元宝塚歌劇団雪組男役スター・綾凰華が語る『誠の群像』-新選組流亡記-

宝塚歌劇団に第98期生として入団し、組まわりを経て星組に配属、2017に雪組へ組替えした元男役スター・綾凰華。新人公演で主演経験を積み、2022年に惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団。その後は数々の話題作に出演し、活躍の幅を広げている。そんな彼女が2018年に沖田総司役として出演した『誠の群像』-新選組流亡記-が時代劇専門チャンネルにて放送される。作品への思いやこれからのことを語ってもらった。

沖田総司として生き抜いたこと

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「沖田の無邪気さみたいなところは共感できます」

役作りの過程として、役が入りきっていない感覚があると、セリフが全然言えない時があります。例えば『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-で演じた槇村秀幸がそうでした。アニメの素晴らしいイケメンボイスのイメージが強かったので、自分の槇村としての声に出会うまでの時間は、本当に台詞が言えなくて…。当時はアニメを見返して、役を自分に落とし込んでいき、そうして自分がその役として生きられる声に出会えて、ようやくセリフを発せられる感覚になります。

『誠の群像』-新選組流亡記-は司馬遼太郎先生の「燃えよ剣」「新選組血風録」が原案で、現代では小説の沖田像が根付いていると思いますが、「史実では結構荒っぽいところもあったらしい」ということをご存じの方もいらっしゃるので演じる上でもポイントとして入れるようにしました。

沖田総司は天才剣士で有無を言わせない存在だと思います。三段突きも有名ですよね。私とは全く似ていないですね(笑)。時代柄もありますが、新選組のように文字通り「命を懸けて」という感覚は現代の日本にあまりないかと思います。でも、国のために誠のためにその時代を生きた方々がいたから現在の私たちがいるのだと思っています。沖田と私との共通点ですが、私は天然と言われることがあるので…(笑)、『誠の群像』-新選組流亡記-の沖田像の中の無邪気さみたいなところは重なるのかもしれません。

日本物が得意な雪組のこと

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「男役トップとしての責任を背負う望海風斗さんと土方歳三が重なる」

雪組の皆さんは日本物のプロフェッショナル。まず単純にその知識と技術力がすごい。日本物は着物の構造的に洋装のスーツのポケットに手を入れるような動きはありません。シンプルさを埋める男気や日本男子にしかない魅力が必要。洋物に取り組む時と表現が全然違ったので、そこはたくさん勉強しました。

時代劇の往年の俳優さんたちの所作を見ると、重心が低く安定していますよね。その一本締まっている佇まいを見て研究しました。重心を低く保つのは腰回りが疲れます。日本物を演じている時は、帯を巻いているせいもありますが、脱いだ瞬間の解放感がすごいです!

『誠の群像』-新選組流亡記-で印象に残っているのは、彩風咲奈さん演じる山南さん(山南敬助)を切腹させるか否かの会議のシーン。沖田は切腹を命じる土方さん(土方歳三)に対して「本当にあなたの本心はそれなの?」って疑問に思ってしまうんです。土方さんは“新選撰組副長・土方歳三”として在るために鬼となり、厳しい判断もする。沖田や近藤さん(近藤勇)が同じことをしても切腹させるのかと聞くと望海風斗さん演じる土方さんが「斬る」と答える時のヒリつきがすごくて…。毎回そのシーンで「ああ、もう土方さんは心を決めているんだ」と感じていました。沖田は“本当”の土方さんを知っていると思うんです。だから、新選組・鬼の副長として存在しなければならない土方さんの中の、“本当”の彼を見ていたのだと思います。

土方さんの姿は男役トップとしての責任を背負う望海さんと重なるところもありました。でも、望海さんは雪組のみんなにオープンにいろんな面を見せてくださる人。そんな望海さんがみんな大好きでした。

挑戦してみたいこと

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「自分じゃない人生を生きて、いろんな人と関わっていくって本当に面白い」

新選組は武士としての「誠」を貫いていますが、私にとっての「誠」=大切にしてるからこそ失ったら怖いものは、やっぱり“人との繋がり”ですね。もしかしたら沖田もそうだったかもしれません。舞台の上に立つお仕事は、人との繋がりがないとやっていけません。自分の心も大切にするけれど、もちろんファンの方や共演者の皆さんも含めて、周りにいる人たちの心のためにもやっていきたいなと思います。退団した今でも、宝塚歌劇団のお話をすればみんなと繋がれるなと思う。今までのように毎日会えるわけじゃないけど、「みんなあの劇場で頑張ってるから私も頑張ろう」と感じます。会えなくても気持ちは繋がっているんです。

今後の活動は、なんでもやってみたいです。卒業して1年たってもその気持ちは変わらないし、自分の心がときめく、情熱が燃える、そしてファンの方や新しい出会いに繋がるものに挑戦することが大事だと思います。お洋服に関わる仕事もさせていただいたので、モデルにも憧れます。舞台に出演して、毎回違う現場の違う作品に参加していると、人同士で作るものってすごいと感じます。ステージで自分じゃない人生を生きて、いろんな人と関わっていくって本当に面白いことなんです。お芝居もジャンルを問わず挑戦していきたいと思います。

舞台の生もの感が好きです。あの限られた時間で毎回同じことを演じながら、でも毎日違うことをしている。あのヒリヒリする感じも、生きているリアルな感覚がします。映像のお芝居はまだ経験したことが無いので、映画のお仕事などで学んでみたいなとも思います。怖がりなのでホラー作品よりは、心情描写がある作品がいいですね(笑)。でも立ち回りが大好きになったので、アクションもやってみたいかも! とにかくクリエィティブなことを続けていけたらなと思っています。

綾 凰華:Oka Aya
2012年に宝塚歌劇団に第98期生として入団、組まわり後、星組に配属される。2017年雪組へ組替えののち、2022年に『夢介千両みやげ』『Sensational!』にて宝塚歌劇団を退団。その後は舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語など注目作に次々と参加。現在はミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』(9月12日~23日よみうり大手町ホール、9月29日~10月1日サンケイホールブリーゼ)に出演中。

Photo:平野司 Text:ティーカップ小林 Hair&Make:塚原ひろの(ete)
※「司馬遼太郎」の正式な表記は「遼」のしんにょうの点が二つです。

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©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ 原案/司馬 遼太郎 作「 燃えよ剣」「新選組血風録」

2023年10月2日(月)よる10時~深夜0時30分
出演:望海風斗/真彩希帆/彩風咲奈 ほか
番組ゲスト:綾凰華

江戸時代末期、武士としての誠を貫き戦い抜いた土方歳三。その生きざまと、彼に惹かれる武家娘や共に時代を駆けた新選組を描く。

(情報は公開時点のものです)

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