170年前に天才と呼ばれた絵師・葛飾北斎に注目した映画『HOKUSAI』。現代の人々にも影響を与えている彼の知られざる人生に迫る。芸術の秋に見てみたい、絵に全てを捧げた日本人アーティストをご覧あれ。
天才絵師・葛飾北斎の一代記
数少ない資料を繋ぎ合わせたオリジナル・ストーリー
幕府により自由な表現を規制されていた江戸時代。天才と呼ばれ、自分の信念を曲げずに描き続けた一人の絵師・葛飾北斎がいた。ゴッホ、モネなど世界の名だたる印象派アーティストたちに刺激を与え歴史に名を残した北斎だが、青年時代に関する資料はほとんど残っていないため謎が多い。その僅かな資料を頼りに事実を繋ぎ合わせて映画化した北斎の一代記。監督は、『探偵はBARにいる』や『相棒シリーズ X DAY』などのメガホンを取った橋本一。キャストでは、『誰も知らない』『ザ・ファブル』などに出演した、イケメン俳優の柳楽優弥が北斎の青年期を演じている。さらに、北斎の老年期を田中泯、蔦屋重三郎役に阿部寛、柳亭種彦役には永山瑛太と豪華なメンバーが勢揃いした。
世界に衝撃を与えた日本人アーティスト
生涯で描いた作品数は3万点以上
日本人なら誰もが知る浮世絵の一つ、冨嶽三十六景シリーズの「神奈川沖浪裏」。富士山を背景に船を飲み込んでしまうほどの波が前面に描かれた浮世絵である。自らを画狂人と呼び、90歳でこの世を去るまでに3万点以上を書き続けた天才絵師・葛飾北斎。子供の頃から絵を描いてきた北斎は、青年期に入ると浮世絵だけでなく、狩野派や土佐派、西洋画法など、多数の絵画を学んでいたといわれている。最近では、パスポートや新紙幣のデザインに採用され話題となった。圧倒的な画力と唯一無二の創造性で歴史に名を刻んだ世界に誇れる日本人アーティストである。
映画『HOKUSAI』あらすじ
売れない絵師がたどり着いた絵とは
時は江戸時代、腕は良いがなかなか売れない絵師・葛飾北斎は貧乏な生活を送っていた。そんなある日、人気浮世絵版元である蔦屋重三郎が北斎に目を付ける。喜多川歌麿や東洲斎写楽を世に送り出した版元の元で絵を描くが、本質を捉えられていないため蔦屋重三郎に認められないでいた。苦戦している北斎を横目に歌麿や写楽などのライバルたちに完璧に打ちのめされてしまい、やがて自分自身に迷いが生じる。そんな状況を打破するために、本当に描きたいものを見つけに絵から離れて旅へ出ることにしたが…。