「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督が、羽海野チカの人気コミックを原作に、神木隆之介主演で実写化した青春ドラマ『3月のライオン』（2017年）。
中学生にしてプロになった天才棋士の孤独と成長を前編・後編の二部作で描き、原作キャラクターの再現度の高さでも評判となった作品だ。
今回はその後編についてご紹介しよう。
主人公・桐山零の成長を息詰まる対局シーンとともに描く
主人公である17歳の天才棋士・桐山零は、家族を幼いころに交通事故で亡くし、現在は東京の下町で一人暮らしをしている。
たった一人で将棋と向き合う孤独な日々を過ごす零は、ある時、隣町に住む川本家の三姉妹と知り合い、家族の温もりを与えてくれる彼らと過ごすことで心安らぎ人間的に成長していく。
前編では、生きるために棋士を志すしかなかった少年・零と、零が将棋の才能を開花させたことで義理の家族であるプロ棋士の幸田の家にいられなくなってしまった背景が語られる。
後編では、前編の苦悩に満ちた人間関係のドラマを残しつつも、プロ棋士である零が様々な対局を通して天才棋士へとステップアップしていく様子がダイナミックかつエモーショナルに描かれる。
あらすじ
棋士界の絶対王者への挑戦権が得られる獅子王戦がスタート！
川本家との出会いから1年、今年も獅子王戦トーナメントの季節がやってきた。
10年以上にわたり棋士界の頂点に君臨し続けているのは“神の子”と恐れられる宗谷冬司。
その宗谷と対戦するため、零をはじめとする棋士たちは獅子王戦の過酷な戦いに身を投じていくが、零の義理の父である幸田は怪我のため入院、義理の姉・香子の不倫相手の棋士・後藤は入院中の妻の容態が思わしくなく、零の友人の棋士・二海堂晴信は実は難病を抱えているなど、様々な事情が明らかとなっていく。
一方、川本家では次女・ひなたがいじめにあっていることが発覚する。
さらに蒸発していた三姉妹の父親が突然現れ、一緒に暮らすことを提案し…。
実在の場所を利用してほぼ全編ロケで敢行
将棋をテーマとする本作の撮影は、実在する千駄ヶ谷の「将棋会館」や、実際の名人戦の会場である「椿山荘」で行われたほか、実在する様々な場所を利用しほぼ全編ロケで敢行された。
零が暮らす “六月町”や川本一家が住む“三月町”は月島エリアで撮影。
川本家においては、三姉妹を演じた倉科カナ、清原果耶、新津ちせが撮影前にロケ地となった家屋に一泊二日で滞在して登場人物の生活感を掴んだという。
大友監督はこの月島エリアでの撮影は、東京オリンピックで様変わりしてしまう前に下町の情景を映像に留めることを意図していたと語っている。
上記のほかにも、作品の重要な見どころとなる将棋の対局シーンでは“将棋の聖地”である山形県天童市にまで足を延ばし、最終対戦となる山形県「立山寺」のシーンは天上へと昇りつめていく状態を象徴的に描き、決戦へと向かう棋士の心象を表現した。
配信情報
羽海野チカ原作の映画『3月のライオン 後編』は、U-NEXTほか配信サービスで配信中。
さまざまな困難を乗り越えて成長を遂げた少年の物語は、果たしてどのようなラストを迎えるのか。
熱く濃厚な青春ドラマを、前編とあわせて見届けてほしい。
