■“話題の一冊”では、小説やコミックを映像化した作品の放送情報を紹介。ドラマや映画を見てから原作を読んで、より詳細な心理描写や物語の背景を楽しんでもよし、先に原作を読んで、思い描いた世界が目の前に広がるのを楽しんでもよし。自分好みに物語を2度味わえる作品たちはこちら!■
永野芽郁、田中圭、石原さとみら豪華キャストで映画化された『そして、バトンは渡された』は、2019年の本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの同名小説が原作。母親2人、父親3人の元を転々としながら育った…と聞くと可哀そうな境遇の暗い苦労話を想像してしまうが、本作は5人もの愛情を受けて育ったヒロインの物語。見終わった後には心に温かいものが残る、爽やかな作品だ。監督は、2023年3月24日に『ロストケア』が公開される前田哲。全く違った角度でありながら家族の絆というテーマは共通する2作品。18日に映画・チャンネルNECOで『そして、バトンは渡された』を見てから『ロストケア』を見るのも面白い。
特に後半に映画との違いを楽しめる原作
小学生と高校生の少女のストーリーが散りばめられながらリンクしていき、梨花の行動がより差し迫った状況のためだったと感じる映画は、ドラマチック。それに対して原作は、同情されることの多い境遇でありながら、あっけらかんと(苦労や悲しみを感じていないわけではないので、環境に適合するため無意識にそうなったのかもしれない)、確かな幸せを感じて生きていた主人公・優子が、より多くの、様々な立場の大人たちからの愛情の中で育まれていく過程が、ゆったりじんわりとした温かさで描かれている。どちらも映画と小説の良さが活きているので、両方の鑑賞がおススメ!
森宮さんと優子と料理
森宮さん(田中圭)は優子(永野芽郁)にとって3番目の“父”。東大卒で一流企業に勤めているが、言葉選びが下手で悪気なく失礼なことを言ってしまったり、優子を叱ったことのストレスで自分が体調を崩したり、どこか抜けたところがある。優子への愛情は深く、優子のために(時にはちょっとズレた)こだわりをもって作る手料理は、心も温め、優子の将来へも強く影響を与える。
梨花さんとみぃたんとピアノ
梨花さん(石原さとみ)とみぃたん(稲垣来泉)も、血の繋がらない親子。みぃたんの実の父親と再婚したことで“母”となった梨花さんは、華やかでおしゃれ、「笑顔でいればラッキーが舞い込む」がモットーの前向きな女性。みぃたんへの愛情が深く、仕事でブラジルへ渡る夫と別れ、みぃたんを日本で育てることを強く望む。一方でとらえどころがなく風来坊な面も。そんな梨花さんが「ピアノを習いたい」というみぃたんの望みを叶えるためにとった手段は、常識では考えられないことだった。
優子の高校生活
親との血の繋がりがあるなしに関係なく、進路・いじめ・恋など、高校生活には色々あるもの。面倒を押し付けられた形で合唱の伴奏者となった優子は、他のクラスの伴奏をする早瀬くん(岡田健史)と出会う。本格的にピアノを学んでいる彼は、音楽と料理を愛したロッシーニに憧れ、実の母との確執を抱えていた。ある日、ショッピングセンターで街頭ピアノを弾く彼を見かけた優子だが…。
明かされる秘密
高校を卒業して数年後、レストランに勤める優子は、人生の転機を前に、一つの荷物を受け取る。添えられた送り主からの手紙には、ある秘密の告白が綴られていた。段ボールに詰まっていたのは、ふたりの人物が優子へ向けた、いっぱいの愛だった。
苗字とともに引き継がれていくバトン、そして走者の充実感とは
大人の都合でコロコロと親が変わりながらも愛情を注がれて育った優子は、不幸を感じることもなく、今は血の繋がりのない“父”森宮さんと2人暮らしを送っている。一方、自由奔放に生きる女・梨花は、夫を何度も変えながら、元夫の連れ子だった娘のみぃたんに愛情を注いで暮らしている。そんな2つの家族が交錯し、ラストには少しのせつなさとあふれる幸福感が待つ、心温まる映画。
放送局:映画・チャンネルNECO
放送日:2023年3月18日
放送時間:午後9:00~11:20
制作年/国:2021年/日本
監督:前田哲
出演:永野芽郁 田中圭 岡田健史 稲垣来泉 / 石原さとみ / 大森南朋 市村正親 ほか