
史実に記されてこなかった戦後の沖縄を
壮大なスケールで描く超大作『宝島』
妻夫木聡×広瀬すず

妻夫木「覚悟や使命感、責任感が押し寄せてきた」
広瀬「ひとつの光や希望になったらいいな」
史実に記されてこなかった戦後、アメリカ統治下の沖縄を描き、真藤順丈の同名小説を映画化した『宝島』。混沌とした時代を全力で駆け抜ける若者たちを、壮大なスケールで描くサスペンス感動巨編となっている。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える若者集団のリーダー・オンが突然消息を絶ち、残されたグスク、レイ、ヤマコはそれぞれの道を歩みながら、オンの影を追い続ける。グスク役の妻夫木聡、ヤマコ役の広瀬すずに作品への思いや撮影秘話を語ってもらった。

妻夫木「とんでもないものができたな、と」
広瀬「見終わったときには呆然としました」
妻夫木聡「出演するにあたって、沖縄の人たちの想いを肌で感じ、同時にすごく覚悟や使命感、責任感が押し寄せてきました」
広瀬すず「男性が多い現場で、監督や妻夫木さんの熱量が伝わってきて、みなさんと一緒に過ごすだけで自然とヤマコの置かれる立場が見えて、役をつかむことができました」
妻夫木「グスクはみんなにとってのバランサーであり、それぞれを繋ぎ止めていたり、ときにはピエロになったり、いろんな顔を持ち合わせている。それに生きることを諦めない、いわば“エンジン”みたいな人だなって思いますね」
広瀬「ヤマコはずっと声を上げたかった人で、自分のお腹の奥にフツフツと湧いてくるものがあったんだろうなって思います。一見強い女性だけど、叫べなかったのはどうしてだろうって考えながら演じました。こんなに執着に似た決意を持って思い続けて、自分自身はすり減ってしまったんだろうって思います」

妻夫木「すずちゃんとお仕事するのは久しぶりですが、太陽みたいな存在のヤマコを演じてくれてありがたかったです。ヤマコが幸せになってくれたら自分たちも幸せだと思える、グスクたちにとっての唯一の救いとなっています」
広瀬「かなり長丁場の撮影のあと、ホテルで妻夫木さんを見かけたら、とっても疲れていらっしゃって。何か大きなものと戦っているんだって感じました。そこまでエネルギーを注ぎ込んでグスクを演じてくれました」
妻夫木「確かに忍耐力勝負なところはありました(笑)。役として作品のなかで生きようとして、集中力が切れないように1カット1カット全力でやるしかなかったですね」
広瀬「なんというか吠えているような、熱量が放出される現場をこの目で見られたことが貴重な経験だったなって思います。自分自身もその瞬間瞬間の集中力は高くて、いま思うと夢の中のような感覚なんです。そのパワーが全部画面に写っているから、映像はすごい迫力があります」
妻夫木「できあがった作品を見たときは、自分の演技の反省点は置いておいて、とんでもないものができたな、と思いました。簡単に咀嚼できないというか、立ち上がれませんでしたね。出演している人間が言うことじゃないかもしれないですけど、ここに込められた想いを受け止める大切さを感じました」
広瀬「込められた想いが伝わってくる力が強くて、見終わったときには呆然としちゃいました。ひとつの光や希望になったらいいなって思える作品になったと思います」
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会
1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギアー”と呼ばれる若者たちがいた。幼馴染のグスク、ヤマコ、レイの3人とリーダーのオン。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜にオンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。
●9月19日(金)全国公開
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
監督:大友啓史
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太 ほか
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
1980年12月13日生まれ。
1998年『すばらしい日々』で俳優デビュー。2001年『ウォーターボーイズ』で映画初主演を務め脚光を浴びる。2009年、NHK大河ドラマ『天地人』では主人公・直江兼続を演じ、『悪人』(2010年)、『ある男』(2022年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。
1998年6月19日生まれ。
2013年TVドラマ『幽かな彼女』で女優デビュー。2015年『海街dia ry』で注目され、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか数多くの新人賞を受賞。2017年『三度目の殺人』では第41回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得。他の出演作は『ちはやふる』『怒り』など。
Photo:平野司 / Text:入江奈々 / Styling:武久泰洋・Hair&Make:大上あづさ(妻夫木聡) / Styling:丸山晃・Hair&Make:奥平正芳(広瀬すず)