ともに20年)など多くの話題作に出演。2022年10月16日から、ドラマ「霊媒探偵・城塚翡翠」に出演中。

川村壱馬 KAZUMA KAWAMURA

1997年1月7日生まれ。THE RAMPAGEのメンバーに選ばれ、2017年にメジャーデビュー。ドラマ「PRINCE OF LEGEND」(18年)と同作の劇場版(19年)で俳優業にも進出し、『HiGH&LOW THE WORST』(19年)にも出演。グループとしてはニューシングル「ツナゲキズナ」が2022年10月19日にリリース。

Photo:塚原孝顕 Text:真鍋新一 【小芝風花】Styling:成田佳代 Hair&Make:竹下あゆみ 【川村壱馬】Styling:吉田ケイスケ Hair&Make:oya(KIND)

“呪いのビデオ”を見た人が24時間後に突然死するという事件が全国各地で発生。IQ200の大学院生・一条文華(小芝風花)は、自称占い師の前田王司(川村壱馬)と謎の協力者・感電ロイド(黒羽麻璃央)とともに、<呪いの方程式>を解き明かすべく奔走する。
監督:木村ひさし
出演:小芝風花、川村壱馬(THE RAMPAGE)ほか
●2022年10月28日(金)全国ロードショー

©2022『貞子DX』製作委員会

(情報は公開時点のものです)

あなたにオススメ