今日を必死に生きる女性たちの姿がまぶしい痛快エンタメ映画『大コメ騒動』

大正7年、富山県の漁師町を皮切りに日本全国へ波及していった「米騒動」は、やがて時の内閣を退陣させるに至りました。
日本の女性がはじめて起こした市民運動とも言われているこの出来事は、一体何が原因でどのように起きていったのかはご存知でしょうか?
今回紹介する映画『大コメ騒動』は、当時を必死に生きた女性たちにスポットを当てながら、歴史的瞬間をわかりやすく描いた作品となっています。

あらすじ

大正7年、富山県の貧しい漁師町で暮らす松浦いと(井上真央)は、17歳で漁師の利夫(三浦貴大)のもとへ嫁ぎ、3人の子供をもつ女仲仕として日々働いている。
魚が獲れない時期になると、男たちは北海道や樺太へ出稼ぎに出るため何か月も戻ってこられない。
利夫たちが出発し、残されたいとは3人の子供たちを守るため、浜のおかか(=女房)たちとともに米俵を担いで浜の船まで運び入れ、日当の二十銭を受け取る生活を送る。
ところが、次第にコメの値段は上がり始め、日当で一日分のコメが買えなくなった浜のおかかたちは、リーダーである“清んさのおばば”(室井滋)を中心に、慣習となっていたコメの積み出し阻止を試みるも失敗に終わってしまう。
浜で起きたその出来事が新聞で「暴動」として取り上げる事態に発展する中、シベリア出兵の噂でさらにコメの値段が釣りあがっていき…。

スクリーンの中に流れるのは大正時代の富山の空気

本作の舞台となるのは大正時代の富山県にある漁師町。
当時の空気感を作り出すため、富山県内を中心に撮影を行い、富山市ならびに地元企業、テレビ局、新聞社など多方面からの協力を得て、多くの地元サポーターとともに作り上げたといいます。
出演者も室井滋をはじめ、立川志の輔、左時枝、柴田理恵と、富山県出身俳優が多数出演していることに加え、監督は富山県出身の本木克英とまさに富山尽くし。
徹底的な布陣を敷いて、スクリーンの中に富山県の空気を流すことに成功しています。

また、夏木マリ、鈴木砂羽、工藤遥といった富山県出身以外のキャストも豪華。
特に主人公の姑役を演じた夏木マリは、富山県出身俳優たちに負けない役作りで、本当に大正時代の富山県にいた人物のような雰囲気を醸し出しています。
豪華キャストによる演技によって、世界感に引き込まれること間違いなしです。

井上真央演じる主人公の成長が熱い

主演を務めたのは、連続テレビ小説『おひさま』や大河ドラマ『花燃ゆ』で知られる井上真央。
今回、井上が演じた主人公の松浦いとは、聡明だが引っ込み思案で周囲の目を気にしてばかりの人物。
いつも周りに流されてばかりの彼女ですが、困窮する生活に追い詰められる中で様々な出来事に遭遇し、次第に「コメ騒動」の中心人物へと変わっていきます。
劇中では、真っ黒に日焼けして頬が削げる程にやせた容姿に扮した井上。
それでも、3人の子供をもつ母親として、時に悩みながらも日々を一生懸命に生きる主人公を確かな演技力で魅力的に表現。
女性がもつ強さと内面の美しさを滲ませた演技に心打たれること間違いなしです。

おわりに

監督を務めた本木克英は、「声を上げること、行動することが大事である」を本作の大きなテーマとして描きたかったこととしており、この作品を通して米騒動のイメージが変わるきっけになって欲しいとも語っています。

富山県の漁師町から世の中を大きく変えた米騒動。
その始まりは今日を必死に生きる女性たちが起こした勇気ある行動でした。
皆さんもぜひ、彼女たちが起こすパワフルな騒動をご覧になってはいかがでしょうか?
きっと、強く優しく背中を押してくれるはずです。

大コメ騒動

2021年1月8日(金)全国ロードショー
配給:ラビットハウス、エレファントハウス
監督:本木克英
出演:井上真央、室井滋、夏木マリ、立川志の輔、左時枝、柴田理恵、鈴木砂羽、西村まさ彦、内浦純一、石橋蓮司 ほか

(情報は記事公開時のものです)

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