ジョージ朝倉の少女マンガ原作を実写映画化した『溺れるナイフ』。2016年に公開された本作を担当したのは、今注目の鬼才・山戸結希監督。主演に小松菜奈と菅田将暉を迎え、瑞々しい10代の心情をリアルに描く。
映画『溺れるナイフ』あらすじ
15歳のあの夏、私たちはどこまでも行けると信じていた…
主人公の望月夏芽は東京でモデルの仕事をしているが、両親の都合で、東京から離れた浮雲町へと引っ越してきた15歳の少女。
浮雲町は海や山があるものの、東京から来た夏芽にとっては何もない退屈な田舎町であった。
しかし、その町で彼女はある1人の少年と出会う。
その少年とは町の神主一族の跡取りである長谷川航一朗であった。
みんなからコウと呼ばれるその少年は、町の人から一目置かれている存在。
だが、そんな状況下であっても誰の目も気にせずに、自由奔放に生きる彼に反発しながらも、どうしようもなく惹かれていく夏芽。
また、そんな夏芽と心を通わせていくうちに、コウもまた夏芽に魅了されていく。
次第に距離を縮めていく夏芽とコウ。
2人でいれば、何も怖くない。どこまでも行けると信じていた。
しかし、ある事件が2人の運命を大きく変えてしまうことになる…。
10代の危うく煌めいた複雑な感情を美しい情景とともに描いた青春物語。
キャストは今を時めく演技派俳優陣!
小松菜奈×菅田将暉のダブル主演
主人公の望月夏芽役には小松菜奈、自由奔放な長谷川航一朗(コウ)役には菅田将暉を迎え、2人のダブル主演作品となっている本作。
脇を固める共演者には、2人が通う学校のムードメーカー大友勝利役にジャニーズWESTの重岡大毅、同じく小柄で大人しいクラスメイトの松永カナ役を上白石萌音が担当。
夏芽とコウの関係にも深く関わる重要な役どころを、ドラマに主役として出演するような実力派俳優の2人が見事に演じきっている。
その他、モデルとしての夏芽を高く評価する気鋭のフォトグラファーとして志磨遼平も出演。
もちろん主演2人の演技にも注目だ。
都会から来た美少女モデル夏芽はさまざまな感情を持ち、悩みを抱えながらも前に進んでいくという難しいキャラクターだが、小松菜奈は自身が持つその独特な雰囲気で、田舎町で異彩をはなつ芯の強い美しい少女を演じている。
そして、コウ役の菅田将暉が魅せる自由で誰にも縛られない奔放さは、映画を見ている人をも魅了されてしまうほど。
菅田の金髪姿は、派手で強い印象というよりもどこか儚げな印象で、唯一無二の存在感をはなつ。
人気俳優2人の魅力が詰まった本作でしか見ることができない掛け合いは必見!
監督は今注目の新鋭!山戸結希
独特な映像美で映し出す10代の心情
本作の監督は、気鋭の映画監督の山戸結希。
2016年公開の本作の他に、2014年公開「東京女子流」の映画初主演作『5つ数えれば君の夢』や、2019年公開の堀未央奈主演『ホットギミック ガールミーツボーイ』などの監督を務めている。
女の子の複雑な感情や心情を美しいセリフ回しと映像で切り取り、独特な演出で作品を表現する、今注目の女性監督だ。
本作『溺れるナイフ』も、15歳という多感な時期の少女の変化と成長が美しい映像で描かれている。
例えば夏芽とコウの出会いのシーン。
主人公の夏芽はモデルの仕事をする中で自分が求めているものを掴もうとしていた矢先に、モデルを辞めさせられて田舎町の浮雲に引っ越してくる。
しかし、そこで自分が求めていた「何か」そのものに見える光のような存在、コウに出会うのだ。
その出会いは2人の運命を大きく動かすこととなるのだが、それを予感させられるような映像となっている。
薄暗い海のシーンでコウが夏芽を見下ろす場面も、美しさと恐ろしさを内包したような印象的な描写だ。
また、タイトルバックで2人が海の中に飛び込む場面では、夏芽のセリフとともに美しい映像が映し出されるのだが、10代の瑞々しくまばゆい感情を言葉と映像で観客に強く訴えてくるシーンとなっている。
2人は同じ時間を過ごす中で、互いの中にあるどうしようもなく惹かれる部分を求めて接していく。
互いに影響し合い、成長できる、そんな儚い10代の恋愛を描きながらも、それだけに留まらないのが本作の魅力。
夏芽は自分の意志でとある決断をするまでに成長することとなるのだが、自身の運命と向き合って懸命に出した1つの答えを映し出す最後のシーンは、痛烈に記憶に残るほど美しいシーンとなっている。
1人の少女と少年の煌めく青春と残酷なまでに美しい運命をぜひ見届けほしい。
原作は人気の少女マンガ作品
ジョージ朝倉の描く繊細な心理描写
本作の原作は、講談社「別冊フレンド」にて連載された少女マンガ作品である。
本作の他にも実写映画化された「ピース オブ ケイク」の原作者であるジョージ朝倉の作品は、恋愛における細かな心理描写が描かれている特徴があるため、漫画と映画両方を楽しむことでより深く映画を楽しむことができるのではないだろうか。
それぞれの違った良さを見つけるのも映画の楽しみ方の1つだろう。
他とは一味違う本作のラブストーリーは、男女問わず楽しめる作品となっているので、気になった方はぜひチェックしてみてほしい。