戸田奈津子のスターこのひとこと:『トップガン マーヴェリック』
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トップガン マーヴェリック

■公開中
配給:東和ピクチャーズ

【STORY】
アメリカのエリート・パイロットチーム“トップガン”は、達成が不可能な任務に直面していた。そんな中、白羽の矢を立てられたのは伝説のパイロット“マーヴェリック”で…。

このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。

 トム・クルーズの出世作『トップガン』の36年ぶりとなる続編『トップガン マーヴェリック』が大ヒット中。アメリカの各メディアも「パート1をしのぐ素晴らしい作品!<続編はオリジナルに劣る>というジンクスを破った」と絶賛していますが、まさにその通り。実際にパイロットでもあるトムが“本物”にこだわり抜いた大規模な飛行シーンはこれまで体験したことのない迫力ですし、物語も過去作と現代を過不足なくつなげて見応えあり。予想をはるかに超えた出来栄えです。
 まずピックアップするフレーズは滑走路の離着陸シーンで、管制塔から。

管制塔:Thumbs up for taxi.

滑走、よし。

 <thumbs up>は「親指をあげる」で、“OK”の意味。会話で「Thumbs up.」といえば、「OK、問題なし。」のこと。たいていは親指をあげながらこう言います。ここでの<taxi>は「タクシー」ではなく、「飛行機が自力で移動する、地上を滑走する」という意味です。
 物語は、数々の功績にもかかわらず組織の片隅にいた天才パイロットのマーヴェリックが、かつて所属したエリートパイロット養成学校“トップガン”の教官任務を命じられたことから。セリフは基地司令官の命令を受けたマーヴェリックの最初の返事。

マーヴェリック:With all due respect, sir, I’m not a teacher.

敬意と共に申し上げますが、私は教師には向いていません。

 <with all due respect>は目上の人の意見に反論する時に言う前置き。日本語なら「失礼かとは思いますが……」「失礼をかえりみず申し上げれば……」と言うところですね。
 ロックダウンで2年以上も公開延期となった本作ですが、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(’18年)の来日時に「今度は『トップガン』で、お会いしましょう!」と言った約束を守って、3年10カ月ぶりに来日したトム。いや〜、相変わらず素敵でございました。
 私事で恐縮ですが、来日が決まってから少々悩みまして、当日の1カ月ほど前に通訳を辞退することをトムに伝えました。彼は「今回だけでも、ぜひ!」と強く引き止めてくださったのですが、私の決心は変わらず。というのも記者会見やイベントの通訳は、当意即妙にスムーズでなければいけません。80歳半ばになった私はそのプレッシャーに少々自信が持てなくなり、もしも言葉に詰まるなど、何かあったらトムに迷惑がかかってしまう。「それだけは避けたい」と思ったのです。もちろん、私自身は相変わらず健康にも問題なく元気に暮らし、字幕作りのお仕事も続けておりますが。
 さて、そんなトムの来日は、予定より1日早く到着。その日がフリーだったのでトム自らから「お茶しない?」のお誘いがあり、宿泊ホテルのティールームでトムの妹さんとその息子さんと4人で他愛もないおしゃべりを楽しみました。なんと3時間! それから翌日の記者会見と次の日に横浜で行われたイベントなどにも同行させていただき、トムの細やかなファンサービスや映画への熱いコメントなど、横から拝見。変わらない誠実な人柄に、あらためて感動してしまいました。そうそう、30年来のお付き合いで初めて知ったこともあります。それはきれいなリボンがかかった箱に入った大判ストールを頂いた時。私がほどいたままにしていたリボンを、即、クルクルときれいに巻いて満足顔。これほど几帳面だったとは! だからこそ、あれだけ完璧な作品が作れるのでしょうね。ともあれ、別れ際には「『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』で、また会おうね」と言っていたトム。首を長くしてお待ちしています!

▽トム・クルーズ製作・主演の人気シリーズ第5弾!

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』より

トム演じる伝説のスパイ、イーサン率いるスパイチーム<I M F>が解体の危機に直面しながらも謎の組織と諜報バトルを繰り広げるアクションもの。激しいカーチェイスのあとでクルマが転覆するシーンで、仲間から「大丈夫か?」ときかれたイーサンの返事は。

Things…got a little out of hand.

いろいろ……大変だった。
Point

<out of hand>は<out of control>と同じで、「手に負えない」「手に余る」「コントロールできない」という意味。日本語と同じような言い回しですね。

(情報は記事公開時点の内容です)

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