戸田奈津子のスターこのひとこと:『チケット・トゥ・パラダイス』
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チケット・トゥ・パラダイス

■11月3日(祝・木)より全国ロードショー
配給:東宝東和

【STORY】
元夫婦のデヴィッドとジョージアは、愛娘から届いた「結婚する」という連絡に大慌て。若くして結婚した自分たちの失敗を繰り返させてはならないと急いで娘のところに向かうが…。

このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。

 ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが6年ぶりに共演の『チケット・トゥ・パラダイス』。役柄は、元夫婦。となれば、かつての共演作『オーシャンズ11』や『オーシャンズ12』でも“ワケあり”の元夫婦を演じているからか、今回も絶妙&軽妙なコンビネーションを披露していてさすがです。
 物語は、離婚後は犬猿の仲だった元夫婦の愛娘が、ロースクールの卒業旅行先のバリで地元青年と恋に落ち、結婚を決意。その電撃結婚に大反対の両親が、やむなく手を組んで南の楽園に乗り込む展開。正直、先が読めてしまう他愛もないロマンチック・コメディですが、だからこそスター登場に価値あり。
 最初のフレーズは、バリに向かうデヴィッドとジョージアが乗り合わせた飛行機の中で。なんとその飛行機のパイロットはジョージアの今の恋人ポール。目の前でイチャイチャするふたりにデヴィッドが嫌味たっぷりに。

デヴィッド:Aren’t you supposed to be flying the plane, Paul? Or at least not making out with the passengers?

ポール、君は飛行機を飛ばしているはずだろ? 少なくとも乗客とイチャつくのはマズイのでは?

 <make out>は「作る」「やりとげる」と思うでしょうが、それ以外にも「イチャつく」「(異性を)モノにする」という意味もあります。簡単な単語の“make”と“out”だけで、そういう意味になる英語は奥が深いし、やはりむずかしいですね。
 結婚をしている時の昔話。デヴィッドが「湖畔にいつか家を建てたかった」と言うと、ジョージアが。

ジョージア:Why did you save the good stuff for later?

なぜいいことを後回しにしたの?

 ジョージアのポリシーを反映したこのセリフは、いろいろなシーンに登場しますから、要チェックです。<save>は「保存」「とっておく」「後回しにする」。<stuff>は「thing(物)」。英語の日常会話では、“thing”と言わずに“stuff”を使うことが断然、多いのです。この映画の中のいろいろなシーンでも繰り返し使われています。たとえば「Don’t touch my stuff.(私のものに触らないでよ。)」、「I’m going shopping. Do you need any stuff?(買い物に行くけど、何か欲しいものある?)」という具合。
 かつて愛し合っていた頃に夫婦が訪れていた思い出の湖畔。デヴィッドは離婚した後も、時々、そこを訪ねていたと告白。

デヴィッド:I still go there from time to time.

僕は今も時々、あそこに行くんだ。

 <from time to time>は「時々」「たまに」で、頻度はあまり多くない感じです。例文としては、「He lives in a different city but we meet from time to time.(彼は別の町に住んでいるけど、時々、会うのよ。)」。
 ジョージ・クルーニーと初めてお会いしたのは『アウト・オブ・サイト』(’98年)。その時はたった1日滞在の短い来日でしたが、それでも「本当に面白くて、イイ人!」という印象でした。そして『パーフェクト・ストーム』(’00年)で再会した時は、さらに「頭がいいんだなぁ」と感心してしまいました。真面目な質問にはちょっとジョークをカマしたあとに、真面目な答え。ふざけた質問にはおふざけムードで応戦。この臨機応変の対応がすばらしい。あの、人に好まれる笑顔の奥に、なみなみならぬ頭脳が隠されているのが読み取れます。しかも、ブレイクするまでに下積みの苦労もたっぷり味わっているから「大人の落ち着き」もあり。ブラッド・ピットやマット・デイモンと一緒に『オーシャンズ12』の記者会見に出席したときも、ジョージはその場を上手に取りしきり“兄貴分”の役目をまっとう。ブラッドもマットも、信頼しきっていました。

▽自然の猛威と戦う船長をジョージ・クルーニーが熱演

『パーフェクト・ストーム』より

物語は1991年に実際に起った海難事故を再現。大嵐と戦う人々の姿を描く人間ドラマとしても見応えあり。シーンは、同業者の女船長リンダと船長のビリーが無線で交信中に。「チームを組みましょうと言ったでしょ?」と言うリンダに答えて。

ビリー:I don’t like partners. Business-wise, that is.

おれはパートナーを持つのが嫌いなんだ。仕事上での話だよ。
Point

注目は<-wise>。これは「利口、賢い」のwiseとは関係なく、日本語でいう「~的」と同じ表現。「The movie was very interesting, music-wise.(あの映画、音楽的にとてもおもしろかったわ。)」。日本の「音楽的に」「ストーリー的に」と同じ使い方ですから、覚えやすいでしょ。

(情報は記事公開時点の内容です)

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