「事実は小説より奇なり」とはイギリスの詩人バイロンの言葉だが、時として事実はフィクションよりもミステリアスで、予想だにしない結末が待っているもの。
そのことを実感させられるのが、実話を基につむがれた『幸せの行方…』(2010年)にまつわる顛末だ。
映画の公開がきっかけで明らかになった真実を踏まえつつ、主人公を演じたライアン・ゴズリングの怪演を堪能して欲しい。
あらすじ
一般家庭で育ったケイティ(キルスティン・ダンスト)は、ニューヨークで不動産業を営むダースト家の御曹司・デイビット(ライアン・ゴズリング)と出会い、一目で恋に落ちる。
デイビットの父親から身分違いだと反対されながらも結婚した二人は田舎町へと移り、自然食品の店「All Good Things」をオープンさせ慎ましやかな新婚生活を送っていた。
しかし、父親の強引な勧めでニューヨークへと戻されたデイビットは、実家の不動産業を手伝うことに。
そんな折、ケイティが妊娠したことを知ったデイビットは、彼女に中絶するよう告げる…。
アメリカで「史上最も不穏な事件」と呼ばれた失踪事件&殺人事件
米国の不動産王セイモア・ダーストの息子である御曹司のロバートは、1982年の妻キャシーの失踪事件、2000年の作家でルポライターのスーザン射殺事件での関与が疑われていながら、いずれも証拠不十分で逮捕には至っていない“疑惑の人”だ。
しかし2001年、ロバートの隣人モーリスがバラバラ死体で発見され、ついに逮捕された彼は殺害を自供するも、高額を払って雇った敏腕弁護士のおかげで正当防衛を勝ち取っている。
これらの世紀の未解決事件を描いたのが『幸せの行方…』だ。
そして映画を観たロバートが、その感想を伝えるため監督に連絡をしてきたことで、テレビのドキュメンタリー番組の制作が決定。
その番組収録の休憩中にワイヤレスマイクをつけたままトイレに入ったロバートが、犯行を自供する言葉をつぶやいたことが証拠となり逮捕に至ったのだという。
ライアン・ゴズリングが鬼気迫る演技で体現!
主演は『ファースト・マン』(2018年)、『ラ・ラ・ランド』(2016年)のライアン・ゴズリング。
本作では陪審員を前に、法廷で自らの過去を振り返っていく形でデイビットの一連の事件が語られていくと同時に、7歳の頃に目の前で母親が自殺したことで心に深い傷を負ったデイビットの心の闇も暴かれていく。
ゴズリングはそんな不安定な主人公の若かりし頃から壮年期までを、鬼気迫る演技で体現している。
[字]2020年12月13日(日)25:45~27:45