新作で忘れたくない『デューン/砂の惑星』(1984年)

続編の制作も発表されているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画『DUNE/デューン 砂の惑星』。その原作は、何度も映像化が試みられた名作SF小説である。今回は、1984年にデヴィット・リンチ監督が映像化した『デューン/砂の惑星』を紹介したい。

そもそも『デューン/砂の惑星』の原作小説って?

ハヤカワ文庫版の表紙と挿絵はあの人が担当!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『DUNE/デューン 砂の惑星』もデヴィット・リンチ監督『デューン/砂の惑星』も、アメリカのSF作家であるフランク・ハーバートが1965年に発表した小説「デューン」を原作としている。
原作小説は全6作からなる大作SFシリーズであり、『砂の惑星』というのは第1作目につけられたタイトルである。(『デューン/砂の惑星』)

出版直後から幾度も映像化の構想が立ち上がったというが、その壮大かつ複雑な世界感の前に制作は困難を極め、多くの人が挫折していったと言われている。(『エル・トポ』のアレハンドロ・ホドロフスキーなど)
そんな小説を初めて映像化させたのが、今回紹介するデヴィット・リンチ監督が手掛けた『デューン/砂の惑星』(1984年)なのである。

ちなみに、日本では早川書房から第1作『デューン/砂の惑星』を4巻に分割して出版されており、初期のカバー表紙と挿絵を担当したのは、なんとあの石ノ森章太郎。
映画が公開されると映画のスチールに変わり、その後はイラストレーターの加藤直之の絵に変わったため、初期版はかなり貴重な版となっているのだ。

1984年版デューンはどんな評価?

ドゥニ・ヴィルヌーブ版からも分かる映像化の難しさ

前述の通り、大作SFである原作小説をデヴィット・リンチ監督が初めて映像という形に仕立て上げたのが『デューン/砂の惑星』(1984年)。
主演を務めたのは、ドラマ『ツイン・ピークス』などで知られるカイル・マクラクランで、この時初めて映画の主役に抜擢されている。

結論から言うと、デヴィット・リンチ版『デューン/砂の惑星』は、“失敗作”と評価されることの方が多い。
何より、デヴィット・リンチ自身が本作について「残念な結果を迎えた」と語っているのだ。
なお、上映時間と予算の都合で映画化を断念せざるを得なかったアレハンドロ・ホドロフスキーは、自身の夢であった映画化を他人が成し遂げたことに大変なショックを受けたそうだが、実際に本作を見た感想として
「私は病人のようによろよろと映画館に行った。映画が始まった時には今にも泣き出しそうだった。観てる間にだんだん元気が出てきた。あまりのひどさに嬉しくなった」
と、ドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』の中で語っているのも有名な話。
一方で、ホドロフスキーは「才能あるリンチがこんな駄作を作るはずがないから、製作の犠牲になったのだ」と考えているとも。

では、なぜ失敗作と評価されるような出来になってしまったのかというと、①単純に原作からして映像化の難易度がかなり高い②製作サイドからの制約がネックになったことがあげられる。

先に述べたように、原作は全6シリーズから成るSF超大作であるため、設定や登場人物が多くなって複雑化していくのは否めない。
そのため、相当量ある情報を適切に伝えていくことが大事になってくるわけだが、かといって削りすぎたりアレンジしすぎたりしてしまうと、原作の良さが失われてしまうというジレンマがある。
加えて、デヴィット・リンチはアーティスティックなものを求める監督のため、当初構想したラフカット段階では4時間超の上映時間が必要だった。
しかし、上映時間が長くなることを嫌がった製作サイド側の意向が介入してきたことで、尺を大幅に削って2時間程度のものに仕上げざるを得なかったという。
結果、ラフカットよりも大幅にスケールダウンさせたダイジェスト映像のような作品になってしまうことに。
他にも、デヴィット・リンチ監督が取り入れたかった映像描写のアイデアがレーティングの問題で採用できないことも影響し、SFファンや原作ファン、原作者からも不評を食らうような出来となってしまったのだ。

ドゥニ・ヴィルヌーブがその反省を生かしたのかは不明だが、現在公開中の『DUNE/デューン 砂の惑星』はチャプター1として扱われている。
既に続編の制作も発表されており、「デューン」という大作SF小説を複数作で映像化することにしたことが分かる。
このことからも、デヴィット・リンチ監督が制約を課せられた状態で挑んだ映像化は、あまりにも無謀で困難なものだったと言えるだろう。

その後TVドラマとしてリメイク

未公開シーンが追加されてシリーズ化

前述の通り、『デューン/砂の惑星』が不評を食らってしまった最大の原因は、尺を大幅に削らざるを得なかったことにある。
そこで、『デューン/砂の惑星』 では描き切れなかったシーンを追加してリメイクしたTVドラマ版が、アメリカで2000年に放送された。(タイトルは同じく『デューン/砂の惑星』)
そのTVドラマ版は、2001年のエミー賞(優れたドラマや番組を表彰するアメリカで権威のある文化賞)で撮影賞と視覚効果を受賞しており、シリーズ化の続編として『デューン/砂の惑星Ⅱ』が制作された。

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』が公開されてまだ日も浅いが、「デューン」に興味をもった方がいたら、あの映像化がいかに大変で、どれだけ注目されている作品なのかということを、各作品を見て是非とも感じてほしい。

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