音楽の魅力を映画を通して伝えたい――そんな思いで始めた、元レコ屋の店員が音楽関連の映画を好き勝手にレビューしていくコーナー。今回は2010年公開の『ソラニン』をご紹介。筆者を始めとする?高校生の頃とかにバンドやってた人にはぶっ刺さりまくりの映画だと断言します。胸がギュンギュンします。
00年代の音楽って、何?
まず音楽の話から始めますが、2000年代ってみなさんどんな音楽聴いてました?
音楽を語るうえで、80年代はよかったとか90年代はこうだとか、そんな話はよく飛び交うけど、00年代を熱く語る感じってあんまりない気がして。
まあそれはそれで時代の流れなので仕方ないのですが・・・。というのも、いわゆる懐メロと言われる世代の音楽って、その当時、みんながだいたい同じ音楽を聴いていることが当たり前だったし、今ほどコンテンツも多くなかった。そう考えると、多様な音楽やコンテンツが生まれ始めた00年代って、音楽という枠で括っても好きなものが人それぞれ違うのが当たり前だったから、一概に「この音楽よかったよね」なんて気軽に語れないというのが現実。いやむしろ、自分の好きな音楽を一緒に語れる人がいたら嬉しい!なんて感覚だったなと。まだJポップは多少は共有できるかもしれないけど、Jロックなんてなかなか想いを共有できなかったもんです。
ちなみに当時、筆者が初めて高校生バンドを組んだとき(2000年代初頭)のそれぞれの好きな音楽はこんな感じ。
- ボーカル→ヴィジュアル系
- ギター①→JUDY AND MARY、GO!GO!7188
- ギター②→パンク系
- ベース →GLAY
- ドラム →メタル系(これ筆者)
今思うと、なんだこのバラバラ感はと・・・よくこんなんでバンド組んだなと、穴があったら入りたいくらいです。入らないけど。
超個人的な話になってしまってすみません。何が言いたいかというと、これが00年代のリアルってことなんです。でもそんななか、バンドをやる楽しさはあったし、00年代ってSUMMER SONICやROCK IN JAPAN FESTIVALとか、今や誰もが知るイベントに成長したロックフェスが始まったタイミングでもあるから、Jロックが一般的な人気を獲得し始めたころなんですよね。そんな感じで相対的にロック好きは多くなっていった(印象だ)から、それぞれに好きなバンドは異なっても、今でこそ「ロックっていいよね」なんてJロック好きのなかでは徐々にその良さを共有できるようになってきた感じかな。
で、話は長くなりましたが、今回紹介したい2010年に公開された映画『ソラニン』。その主題歌をアジカンことASIAN KUNG-FU GENERATIONが担当しているんです。そのアジカンこそ、まさに00年代のJロックの渦中にいたバンドだし(もちろん今も人気あります)、そのバンドが最高の楽曲を最高の青春映画に提供したってのがこの映画が公開された時の状況なんです。だから、僕らのような高校生の頃にバンドやってた人間は、この映画観て青春感じちゃう(と思う)んですよね。
※あくまで筆者の個人的見解なので、人によって捉え方は異なります
映画『ソラニン』は青春そのものだ!
というわけで、ここからようやく映画の中身に入っていきたいと思います。
なぜ、ここまでJロックを熱く語ったかと言うと、この映画、アジカンが主題歌というだけではなく、青春をバンドに捧げた熱い男女の物語だからなんです! もうこの話をしている時点で胸が熱くなって張り裂けそうです!
簡単なあらすじは以下の通り。
【あらすじ】
自由を求めて会社を辞めた芽衣子と、フリーターをしながらバンドを続ける種田。未来に確信が持てず、寄り添いながら東京の片隅で暮らす二人。だが、芽衣子の一言で、種田はあきらめかけた想いを繋ぐ。種田はバンド“ロッチ”の仲間たちと新曲「ソラニン」を完成させレコード会社に持ち込むが、反応のないまま日々は過ぎていく。そんなある日、種田がバイクで事故にあってしまう。遺された芽衣子は――。
(オフィシャルサイトより)
あらすじはあくまであらすじなんで、読んでも胸は張り裂けないんですが・・・。
この映画、そもそもは単行本が累計70万部を突破した浅野いにおの同名マンガ原作を映像化したものなので、マンガのほう、もしくは作者のほうをご存じの方も多くいるかなと思います。マンガもめちゃくちゃ良いのでおすすめです。
本当のところはどうか分からないのですが、浅野いにおが当時付き合っていた彼女からアジカンのニューアルバムが「ソラニン」(実は誤情報でシングルの曲名の方だった)だと聞いて、そのタイトルを気に入った浅野がマンガのタイトルにしたとか。アジカンが先だったのか、マンガが先だったのか本当のところは不明ですが、アジカンの楽曲とこのマンガが完全融合したのは奇跡的としか言いようがないでしょう。
そして主演が宮崎あおい。文句は一切ありません。当時は映画にドラマに引っ張りだこだった彼女。世の中の男性で彼女を好きじゃないという人はおそらく一人もいなかったのでは!?というほどの人気ぶりでした。少なくとも筆者はめちゃくちゃ好きでした、もちろん今もですけど。で、今は結婚、出産を経て女優活動は控えめにされているかと思います。そんな宮崎あおい、演技が本当に素晴らしいし、映画のクライマックスではギターを片手に「ソラニン」を熱唱。その歌声にも震わせられます。女優って本当に凄い!
さらに、本作のために個人レッスンを重ねたというドラム担当の桐谷健太、実際にサンボマスターのベーシストでもあるベース担当の近藤洋一、恋人の種田役には高良健吾と、最高の配役です。
00年代は青春ロック真っ只中!
というわけで、映画『ソラニン』。マンガも映画も内容がびっくりするぐらい良作なんですが、このコーナーで着目してほしいのは、その音楽的な時代背景なんです。
00年代に特に人気があったバンド(今でも人気のバンド多数)でいうと、ELLEGARDEN、フジファブリック、BUMP OF CHICKEN、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、MONGOL800、ナンバーガール、くるり、ACIDMAN、チャットモンチー、10-FEET、RADWIMPS、BEAT CRUSADERSなどなど。あげたらキリがありませんが、これらのバンドが好きであるならば、この映画にどっぷりとハマることでしょう。
最後に、アジカンの「ソラニン」を、当時のMV、2021年に発表されたTHE FIRST TAKEでお聴きください。それでは。
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