BLファンの中で“神作家”としてリスペクトする人も多い、漫画家のヨネダコウが手がけた人気BLコミック『囀る鳥は羽ばたかない』。
フジテレビが立ち上げたBLに特化した劇場アニメレーベル「BLUE LYNX」の第1弾として、このBLコミックを劇場アニメ化したのが『囀る鳥は羽ばたかない The ciouds gather』だ。
BLではあるが、裏社会を舞台に描いていてBL好きな訳でもない男性でハマる人もいる重厚な作品だ。
あらすじ
若頭・矢代のもとへある男がやってくる…
主人公は小さな事務所を任された真誠会の若頭の矢代。
彼の元へ付き人兼用心棒として百目鬼(どうめき)という男がやってくる。
部下には手を出さないと決めていた矢代だが、百目鬼のことはなぜか気になる。
しかし、ある理由によって百目鬼は矢代の誘いに応えることはできない。
そんなとき、組織の内部で不穏な動きが…。
一筋縄ではいかないラブストーリーに夢中に
あらすじだけを読むとありがちなストーリーで突出したものは感じないかもしれない。
ただ、本作は何もかもが一筋縄では行かないのだ。
主人公の矢代のキャラクターからして、多面的で複雑な魅力を持った人物だ。
極道者にしては強面でなく、綺麗な顔だちのインテリ系極道。
ただし、淫乱で不特定多数の男と体の関係を持っている。
まるで依存症であるかのように。
百目鬼は無骨で不器用だが、とても健気で真っ直ぐな男。
矢代に対してとても一途で従順だが、大きなトラウマを抱えているために矢代の誘いに応えることはできず、逆にその事によって百目鬼は矢代の心安らげる存在となっている。
ラブストーリーとしてはとても矛盾した関係なのだ。
そして、心に傷を持つ者同士がお互いに心の中では惹かれ合っているにも関わらず、さまざまな障害があるために2人が結ばれることは容易ではなく、それがとてももどかしくて切なく辛い。
見ている方は歯がゆくてじれったくもだえてしまう。
男たちの抗争を描く極道ものとしても本格的
これのどこに男性もハマる要素があるというのか?と思う人もいるかもしれない。
ここに書いたあらすじは2人のラブストーリーがメイン。
しかし、本作は前述したように裏社会を描いた、いわば極道ものでもある。
彼ら2人のラブストーリーに組織の内部抗争や駆け引きが複雑に絡んでくるのだ。
駆け引きや裏切り、それぞれの思惑などが渦巻く男たちのドラマが繰り広げられる。
説明過剰にならない語り口で容赦ない暴力描写もあり、北野武作品を引き合いに出す人もいるほど、裏社会を描いた作品としても通を唸らせるくらいに本格的だ。
BLには興味がなかった男性が見ても楽しめるかもしれない。
なお、原作コミックはまだ連載中で、本作も1作で完結しているストーリーではなく、続編の制作も決定している。