戦争を超えた愛を描いた名作 『永遠の0』
©2013「永遠の0」製作委員会

■“話題の一冊”では、小説やコミックを映像化した作品の放送情報を紹介。ドラマや映画を見てから原作を読んで、より詳細な心理描写や物語の背景を楽しんでもよし、先に原作を読んで、思い描いた世界が目の前に広がるのを楽しんでもよし。自分好みに物語を2度味わえる作品たちはこちら!■

累計500万部を超えた百田尚樹のベストセラーを「ALWAYS」シリーズの山崎貴監督が映画化し、興行収入87億円超を記録した大ヒット作。第38回日本アカデミー賞では8部門を受賞した本作が今年2023年、公開10周年を迎えた。太平洋戦争という重いテーマでありながら、その時代を生きた一人の人間のゆるぎない家族への想いが描かれた「家族の愛の物語」とも呼べる映画。映画・チャンネルNECOで4月5日午後6時半より放映予定。

口コミで広がり
累計500万部を超えた処女作

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ー原作紹介ー
■永遠の0=書名 ■百田 尚樹=著者 
■講談社文庫=刊 ■定価964円

「永遠の0」はそれまで放送作家として「探偵!ナイトスクープ」など多くのバラエティー番組を手掛けた百田尚樹が、ちょうど50歳で書いた処女作だ。第2次世界大戦中の日本を舞台として選んだのは、当時、闘病中だった父親がきっかけだったという。父や叔父から戦時中の話を聞いて育った百田は、父の死を前に「父の世代が消えてしまうと、戦争を語り継ぐ人がいなくなってしまう」と危機感を抱き、小説を通して語り継ごうとする。生還にこだわり「臆病者」と言われる人物を主人公にあえて選んだのは、「生きること」を作品の中で問うためだった。

後に類を見ないミリオンセラーとなったが、当初、作品を出版社に持ち込むと「今の出版界で戦争物は売れない」とことごとく断られたという。どうにか太田出版から出したものの、当初はやはり売れなかった。クチコミで徐々にじわじわと広がり、読者層も最初はほとんどが60代以上の男性だったが、女性読者、10代20代にも広がっていった。このような形でミリオンセラーになる作品は珍しいという。

映画化の依頼は何度もあったが、脚本が気に入らず全て断ってきた。自分で脚本を書いてみたこともあるが、できなかった。そんな中、山崎監督から渡されたシナリオを見て「話の流れも展開も見事だ」と感嘆。映画にするために原作と違うところもあるが、全く気にならなかったという。出来上がった映像も「僕は10年に一度の傑作だと思っている」と原作者太鼓判の作品だ。

あらすじ

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©2013「永遠の0」製作委員会

物語は、健太郎(三浦春馬)と姉の慶子(吹石一恵)が祖母の葬儀で今まで祖父だと思っていた賢一郎とは血のつながりがないことを知るところから始まる。祖母の最初の夫であり2人の本当の祖父は、太平洋戦争で特攻隊として戦死した宮部久蔵(岡田准一)だった。2人は祖父について知ろうと当時の戦友たちを訪ねる。

海軍航空隊時代の同僚たちは宮部のことを「海軍一の臆病者だった」と非難した。国のために死ぬことが美徳とされた時代、生きて帰ることにこだわったからだ。その裏には妻・松乃(井上真央)と娘との生きて帰るという約束があった。

そんな宮部が最後になぜ特攻を選んだのか―。現代シーンと戦時中の回想シーンが交差しながら物語は進み、その謎が紐解かれていく。やがて宮部の最期を知る人物に行きつき、60年間秘められていた宮部の想いを知ることとなる。

岡田准一と三浦春馬が
それぞれのパートを熱演

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©2013「永遠の0」製作委員会

戦時中パートでは、岡田准一が宮部の葛藤を鬼気迫る芝居で見事に体現。宮部がその時何を思い感じていたのか、ひしひしと伝わってくる圧巻の演技に目が離せない。演じた岡田は、「重い役であり、眠れない夜、考える日々があったしプレッシャーも感じた」と全身全霊でこの役に臨んだことが窺える。

現代パートでは、宮部のことを調べながら徐々に変化していく健太郎の姿を、三浦春馬がみずみずしく演じた。映画冒頭では司法試験に落ち続け、目標を見つけられずブラブラと過ごしていた健太郎が、「宮部のことをもっと知りたい」と徐々に情熱を抱いていく。その細やかな表情の変化にも注目したい。

時代を超え共感を生んだ
家族の愛のドラマ

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©2013「永遠の0」製作委員会

映画では、原作にはない宮部が戦時中たった一度だけ帰省し妻と娘と過ごすシーンが登場する。長編小説を短く集約する映画において、そのシーンが一層クライマックスを引き立てている。山崎監督はこのシーンをどう組み込むか、脚本段階でかなりの試行錯誤を重ねながら「どうしても3人が家族である姿を見せたくて入れた」という。

戦争という残酷な舞台でありながら、今も昔も変わらぬ家族の愛の物語が浮き彫りにされている点が多くの人の心を掴んだ。

実写映像とCGによる
リアルな描写にも注目

山崎貴は、VFXを得意とする監督だ。(※VFX:「Visual Effects」の略。コンピュータを使って映像を加工すること)「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズでは、CGと実写映像を組み合わせ昭和30年代を見事に再現したことで話題を呼んだ。

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本作でも実物大の零戦(零式艦上戦闘機)を制作し、それを実際の空撮映像に合成することでリアリティーある空中戦を再現した。長野県霧ケ峰高原での撮影時には、現地で原寸大の零戦2基を3時間かけて組み立てたという。「少しでも本物を入れることで臨場感が増す」という監督のこだわりだ。

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©2013「永遠の0」製作委員会

自然相手の撮影は苦労が多く、高原ならではの寒暖差のある気候により「霧」に阻まれることも。しかしその霧が晴れた霧ヶ峰の絶景の空は物語を一層引き立たせている。

[映]永遠の0

放送局:映画・チャンネルNECO
放送日:2023年4月5日
放送時間:午後6:30~9:00
制作年/国:2013年/日本
監督:山崎貴
出演:岡田准一、三浦春馬、井上真央、夏八木勲、染谷翔太、橋爪功 、濱田岳、田中泯、 新井浩文ほか

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