近日公開
配給:キノフィルムズ/東京テアトル
【STORY】 高校に通うアフリカ系アメリカ人のルース・エドガーは、文武両道の模範的な優等生。彼は、さまざまなルーツの生徒が通う学校で誰からも慕われていて…。
このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。
アフリカの紛争国で7歳にして兵士になったルース・エドガー。本作は、その少年がアメリカの白人夫婦の養子となってから10年後の姿を描くサスペンスフルな人間ドラマ。スポーツも勉強も優秀な“完璧な優等生”に成長したルースだったが、その心の底には――。
人種、貧富、男女の差別、そして世代のギャップを描きつつ、要は「人は、見かけじゃわからない?」ということですが、肝心の「ルースは何者なのか?」の答えは観客の受け取りかた次第。この“観客に結果を委ねる手法”は、脚本も担当したジュリアス・オナー監督の得意ワザですが、私としてはちょっとモヤモヤとした気分が残りました。ルースを演じたケルヴィン・ハリソン・Jr.は、いまやハリウッドで大注目の若手。デンゼル・ワシントンやウィル・スミスの若き日と同じ輝きを放っていますから、要チェックです。
物語の始まりは、ルースと同じアフリカ系の女性教師が、彼のレポートの中に過激な思想を感じたことから。その教師から面談を求められたルースの両親がスケジュールの話をします。
エイミー(母):Luce will have one-on-one time with the professor.
ルースは先生と一対一で会う予定なのよ。
<one-on-one(一対一)>は、もともとバスケットボールの攻防を意味した言葉ですが、最近では広い意味で使われています。たとえば、「Let’s have one-on-one talk.(一対一で話をしよう。)」や、「a one-on-one interview(一対一のインタビュー)」のように。
さて、息子の教育に熱心なエイミーに、ちょっと引き気味な父親のセリフの中にも注目のフレーズがあります。
ピーター(父):But this weekend, we have the Sip and See.
でも週末は赤ん坊のお披露目パーティだよ。
<Sip and See>は、生まれたばかりの赤ちゃんをお披露目する小さなパーティ。<sip>は「飲み物を少量飲む」ことで、「ワインなどをちょっと飲んで、生まれたベビーを見る」という会。プレゼントを持ち寄ってお祝いする<ベビーシャワー baby shower>もありますが、この<Sip and See>はそれほど大げさではありません。手ぶらで行って、ちょっとお茶やワインを飲んで、ベビーの顔を見たら帰っていいという気軽さもあって、最近のトレンドとなっているようです。不良っぽい友だちにルースが言うセリフにも、意外な意味を持つ単語があります。
ルース:You have beef with him?
君はあいつと仲が悪いのか?
ここでの<beef>は「牛肉」ではありません! ヒップホップミュージックなどでもよく使われるスラングで「不満」「仲が悪い」「文句」などを意味します。「I have beef with her for many years.(長年、彼女にはアタマに来ているの。)」「You have beef with me?(私に文句があんの?)」という感じです。
ここで、ベビー誕生にちなんだお話をひとつ。じつは4月の末日にリチャード・ギアから“第三子が誕生!”の喜びのメールが届きました。3人目の奥様のアレハンドラ・シルバさんとの間に初めて生まれた男の子アレクサンダーくんは、昨年ニューヨークを訪れた際に抱っこをさせていただいたのですが、年子で男の子が誕生したとはびっくり。そして、後日送られてきた写真を見て笑ってしまいました。というのも、生まれた直後=3時間後に撮影した写真だそうですが、これが赤ちゃんなのにすっかりハンサムな顔! しかも、リチャードにとって長男のホーマンくんも次男のアレクサンダーくんも、それぞれのママにそっくりだったのですが、3人目の赤ちゃんはリチャードにそっくり! これじゃ、70歳のパパもメロメロでしょうねぇ。久しぶりの明るいニュースに、和ませていただきました。
▽『ルース・エドガー』で教師を演じたオクタヴィア・スペンサーが主人公の同僚役で出演
『シェイプ・オブ・ウォーター』より
政府秘密研究所の清掃係と半魚人の純愛を描いたアカデミー賞4部門受賞作。セリフは映画館の看守がヒロインにチケットを渡してのひと言。
I’ll throw in a free popcorn and soda!
ただのポップコーンとソーダもおまけだよ!
日本で<soda(ソーダ)>といえば炭酸系の飲み物ですが、アメリカではコーヒーや紅茶以外のソフトドリンク類は何でも<soda>と呼ぶことが多いので、覚えておいて!
(情報は記事公開時点の内容です)