鬼才ジョーダン・ピール×製作ジェイソン・ブラムが再びタッグを組んだサプライズスリラー『アス』｜ Mcura

機知にとんだ発想で世界をあっと言わせた『ゲット・アウト』（2017年）のジョーダン・ピール監督が、再びハリウッドの敏腕プロデューサーであるジェイソン・ブラムとタッグを組んで手掛けた2作目の監督作『アス』（2019年）。
前作に続いて人種差別に鋭く切り込み、ある家族が自分とそっくりな“わたしたち”と対峙することで引き起こされる恐怖と戦いを描いている。
今回はサプライズスリラーと銘打たれた戦慄の映画『アス』を、ネタバレすることなしに紹介してみたい。

あらすじ

別荘を訪れた一家は自分たちそっくりのシルエットを発見し…

アデレードは夫・ゲイブ、娘・ゾーラ、息子・ジェイソンと共に、家族4人でアメリカ・カリフォルニア州サンタクルーズにある別荘を訪れていた。
幼い頃、海辺の遊園地のミラーハウスに迷い込み、自分とそっくりな少女に遭遇したアデレードは激しい恐怖を感じたことで失語症を患い、苦しんだ経験があった。
そのトラウマからアデレードはビーチハウスへ行くのをためらうが、夫の積極的な誘いで子供たちとしぶしぶ海へ。
海では息子のジェイソンが砂浜で両手を挙げて佇む奇妙な男を目撃。
さらにその夜、一家が別宅でくつろいでいると突然電気が消え、玄関先に不気味な4人の不審者が現れる。
アデレードは不審者たちによって拘束され、夫と娘も襲われてしまう一家。だが、息子のジェイソンは逃げ出すことに成功して…。

見どころ

着想の基となったのは「ドッペルゲンガーへの恐怖」

自分を満足させるホラーを作ろうと思い『ゲット・アウト』を製作した大のホラー好きで知られるピール監督。
「ドッペルゲンガーへの根強い恐怖に着想を得た」という本作を製作するにあたっては、“最大の敵は自分である”というアイデアを軸に、ドッペルゲンガーを“死を暗示する負のイメージ”として物語を紡いでいったという。
ネタバレになってしまうので多くは語れないが、この他にも、本作には『不思議な国のアリス』を彷彿とさせる地下の世界を暗示するうさぎ、恐怖の象徴であるハサミ、分断からの逆襲を意味する赤いジャンプスーツなど、多くのメタファーが埋め込まれている。

コメディアンとしての顔も持つジョーダン・ピール監督

日本では映画監督としてのイメージの強いジョーダン・ピールだが、コメディアン＆俳優のキーガン＝マイケル・キーとコンビを組んで「Key and Peele（キー＆ピール）」というコメディ番組を制作するなど、アメリカでは人気コメディアン＆俳優として知られている。
近年のピールは『トイ・ストーリー４』（2019年）や『コウノトリ大作戦！』（2016年）などアニメーション映画の声優を務め、スパイク・リーが監督する『ブラック・クランズマン』（2018年）に出演するなど役者として活躍。
そして映画監督として脚本・製作を兼任して手掛けた『ゲット・アウト』、『アス』はともにスマッシュヒットを飛ばし、新進気鋭の映画監督として臨む長編第3作目は2022年に全米公開される予定となっている。
なおオリジナル脚本を大切に考えるピール監督は、次作でも監督・脚本・製作を担当するという。