樹木希林の海外作品デビューにして遺作となった『命みじかし、恋せよ乙女』
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2018年9月に惜しまれつつもこの世を去った樹木希林。
彼女の海外作品デビューであり、遺作となったのが『命みじかし、恋せよ乙女』だ。
人生に迷う男の心の旅路を描く幻想譚となっている本作で、樹木希林は主人公にそっと手を差し伸べる年老いた女将の役を演じ、その存在感が役に説得力を持たせている。

人生を見失った男の元に日本人女性が訪れる

酒に溺れ、仕事も家族も生きる希望も失った男・カールのもとに、若い日本人女性ユウが訪ねて来る。
カールの亡き父と親交があったという彼女は、父が生前暮らしていた家に行きたいと言ってきた。
そんな彼女に渋々付き合ううちに、カールは自身の人生と向き合い始めることに。
だが、新たな一歩を踏み出そうとした時、ユウは突然姿を消してしまう。
ユウを捜しに日本へ向かったカールは、茅ケ崎館という旅館に辿り着くのだった…。

樹木希林にあてた役を監督が書き上げた作品

監督は『メン』で注目され、ドイツにおける最も成功した女性監督の一人と称えられるドーリス・デリエ。
30余年の間に日本を30回以上も訪れ、日本で『フクシマ・モナムール』をはじめ、日本を題材とする5本の映画を撮影している。
日本文化をこよなく愛する彼女が、長年にわたり憧れた女優・樹木希林にあてた役を、自らの手で書き上げて出演をオファーしたことでも話題になった。

樹木希林の最後の出演シーンが感慨深い

本作のラスト、樹木が美しい庭を眺めながら「ゴンドラの唄」を歌うシーンに注目して欲しい。
この歌は、黒澤明監督の『生きる』にも出てくる有名な大正歌謡としても日本人の胸に刻み込まれた有名な曲だ。
「命みじかし恋せよ少女 朱き唇褪せぬ間に 赤き血潮の冷えぬ間に 明日の月日のないものを」と歌うこのシーンが、女優・樹木希林の最後の映画出演シーンとなったことに感慨深さを感じるだろう。

スターチャンネル2

[字]2020年12月6日(日)21:00~23:15
[字]2020年12月15日(火)14:15~16:30
[字]2020年12月28日(月)9:00~11:15

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