俳優業50周年を経て今年で52年目
初心を忘れないことを大切にしています

何かに挑戦するのに遅いことはない。
私も見習って挑戦し続けたいと思いました
世界的なファッションデザイナー、コシノヒロコ、コシノジュンコ、コシノミチコの三姉妹の母親である小篠綾子の生涯を描いた『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』。本作でコシノアヤコ(小篠綾子)を15歳から92歳まで演じたのは、意外にも映画初主演を飾る大地真央。彼女に作品への思いや、苦労、また撮影秘話を語ってもらった。
ドラマで主演させていただいたことはありますが、映画では初めてです。約120分で綾子さんの生涯を私1人で演じて欲しいとのご依頼でしたので、それをお受けするのは勇気のいることではありました。バイタリティがあってすべてをハッピーにしてしまうお人柄。まさにゴッドマザーという言葉がぴったり。そんな綾子さんを演じるにあたり、それぞれの時代に合わせた髪型や、衣装にも助けてもらいました。本番では、監督をはじめ才能溢れるスタッフ、キャストの皆さんと、類い稀な綾子さんの人生を生きられる幸せを噛み締めながら演じていました。綾子さんは豪快で怖いもの知らずだけれど、乙女チックなところも持ち合わせておられるのがとても魅力的に感じました。
役に近づくために、まずは足踏みミシンに慣れることから始めました。用意してくださっていた綾子さんがご愛用されていたミシンと同じミシンに触れた時、綾子さんがデザインされた作品や実際に着られていたお洋服を拝見した時、いくつかをサイズを合わせて着用させていただいた時、それと岸和田弁(笑)、どれもが綾子さんを近くに感じることができ、役に入る大きな手助けになりました。
演じたことで、綾子さんはよく放任主義のように言われ、ご本人もそうおっしゃっていますが、「知らん」「あんたが考え」という教育方針は手助けするのはたやすいことだけれど、そうすると娘はダメになる、と心を鬼にするその強さが綾子さんの愛だったのだと感じるようになりました。すごく苦しい葛藤もあったことでしょうけれど、娘に自分の力で乗り越えようとさせる精神が素敵な母性だと思いました。
そして、綾子さんは戦前の男性が中心だった社会にグイグイと入って行って、結果を出して周囲を納得させて、彼女に協力してくれる人たちを集めてみせた。それってすごいことだと思います。並大抵のパワーじゃできないですよね。綾子さんがお父さんから受け継いだ言葉に「向こう岸、見ているだけでは渡れない」というものがあります。行動に移して実践しないことには何も始まらない、いくつになっても何か新しいことに挑戦するのに遅いということはない、本当にそうだと思います。私も見習って挑戦し続けたいと思いました。
私は初舞台から50周年を経て今年で52年目になりますが、初心を忘れないことを大切にと思いながらこれまでやってきました。100%の実力を発揮するのはなかなかできることではないけれど、真摯に仕事に向き合って自分ができる最大限のことをしてきたつもりです。1つ1つの仕事を積み重ねて来て振り返ったら51年経っていました。
本作に触れることでいろんなことを考えさせられました。人生のヒントがふんだんに織り込まれているので、見た方はきっとたくさんのメッセージやパワーを受け取ることができると思いますので、ぜひ多くの方に見ていただきたいと思います。
MAO DAICHI
2月5日生まれ。
1973年、宝塚歌劇団に入団し、月組男役のトップスターとして活躍した後、1985年退団。退団後の主演舞台は「マイ・フェア・レディ」「風と共に去りぬ」「ローマの休日」など多数。他の主な出演作にドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」「正直不動産」がある。
日本のファッション界に革命を起こし、昭和から平成を駆け抜けたコシノ三姉妹の母であるコシノアヤコの人生を描く。アヤコの娘である三姉妹は、コシノヒロコを黒谷友香、ジュンコを鈴木砂羽、ミチコを水上京香が演じる。監督は『カメラを止めるな!』で撮影を担当した曽根剛。
●5月23日(金)全国公開
監督:曽根剛
出演:大地真央、黒谷友香、鈴木砂羽、水上京香、温水洋一、木村祐一、市川右團次他
https://youtu.be/jezGtn0-w4M
Photo:平野 司/Text:入江奈々 / Styling:江島モモ/ Hair&Make:石月裕子