「誘拐事件」の裏に隠された切ない愛を描く『流浪の月』
©2022「流浪の月」製作委員会

■“話題の一冊”では、小説やコミックを映像化した作品の放送情報を紹介。ドラマや映画を見てから原作を読んで、より詳細な心理描写や物語の背景を楽しんでもよし、先に原作を読んで、思い描いた世界が目の前に広がるのを楽しんでもよし。自分好みに物語を2度味わえる作品たちはこちら!■

広瀬すず松坂桃李のW主演で映画化された『流浪の月』は、2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうの同名小説が原作。15年の時を経て偶然再会を果たした、かつて「誘拐犯」と「被害女児」とされた2人の間に芽生える、理解されない関係性を描いた作品。世間で騒がれた「女児誘拐事件」の裏にある、2人にしかわからない真実とは―。

デビュー以来エモーショナルで観客を引き込む作品を作り上げてきた『フラガール』『悪人』『怒り』などの李相日(リ・サンイル)監督がメガホンを取った。また、『パラサイト 半地下の家族』など韓国映画史に残る作品を手掛けてきた撮影監督・ホン・ギョンピョによる水のように透き通った印象の映像にも注目。

5月13日にWOWOWシネマ、5月14日にWOWOWプライムで放映予定。

書店員からの熱烈な支持を受け「本屋大賞」に

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ー原作紹介ー
■流浪の月=書名 ■凪良ゆう=著者
■東京創元社=刊 ■定価1650円

凪良ゆうは、男性同士の恋愛を描くBL作家としては知られていたものの、一般文芸としては本書が初の単行本で、歴代の本屋大賞受賞者に比べ知名度は低い。近年は既に売れている本が選ばれる傾向にあった中、この作品に心震わされた書店員たちの「この物語を届けたい」という純粋な想いが受賞に至らせた。

「理屈にならない想いを文学に昇華させた力量は素晴らしい」、「心のざわつきが止まらない。読んでいて溺れそうになる。こんな小説は初めてだ」、「もうすっかり凪良ゆう中毒にされてしまいました」など作品に引き込まれた書店員たちのコメントが寄せられている。

あらすじ

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©2022「流浪の月」製作委員会

父を亡くし、母に恋人ができてからは伯母の家に引き取られて過ごしていた更紗(さらさ)、10歳。居心地が悪いだけでなく、伯母の息子から性的な虐待を受けていた。公園で雨の中、本を読み続けていた更紗に傘を差し出したのは、当時19歳の孤独な大学生・文(ふみ)。帰ろうとしない更紗を家に迎え入れ、そのまま彼女は文の家に留まることとなる。自由奔放な更紗とそれを静かに見守る文の静かで幸せな生活は2ヶ月に及んだ。

しかし、ある日2人で遊びに行った先で文は警察に逮捕されることとなり、世間は2人の関係を「女児誘拐事件」と呼んだ。それ以来、2人は誘拐事件の「加害者」と「被害者」というレッテルを背負って生きていくこととなる。

15年後、2人は文の経営するカフェで偶然再会する。それぞれの元には恋人がいた。しかし文に会いたくてたまらなかった更紗はカフェに通いはじめ、同棲していた恋人・亮の怒りを買うことに…。

「あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。」
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。

横浜流星がダークな役柄に挑戦

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©2022「流浪の月」製作委員会

これまでクリーンな印象の役柄が多かった横浜流星が、今作品では戦慄すら覚えるダークな役柄を演じ、話題を呼んでいる。

演じるのは、「女児誘拐事件の被害者」というレッテルを貼られながら生きてきた更紗(広瀬すず)を大切にしていると見えた恋人・亮。実はDV気質な亮は、「亮がいないと生きていけない」という逃げ場のない女性を選ぶという厄介な性癖があった。文のカフェに通うようになった更紗の異変に気づいてからの亮の言動は、同一人物とは思えないほど激変していく。更紗への強すぎる愛情が、やがて支配、暴力へと変わっていく。

目をそむけたくなるような暴力シーンにも挑戦し、ネット上には「(ハマりすぎて)嫌いになりそうだった」「怖かった」「凄すぎた」「神がかっている」など多くの感想が寄せられた。

横浜は「最初、自分の中に亮という人物の要素がまったくないと思っていたので、非常に大きな壁でした」と自身とかけ離れたキャラクターに戸惑ったという。特に、14歳の時には世界一にも輝いた空手で養われた「人に弱みを見せない」精神ゆえ、恋人に甘える演技をすることに苦戦したという。

亮という人物は救いようのないDV男だが、ただの悪党でなく、ひとりの人間として見ることができるのは彼が演じたからこそだ。

[映]流浪の月

放送局:WOWOWシネマ
放送日:2023年5月13日
放送時間:午後8:00~10:45
制作年/国:2022年/日本
監督:李相日
出演:広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大ほか

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