1970年代を代表するセクシー女優のひとり・杉本美樹とフランスからやってきたセクシー女優、サンドラ・ジュリアンが共演した東映ポルノ時代劇の傑作『徳川セックス禁止令 色情大名』(1973年)をご紹介いたします。
江戸時代の制度を風刺したポルノ時代劇
狂った殿様が庶民の性行為を取り締まる!
江戸時代には「生類憐れみの令」など、殿様の考えひとつで極端な法律ができてしまうことがありました。
この映画は無論フィクションではありますが、性経験に乏しい殿様が庶民に嫉妬し、藩内で一切の性行為を禁止してしまう騒動を描いています。
殿の使いの者が新婚夫婦の家に押しかけ、「今後一切男女の交わりを許さん!」と申し伝える場面はまったくコメディとしか言いようがないのですが、世間を知らない権力者によっていかに庶民が振り回され、苦しめられてきたかを風刺した優れた作品でもあります。
主演は数々の東映作品でスケバン(不良女子学生)からクールな刑事までを演じた女優・杉本美樹。
1970年代の東映で彼女がどのようにスターになり、活躍をしたかについてはこちらの記事をご参照ください。
実は社会派?低俗なポルノコメディ?すべては観客次第
時代劇の本場・東映京都による豪華な美術も見どころ
東映といえば、近年の『孤狼の血』にまで至る『仁義なき戦い』などのヤクザ、アクションといった映画が有名ですが、それ以前に京都の撮影所で時代劇の名作を生んでいたことを忘れてはいけません。
本作ではかつて東映が作ってきた時代劇の立派な雰囲気を受け継ぎながらも、その気高いイメージを破壊するようなバカバカしい場面が次々と登場します。
その象徴となるのは、殿様のもとに「貢物」として「フランス人形」が届けられる場面で、「人形」とは謎の西洋人女性・サンドラ(役者名と役名が同じというわかりやすさ)でした。
殿は西洋流の愛情表現にすっかり感動し、なんと彼女を側室にしてしまいます。
それを許せないのが殿の正室・清姫(杉本美樹)。
徳川将軍家の娘である彼女は、次第に尊大な態度を取るようになった殿に怒りを爆発させます。
話は一見バカバカしくても、美術や衣装は豪華絢爛。東映京都撮影所の底力を感じる素晴らしいビジュアルです。
清姫とともに大奥からやってきたお付きの者たちが、サンドラにムチで激しい虐待を加えます。
城を抜け出し、ヨーロッパ映画のような美しく青い海の前に佇み、フランス語のモノローグで亡き父を想うサンドラ。
実は彼女は、日本に流れ着いて処刑されたキリスト教宣教師の娘だったのでした。
なんと奥が深い! セクシーな場面で男性観客の気を引いておきながら、映画のなかでは女性の人権や歴史・宗教の問題にまで堂々と踏み込んでみせるという社会派?の意欲作。
1970年代日本の男性カルチャーや社会問題を見事なまでに記録した1作と言えるでしょう。
戦後まもなくから平成まで活躍した喜劇俳優・大泉滉、夫婦漫才師・鳳啓助と京唄子、吉本新喜劇の重鎮・岡八郎など、脇を固めるコメディアンもある世代以上にはとても懐かしく思えるはず。
本作は、1973年の公開当時、18歳未満は観賞できない「成人映画」でしたが、現在の区分では「R15+」で15歳以上であればご覧になれます。
高校生の映画ファンもぜひお試しあれ。
ただし、夢中になりすぎても責任は負いません。