GACKT『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』で再び主演。今の時代だからこその “くだらなさ”の意義

2019年に公開され、埼玉をディスり大ヒットを記録した『翔んで埼玉』。魔夜峰央が1982年に発表した人気漫画を実写化したこの作品は、第43回日本アカデミー賞で最多12部門受賞の快挙となった。それから4年、「日本埼玉化計画」の第二章となる『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が公開される。東西対決を描いた本作では武内英樹監督ほか主要キャストが続投。そこで主人公である麻実麗を再び演じたGACKTに、続編への想いを語ってもらった。

麻実麗を演じる際のキャラクター設定について

Z4A9421 - GACKT『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』で再び主演。今の時代だからこその “くだらなさ”の意義

「ブレないよう、キャラクターの維持を一番大切にして演じました」

ボクが演じた麻実麗は、原作者である魔夜先生の代表作『パタリロ!』に登場するバンコランがモチーフです。1作目で一つの戦いを終えて少し落ち着いたものの、2作目でまたトラブルに直面して麗の独特の熱さが出てきます。シリーズが進むと役者って過剰表現をしたくなるんですけど、そうすると本質が見えなくなりがち。いろんな面白い演技をする方もいらっしゃるんで、ボク自身はブレないよう、キャラクターの維持を一番大切にして演じていました。

“耽美”な表現で言えば、ずっと耽美で生きてきているんでおそらく演じる上での無理はないんです。ただナルシズムに走ると、宝塚歌劇のようなシアトリカル(劇場風)な表現になってしまう。1作目の時からシアトリカルな方向に進むのかどうかは打ち合わせをしていて、それは違うと。あくまでも演技はリアルで、その上で耽美な世界観を真剣にやろうと演技の方向性を決めていました。

大変だったシーンと一番好きなシーン

75c140d3601436d9bf49d9f8aa3af58a - GACKT『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』で再び主演。今の時代だからこその “くだらなさ”の意義

「環境としては過酷な現場でした」

大変だったのは海やビーチのシーンで、あれを撮影したのは極寒の真冬です。あと甲子園の地下施設のシーンでは実際に1週間ほどロケが行われましたが、あの現場もかなり寒くてエグかった。撮影期間も思った以上に長く、早朝から夜中まで連日の撮影でしたし、役者とエキストラ含めた大人数の撮影だとなかなか息が合わないからやり直しの回数も半端なくて、本番前に疲弊した。環境としては過酷な現場でしたね。

逆に好きなシーンは(二階堂)ふみちゃんが白い粉に毒されて大阪人化してしまうところ。あの白い粉って、口にすると関西人になるとか、大阪の人間になるっていう設定ではなくて、自分が思う大阪人のイメージが表に出てくる設定なんです。ボクの大阪のイメージは「ミナミの帝王」なんですけど、ふみちゃんが演じた百美の思うイメージは“横山やすしさん”だったという(笑)。ボクは個人的にあのシーンが大好きです。

武内組に参加したことについて

7bcd2e717797bddf2ed5e9b9e1cba664 - GACKT『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』で再び主演。今の時代だからこその “くだらなさ”の意義

「武内監督と出会ったことで“寛容な気持ち”を手に入れました」

ボクね、もう少し神経質な性格なんですけど、武内監督と出会ったことで“寛容な気持ち”を手に入れました。現場ではそのシーンが面白いかどうかも分からないんで、その都度武内監督に確認して、それで問題ないならオッケーと。「ここはもう少しテンポを上げて」とか、「ここの感情表現はもう少しふり幅があっていいですよ」と言われて何回も撮り直すんですけど、その判断って全て武内ジャッジなんですよね。ボクの性格だと、どこまで、何を求められているのかを突き詰めて、それを完全に自分の中に入れてから演りたいっていうのがあるんだけど。

やっぱり武内監督のチームは、モノづくりに対するプロ意識や、完成させた時の画作りを追求する姿勢が非常に高いなと感じます。だからもう武内さんの言葉を信じる、「監督がいいというなら」という感覚でしたね。

『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』への想いと意義

Z4A9388 - GACKT『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』で再び主演。今の時代だからこその “くだらなさ”の意義

「今この時代に必要なのは、寛容さやくだらないことを受け入れる気持ちの大きさ」

続編の話を聞いた時は、「やめましょう、1作目が当たったのは奇跡だったんで。奇跡は何度も起きないので、みんなの良い思い出として終わらせましょう」と最初はお断りしました。でも名のある役者さんたちがすでに巻き込まれていて、もうやるしかないでしょうという状態で。これで大コケしたらみんなに謝らないといけないのでツライです。

本当にみんなが2作目を観たいのかという疑問はずっとあります。でもボクが身体を壊して撮影が1年以上延期になって、多くのスタッフと共演者の方が帰りを待っていてくれたのが嬉しかった。それに応えなくてはと思っています。

完成した作品を観ての感想は、「なんてくだらないんだろう」というのが一番最初に出た言葉。でも今この時代に必要なことって、寛容さだったり、くだらないことを受け入れる気持ちの大きさだったりだと思うんです。難しく考えすぎなくてもいいことを目くじら立てて議論すると、だんだんつまらない世の中になっていく。だからこの作品を観終えた後に、「くだらないと思える感情って必要だよな」って皆さんに思ってもらえれば、この作品が公開される意義はあるんじゃないですかね。

GACKT
1973年7月4日生まれ。
ミュージシャン、俳優、実業家、インフルエンサーなど多彩な分野で活躍。NHK大河ドラマ「風林火山」(’07)やハリウッド映画『BUNRAKU』(’10)に出演したほか、前作『翔んで埼玉』(’19)では第43回日本アカデミー賞にて優秀主演男優賞を受賞した。2024年には「GACKT LASTSONGS 2024 feat. K」が全国5都市7公演で開催決定。

Text:足立美由紀 Styling:大友洸介 Hair&Make:タナベコウタ

さらなる平和を求めて埼玉解放戦線の麗(GACKT)は「越谷に海を作る」という無謀な計画を立てる。壇ノ浦百美(二階堂ふみ)を残し、和歌山の白浜の砂を持ち帰るために大海原を進むが、嵐に巻き込まれて船が難破してしまう。和歌山の岸に漂着した麗は滋賀解放戦線の桔梗魁(杏)と出会い…。
監督:武内英樹
出演:GACKT、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助ほか
●2023年11月23日(木・祝)全国ロードショー

©2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会

(情報は公開時点のものです)

あなたにオススメ