2020年に日本で公開されたフランス映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年)。
世界的ベストセラー小説が世界同時出版された際の実話をベースに、大胆な脚色を加えてつむいだ本格ミステリーだ。
緻密かつ巧妙に張り巡らされた伏線と、スリリングに展開していく刺激的なストーリー、作家・翻訳者・精神科医と各界の著名人が絶賛した『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』をネタバレなしに紹介しよう。
ベースとなった実話「ロバート・ラングドン」シリーズ出版秘話
事実は小説よりも奇なり?信じがたい実話のプロジェクト
本作は、アメリカ人作家のダン・ブラウンによる長編推理小説「ロバート・ラングドン」シリーズ出版秘話から着想を得た、実話ベースの正統派ミステリーだ。
ブラウンのこの人気シリーズ小説はロン・ハワード監督×トム・ハンクス主演で『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年)、『天使と悪魔』(2009年)、『インフェルノ』(2016年)と3度映画化されている(小説のシリーズ順で言うと第1作目は「天使と悪魔」で「ダ・ヴィンチ・コード」が第2作目)。
そして今回ベースとなったのは、小説第4作目「インフェルノ」を出版する際に行われた信じがたいプロジェクト。
世界同時出版および海賊版&違法流出防止を実現するために、アメリカの出版社が著者ブラウンの同意のもと、翻訳者を完全隔離した地下室に滞在させ、翻訳作業にあたらせたという実話である。
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』あらすじ
9か国の翻訳者たちが完全隔離される中、出版前の原稿の一部がネットに流出し…
ドイツで開催されたブックフェアで、出版社の社長を務めるエリック・アングストロームが世界的なベストセラーとなっているミステリー小説三部作の完結編「デダリュス」を全世界一斉販売することを宣言。
翻訳作業を担当する9か国の翻訳者がフランスの人里離れた豪邸に集められる。
海賊版や違法流出のリスクを避けるため、翻訳者たちは外部との接触の一切を禁じられ、地下のシェルターに隔離されながら翻訳作業にあたることに。
贅沢な食事やプールなど、豪華施設をあてがわれた翻訳者たちだったが、閉鎖された空間でストレスをためながら翻訳を進めていく。
そんな折、厳重だったはずのセキュリティをかいくぐり、原稿の一部がネットに流出してしまう。
音楽はフランス在住の日本人作曲家・三宅純が担当
多数の映画に楽曲を提供する世界的な音楽家
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の音楽を担当したのは、フランス在住の日本人アーティストであり作曲家の三宅純。
世界的な映画音楽家として知られる彼は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2012年)やリチャード・ギア主演作『嘘はフィクサーのはじまり』(2016年)、蜷川実花監督作『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019年)など多数の映画に楽曲を提供している。
また本作の監督・脚本を務めたのは、『タイピスト!』(2012年)で長編映画監督デビューを果たしたレジス・ロワンサル。
そして「デダリュス」の作者オスカル・ブラックの正体を知る強欲な出版社社長エリックをランベール・ウィルソン、「デダリュス」を信奉するロシア人翻訳者カテリーナをオルガ・キュリレンコが演じている。
配信情報
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』は、現在U-NEXTで配信中。
各界のと名人が絶賛した、世界的ベストセラー小説の出版秘話に基づく極上ミステリーをこの機会にチェックしてみては?