神木隆之介&浜辺美波インタビュー 謎に包まれたゴジラシリーズ最新作『ゴジラ -1.0』を語る

 『シン・ゴジラ』から早7年。日本が生んだ偉大な怪獣、ゴジラの70周年を控えた2023年、シリーズ30作目となる『ゴジラ -1.0』(ゴジラマイナスワン)が満を持して公開される。『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督が新たなゴジラを演出するということ以外はほとんど一切の情報が不明だったこの作品のキャストやあらすじが、9月4日の完成報告記者会見でついに明らかにされた。この日、初めて「新作ゴジラ映画のキャスト」として世間に登場した神木隆之介と浜辺美波の2人に、さっそく今作の感想や見どころを伺ってみた。『ゴジラ -1.0』は、1954年に作られたシリーズ第1作『ゴジラ』よりも前の時代に当たる「終戦直後の日本」にゴジラが現れるという、今までに誰も観たことがなかったゴジラ映画だ。

「ゴジラは先輩のような存在」

神木 おそろしかったです。演者であることを忘れて、「あ、ヤバい。いる…」と思わず息をひそめてしまいました。ゴジラの映画を見ているというより、実際にゴジラと遭遇しているような臨場感なんです。自分がいままで関わった作品は完成すると冷静に観られることが多いのですが。そんなことはすべて忘れて、こんなにも怖くなってしまったのは今回が初めてですね(笑)。

浜辺 実は私、観ている時はまったく恐怖感がなかったんです。今の事務所(東宝芸能)に入った時から周りにゴジラのポスターや立像があって、ゴジラに囲まれて育ってきたといいますか、ずっとゴジラに守ってもらっていたような気がしていて。もちろん戦後の絶望のなかで単身で生きていく女性という私の役柄の重さはあるのですが、その一方でゴジラは私にとっては憧れの対象でもあって…。やっぱりワクワクもしますし、あのテーマ音楽を聴いただけで盛り上がりますし、「来たぞ!」っていうドキドキ感がありました。

神木 特撮や合成など、最終的に完成してみないとわからない部分が多かったので、僕らもすごく新鮮な気持ちで映画を観ました。そういう意味でいちばん驚いたのは音ですね。スピーカーが壊れてしまうんじゃないかというほど重低音の響きがすごかった。

浜辺 確かに。録音の仕方も少し特殊なやり方で、特にこだわりをもった部分だったと後で監督から聞きました。音が轟(とどろ)くんです。

「監督の脳内は完璧に再現されている」

音も映像も、あらゆることにこだわって本作を作り上げたのが山崎貴監督。記者会見では「劇場へ行って観るのにふさわしい、体感する映画を作ろう」というポリシーを語っていた。過去に『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(07年)にゴジラを登場させるなど、これまでも並々ならぬ怪獣愛をアピールしていた山崎監督のこだわりは、どのようなものだったのだろうか。

神木 監督が撮影現場で、実際に完成するとどんな画面になるのか、ゴジラがどう動くのか、CGの説明をしてくださるんです。「これがこう来て、あれがドワーンと来て、ガーンとなって、ブワーってなるんだよ!!!」という感じで、とにかく擬音が多かった(笑)。で、こっちは「ははぁ〜、なるほど〜」みたいな。実際に完成した映画を観たら、確かに現場で監督が伝えてくださった雰囲気はそのままでした(笑)。監督の脳内は完璧に再現されているんだろうと思います。

浜辺 特撮以外の場面でも、戦後という時代を描くことへのこだわりを感じることは多かったです。特に終戦直後の焼け跡、瓦礫の山はVFXではなくて、スタジオのセットで美術のスタッフさんと作り上げたものなんです。かなり高低差もあって、歩くのも大変なくらいでした。監督は、戦時中をどうにか生き抜いた私たちが戦後、時間をかけて少しずつ立ち直っていく、その過程もとても大切にされていたそうです。セットのリアルさのおかげで私たちもやりやすく、役にすぐ入っていけました。

神木 すべてがフィクションの世界であれば自由に想像ができますが、今も実際に体験した方がいる「戦後」というものに対する想いを、どこまで持ってゴジラに向き合うのか。最初に台本を読んで、そこがとても難しいなと。

浜辺 戦争中ではなくて、終戦の直後という舞台設定がとても珍しいですよね。もちろん実際にあの時代を体験していない私が、実際の出来事である戦争のことを考えて、映画では描かれない背景の部分も想像して演じなければいけない。そこに対する緊張感は私にもありました。

神木 ゴジラは映画のキャラクターだけど、史実は史実できちんと描かれないといけないですからね。僕に演じきれるのか? 僕はなにを表現できるか? それが今回感じたうれしさの反面のプレッシャーですね。ゴジラは、映画を観たことがない人でも知っている偉大な存在ですから。

浜辺 本当に夢のようなうれしい気持ちと、大作に関わることへの不安、ですよね。

神木 ただ、僕が演じた敷島というキャラクターは話し方やものの考え方がすごく不器用な、まっすぐすぎる人間で、そこには自然と親近感が持てました。そのとき彼はどういう想いなんだろう。きっと時代が違っても、人の性格はいつの時代も変わらない部分があるだろうと、山崎監督ともよく話をして、いろいろなやり方を試しました。でもお芝居だけの撮影より、やっぱりゴジラが絡む場面のほうが監督の口数は多かったですね(笑)。ゴジラ絡みの場面になると特にアツくなるんです。本当に楽しそうな顔をされるんですよ。

浜辺 エキストラで出てくださる方々もすごくプロ意識が高い方々が集まっていて驚きました。私が以前に出演させていただいた『アルキメデスの大戦』もそうだったのですが、何度も山崎監督の現場に出ていて、監督のねらいをよくご存じの方が多いそうなんです。

神木 どんな演出プランが出てきても、「あぁ、貴ならこう撮るよね〜(笑)」なんて言いながら監督の期待以上の演技をする。それくらいの慣れでしたよね。人々がゴジラから逃げ惑うシーンでは、本気で逃げるお芝居をするみなさんの気迫が本当にすごくて。自然と血の気が引いて、心拍数が上がって、「俺も逃げなきゃ!!!」って、本能で命の危険を感じるほどでした。あれは本当にただの撮影だったのかな?と今でも思いますが(笑)、そういう状況のなかでお芝居をしたことは良い経験になりました。

浜辺 撮影は2年近く前だったのですが、こんなにたくさんの人たちが携わっているのに、今の今まで一切作品の情報が漏れてないのもすごいと思いました。一応現場では、新しいゴジラ映画を作っていることは一部の人以外には秘密にして撮影していました。山崎監督が現場の人たち全体に説明をする時に「ここに大きな”怪獣”が出てきますので!」ということを仰るのですが、でもそれ、どう考えてもゴジラじゃないですか(笑)。

神木 スタッフ・キャスト含めた全員が「TEAM 山崎組」だったんですよね。

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「主役は僕らじゃなくてゴジラ」

撮影現場に生きているゴジラを実際に連れてくるわけにはいかないので、俳優たちはあくまでもゴジラの姿を想像しながらカメラの前で演技をすることになる。ゴジラの大きさは? もしゴジラが目の前に現れたら人間はなにを感じ、どんな行動をとる? 2人が役作りのうえで大いに参考にしたのは、山崎監督が2021年に手掛けた西武園ゆうえんちのアトラクション『ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦』だったという。

浜辺 監督と一緒に西武園ゆうえんちの『ゴジラ・ザ・ライド』に行ったんです。どういう目線でゴジラと向き合えばいいのか。そのときのイメージが、かなり演技をするときのベースになっていました。

神木 僕も観に行きましたが本当にすごい迫力でした。ゴジラと向かい合ったらきっとこうなんだろうなという実感、確かにありましたよ。アトラクションとして普通に楽しみもしましたけど(笑)、言葉にできない瞬間というか、すごいとか、怖いとか、そういうシンプルな感情のほかに、なんとも言えない不思議な感覚があったんです。その感覚はきっと僕が演じた敷島も持っていたはずなので、そこはお芝居に活かしてぜひ伝えたいなと思って。

浜辺 下から見上げたり、すごく近くで感じたり。今回の映画ではそこにさらに別のすごみが加わるので、現場では「想像できる限りのMAXの驚き」を表現できたらいいなと思っていました。

神木 ただ怖い!だけじゃないんです。怖いのに、思わず惹きつけられてしまうような恐怖がきっとゴジラにはあるんです。この世のものではない、未知のものに魅入られていくようなこの不思議な感覚は、実際に映画を観ていただければみなさんもきっとわかると思います。それこそがゴジラの魅力なんだろうなって。

浜辺 私が演じた役にしてみたら恐怖のどん底なのですが、ゴジラが街を破壊するシーンを観るとなぜかテンションが上がってしまって(笑)。爽快感と言ってもいいのかな? ゴジラが出てくると興奮するように遺伝子に刻まれているのではないかと思いました。ゴジラのカッコいい姿がしっかり楽しめるので、怪獣が好きな方にはたまらないと思います。

神木 出演者の一番上に「ゴジラ」って書いてほしいくらいですよ。

浜辺 実際、撮影中はそういう意識でした。「主演はゴジラだから」って。

神木 そうそう。僕らはゴジラという主演俳優に思いっきり振り回され
る役なんですよ。

浜辺 タイトルにもなっているし、ポスターにも大きく出ていますが、本当はゴジラにもキャストとしてここにいてほしいですよね。

神木 ね。本当の主役はゴジラさん、です!

『ゴジラ-1.0』

2023年11月3日(金)全国ロードショー

監督 脚本 VFX:山崎貴 
出演:神木隆之介、浜辺美波ほか

1954年に初めて姿を現して以来、日本のみならず世界中を魅了し、衝撃を与え続けてきた「ゴジラ」シリーズの70周年記念作品。舞台は戦後。焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。

Text:真鍋新一 Photo:平野司

神木隆之介/ヘアメイク:MIZUHO(VITAMINS) スタイリスト:カワサキタカフミ 

浜辺美波/ヘアメイク:George スタイリスト:瀬川結美子(sharey)

(情報は記事公開時点の内容です)

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