『糸』や『火花』『アルキメデスの大戦』など今や引っ張りだこの人気若手実力派俳優・菅田将暉が主演した2013年の『共喰い』。『仮面ライダーW』のフィリップ役でテレビドラマシリーズのレギュラーで初出演し、“仮面ライダー俳優”のイメージだった菅田将暉が演技派として注目されることとなった。
芥川賞受賞の田中慎弥原作小説を実写映画化
本作で第146回芥川賞を受賞した田中慎弥による同名小説を、『EUREKA』の青山真治がメガホンを取って実写映画化。原作の持つ、人間の心の深淵にあるドロドロとした澱みを感じさせるまでには至ってないように思うが、菅田将暉という逸材を見出した功績は大きい。また、原作とは違うオリジナルのエンディングで趣向を凝らしている。
暴力的な性癖の父親を嫌悪していたが…
昭和63年の山口県下関市。17歳の高校生・遠馬は父親とその愛人の琴子と暮らし、義手で魚屋を営む実母の仁子は家を出て近くに住んでいた。父親は暴力的なセックスを好み、遠馬はそんな父親に嫌悪感を持っていた。しかし、遠馬は付き合っている千種に対して暴力の衝動に駆られ、自分自身に驚きと恐怖心を抱く。
素朴な高校生を演じる菅田将暉の存在感
今のオシャレ感のある菅田将暉の持つ雰囲気とは違い、本作で菅田が演じる遠馬は地方に住む素朴すぎるほどオシャレ感のない高校生。思春期特有の青臭さとどんな本性を内に秘めているか底知れない不気味さがほのかに漂っていて、ただならない存在感を放っている。