【映画×音楽】ボン・ジョヴィ、ガンズ、モトリーが青春時代なら映画『ロック・スター』はドツボ

音楽の魅力を映画を通して伝えたい――そんな思いで始めた、元レコ屋の店員が音楽関連の映画を好き勝手にレビューしていくコーナー。今回は2001年公開の『ロック・スター』をご紹介。あの頃のアツい気持ちがよみがえる!80年代HR/HMにハマったことがある人なら感動必至のド直球映画!

80年代HR/HMの世界

80年代に青春時代を過ごし、洋楽が好きであればほぼ必ずと言っていいほど通っているであろうと考えられるのがHR/HMだ。と言っても筆者は80年代生まれなので、その時代を生で体感したことはないのだが・・・。今では考えられないが、当時はHR/HMがチャート上位に入るような時代で、ここ日本でも「洋楽と言えばHR/HM」というくらいの認知度であったという。いやーそんな時代に生まれて青春時代を過ごしてみたかったなと、何度となく羨ましく思ったものです。

で、その80年代HR/HMはどういうバンドがいたのかという話ですが、まあ本当に枚挙にいとまがないとはこのこと。筆者が好きなバンドを挙げるだけでもキリがないので、いわゆる代表的なバンドをざっとご紹介!

■BON JOVI(ボン・ジョヴィ)

説明不要。80年代洋楽と言えば必ず上がってくるビッグネーム。筆者もまさしくレコードが擦り切れるくらい聴きまくりました。そしてMTVのプロモーションを最大限に活かしたマーケティング戦略でも有名。

■GUNS N’ ROSES(ガンズ・アンド・ローゼズ)

ここ日本でも絶大な人気を誇るガンズ。80年代末ごろに登場し、全米のみならず世界中でヒット。ボーカルのアクセル・ローズのカリスマ性に圧巻される。

■DEF LEPPARD(デフ・レパード)

イギリスで結成されたバンドで「ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル」の先駆けとしても知られる。メロディアスなハーモニーなどで、ビルボードチャート上位にランクインするような名曲が多い。

■Mötley Crüe(モトリー・クルー)

バッドボーイLAメタルの代表格。アルコールやドラッグ中毒など、さまざまな問題が常にメンバー内で渦巻く危険なバンドとしも知られる。そういった背景も含めて当時の若者を大いに熱狂させた。

当時の熱狂を知らない世代からしたら、どれも映像は古いし、変に派手ないで立ちだし、音楽も時代を感じるものもあるかもしれない。ただ、今から40年も前の話なのだからそれは仕方ない。当時で言えばどれも新しく、洋楽好きは次々に華々しくデビューするかっこいいバンドや次々にリリースされるかっこいい楽曲に大いに熱狂していたんだよな。90~00年代で青春を過ごした筆者ですら、MVやらアルバムで当時の熱狂を想像しながら浸ったものです。

と、前段が相変わらず非常に長くなってしまいましたが、そんな80年代HR/HMの全盛期を知る人にはたまらない映画が今回紹介したい『ロック・スター』なのです。

当時の熱狂の光と影を見事描き出した映画『ロック・スター』

ようやくここからが本題・・・と言っても、今回紹介したい映画『ロック・スター』って、前述の80年代HR/HMの全盛期を知っていれば、何も言わずとも楽しめること必須な作品なんです。とはいえ、いつも通り、映画の内容を紹介。

【あらすじ】

クリス(マーク・ウォールバーグ)はロック・バンド“スティール・ドラゴン”の熱狂的ファン。中でもボーカルのボビーを崇拝、仲間と結成したバンドでもボビーの歌い方、動きまで完璧にコピーしていた。そんな彼のもとに、ある日信じられない知らせが入る。“スティール・ドラゴン”を突然脱退したボビーの後釜に選ばれたというのだ。自分の才能を信じ支えてくれた恋人エミリー(ジェニファー・アニストン)の後押しもあり、クリスは夢にまでみたロックスターになる!

元はイギリスのメタル・バンド、Judas Priest(ジューダス・プリースト)に加入したティム “リッパー” オーウェンズのサクセス・ストーリーとして制作される予定だったという本作。たしかに無名のコピーバンドでボーカルを担当していたティムがいきなりロブ・ハルフォードの後任に抜擢された経緯は、本作のストーリーと重なるところがある。なるほど。

監督はスティーヴン・ロバート・ヘレク、製作総指揮はジョージ・クルーニー。そして、スティール・ドラゴンのメンバー役には、Ozzy Osbourne(オジー・オズボーン)のバンドのギタリストとしても知られるZakk Wylde(ザック・ワイルド)、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)のドラマー故John Bonham(ジョン・ボーナム)の息子でありドラマーのJason Bonham(ジェイソン・ボーナム)、アメリカのLAメタル・バンドDokken(ドッケン)の元ベーシストのジェフ・ピルソン(Jeff Pilson)が抜擢されており、実際に演奏している。

さらに、マーク・ウォールバーグ演じるクリスの歌声はアメリカのハードロック・バンドSteelheart(スティールハート)のボーカル、Miljenko Matijevic(ミレンコ・マティアヴィッチ)が担当しており、スティール・ドラゴンの前任シンガー、ボビーの歌声はTalisman(タリスマン)やYngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)などで活動し、HR/HM界隈ではその名が知れ渡っているJeff Scott Soto(ジェフ・スコット・ソート)が担当。肝心の音楽はというとYes(イエス)の活動でも知られるTrevor Rabin(トレヴァー・ラビン)だと言うから、この界隈をある程度知っている人ならちょっとびっくりな人たちが関わっていることが分かると思う。いやもうメンツが凄すぎて鼻血が出ますね。

そしておすすめポイントとしては、スティール・ドラゴンを通して、80年代HR/HM全盛期の光と影を見事に描いているところだろう。単に主人公がロックスターへのドリームチケットを手に入れて終わりというだけでなく、しっかりと現実も突き付けている。その点、個人的にはMötley Crüe(モトリー・クルー)に近いしいものを感じたけれども・・・。

そしてHR/HMは、Nirvana(ニルヴァーナ)らグランジ勢の登場によって、悲しいかな衰退していくことになる・・・。いや、Nirvana(ニルヴァーナ)もめちゃくちゃかっこいいんだけどね。それでは。

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