青山剛昌による人気コミックを原作とする大ヒットアニメの劇場版シリーズ第26作目『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』。今作にゲスト声優として参加する沢村一樹は、八丈島近海に建設された海洋施設「パシフィック・ブイ」の局長である牧野洋輔に声をあてている。奇しくも「名探偵コナン」のテレビ放送が開始された1996年に俳優デビューし、“コナン君と同期”であると語る彼に、アフレコでの様子や役作りについて語ってもらった。
オファーと役作りについて
「『この人はどちら側の人間なんだろう?』と匂わせることを常に意識しました」
オファーについては、自分で言うのも何なのですが「何で僕なんだろう?」といまだに思っています。ただ「名探偵コナン」という国民的アニメに参加できたことは率直に言って嬉しかったですし、すごく緊張したんですが本当に楽しかったです。
アフレコは僕1人で行いましたが、すでにほかの声優さんの声がほぼ入っていて、そのおかげでトーンや危機のレベルを想像するガイドにできました。でもレギュラー陣の方々はベテランですし、みんなが聞き慣れている声の中に僕の声が入るのかと思うとプレッシャーでしたね。
この作品は探偵ものなので、黒幕は僕が演じた牧野であるという可能性もあります。だから「この人はどちら側の人間なんだろう?」とお客さんが最後まで迷うような雰囲気を匂わせることは常に意識していました。
アフレコについて
「世界観を壊しちゃいけないので、悩んだらすぐ相談しました」
お正月明けの7日にアフレコを行いました。元旦は何も考えないで過ごしましたけど、ゆっくりできないお正月でした(笑)。読まないといけないなと思って、台本を目立つところに置いてあったんです。ただ、アニメの台本はいつもと全く違うので難しくて、最初はどこを読むんだろうと(笑)。映像を仮でいただいて、それに合わせながら練習しましたが、実写とはぜんぜん違う世界なんだなと感じました。
やっぱり声優さんのお仕事って同じ芝居でも全然違います。世界観を壊しちゃいけないので、ちょっと悩んだらすぐ立川監督に相談して。監督には「できるだけ細かく指示をください」とお願いして、基礎的なところから指示をもらいました。少し僕に似た雰囲気があるキャラクターで、そういう意味ではやりやすかったですね。なので余計なことはしなくていいのかなと(笑)。あまり細かいことは決めずに、探り、探りで役柄を固めていきました。
アフレコの流れとしては頭からやってみて、一通り終わった後に監督やスタッフと相談してやり直した箇所も。1度目だけで「オッケーです」と言われていたら不安なままで終わってたんだと思うんですけど、「あそこのシーンをもう1回録りましょう」とピックアップしてもらえたので、それがありがたかったです。
映画の見どころについて
「結末を知っているはずなのに、途中からずっとドキドキでした」
「名探偵コナン」シリーズは子供向けアニメのように思えて、実はぜんぜんそんなことはないですよね。僕は007シリーズが子供の頃から大好きで、ダニエル・クレイグが主演する作品も暇があれば繰り返し観ていたんですよ。現場でも話をしていたんですが、実写ではできないようなこともアニメではできる。日本人の物語を作る力…アイデアは決して海外作品に引けをとっていないなあと。改めて「名探偵コナン」を観て、やっぱり日本のアニメはすごいなと思いました。
今回は、コナン君の一番の理解者のうちの1人である灰原哀ちゃんがメインになっている物語なんですけど、かなりのピンチを迎えるんです。僕は結末を知っているはずなのに、途中からずっとドキドキでした。「名探偵コナン」は老若男女関わらずコナン君に感情移入できる作品で、絵柄も綺麗。蘭ちゃんのアクションシーンもかっこ良かったので、早く完成が観たいですね。
心に余裕を持つ秘訣とは?
「最近は、自分で自分を楽しませてあげるにはどうしたらいいんだろうと考えています」
例えばスポーツの場面だったり、仕事の時だったりで、僕はどちらかというとガチガチになってしまうタイプ。だから「緊張しないようにするにはどうしたらいいのか」とか、「緊張していてもリラックスできる方法はなんだろう」ということを常に考えています。そんな時に思うのは、“ちゃんとやろうとしない”こと。「自分は完璧じゃないから、できなくて当たり前でしょ」という発想なんです。もちろん仕事はちゃんとやるんですけど、それ以外のところは人としてそんなにしっかりしすぎなくてもいい。「自分を許してあげる」というのはいつも意識しているところではあります。
これまで割とがむしゃらに仕事をしてきたんですけど、最近は自分で自分を楽しませてあげるにはどうしたらいいんだろうと考えています。それで昨年は少し仕事をセーブしてみたりもしたんですけど、あれ?仕事している時の方が楽しいかもと思ったり(笑)。昔とはちょっと違う仕事とのつきあい方が見つけられました。要はバランスが大切なんですよね。
IKKI SAWAMURA
1967年7月10日生まれ。 モデルとして芸能活動を開始し、1996年に俳優デビュー。「浅見光彦シリーズ」や「DOCTORS~最強の名医~」シリーズなどの代表作を持つ。今春にはドラマスペシャル「ペルソナの密告 3つの顔をもつ容疑者」で主演を飾ったほか、『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』では13年ぶりの声優に。
Photo:平野司 Text:足立美由紀 Styling:鬼塚美代子(アンジュ) Hair&Make:INOMATA (&’s management)
東京・八丈島近海に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを
繋ぐための海洋施設『パシフィック・ブイ』。本格稼働に向けて世界
各国のエンジニアが集結し、とある『新技術』のテストも進められてい
た。そこへコナンの宿敵・黒ずくめの組織が忍び寄り……。
監督:立川譲
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ[ほか]
ゲスト声優:沢村一樹
●2023年4月14日(金)全国ロードショー
(情報は公開時点のものです)