池井戸潤の本を映画化した社会派エンタメ『空飛ぶタイヤ』

最終回の視聴率が42.2%という驚異の数字を叩き出したドラマ「半沢直樹」の原作者として、今や時の人となった池井戸潤。
これまで多くの原作本が映像化されてきた彼ですが、意外にも映画化された作品は少ないというのをご存知でしょうか?
今回は、そんな池井戸潤原作映画の中から、初の映画化作品となった『空飛ぶタイヤ』をご紹介します。

あらすじ

父親の後を継ぎ中小運送会社「赤松運送」を経営する赤松徳郎は、ある日、自社のトラックがタイヤ脱落事故を起こして死傷者を出してしまったことを知る。
事故原因を一方的に整備不良とされ、「容疑者」と決め付けられてしまった赤松は、警察からの執拗な追及を受けることに。
さらには会社も社会的信用を失い、倒産寸前の状態に追い込まれてしまう。
しかし赤松は、事故原因は整備不良ではなく、事故を起こした車両自体に欠陥があったのではないかと考える。
自社の無実を信じる赤松は、家族や社員たちのために、トラックの製造販売元である大手自動車会社「ホープ自動車」に潜む闇を探り始めるのだった…。

池井戸潤らしさあふれる熱い社会派ドラマ

池井戸潤といえば、元銀行員でビジネス書の執筆や税理士・会計士向けのソフトの監修をしていた経歴を生かし、社会派エンタメ作品を得意とする小説家。
『空飛ぶタイヤ』では、2002年に起きた三菱自動車製大型トラックの脱輪による死傷事故および三菱自動車によるリコール隠し事件を下地として、経済をテーマに、企業の不正に立ち向かう男たちの熱きドラマを描いています。
映画化にあたっては、『超高速!参勤交代』などで知られる本木克英監督が見事な手腕で原作の熱量そのままに映像化。
さらにはメインの長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生をはじめ、笹野高史、岸部一徳といった重厚なストーリーにふさわい豪華実力派俳優陣が顔をそろえています。

長瀬智也が中小企業の若き社長役を熱演!

主人公の赤松徳郎を演じるのは長瀬智也。
バラエティ番組や音楽活動のみならず、俳優として数多くのドラマに出演して確かな実力を示してきた彼が、逆境に立ち向かう若手社長という役柄を熱く演じています。
見どころは何と言っても、社員を信じようとする赤松の姿勢。
整備不良を疑われたのは、門田という入社3年目の若手社員。
髪に金色のメッシュを入れて耳にピアスをつけたまま仕事をする派手な外見という偏見から、仕事も雑だったのではないか疑われてしまい、一度は「赤松運送」から去ってしまいまます。
ですが、門田が仕事中につけていたメモを見つけた赤松は、門田のことを信じようと決意し、社員を絶対に信じぬく姿勢で、どんな不利な状況でも決して折れずに「ホープ自動車」の闇に迫っていきます。
社長として社員を信じるという熱い思いを、長瀬の演技からもしっかりと感じ取ることができるでしょう。
また、赤松を支える妻を演じた深田恭子の好演も見どころです。

ディーン・フジオカ&高橋一生コンビが会社の闇に立ち向かう

巨大企業グループ「ホープグループ」に属する「ホープ自動車」に立ち向かうのは赤松だけではありません。
「ホープ自動車」に勤めるカスタマー戦略課長の沢田悠太は、当初赤松のことをただのクレーマーとしてしか扱わなかったものの、リコール隠蔽を趣旨とする「T会議」の存在を知ったことから、自社の不正を探り始めます。
そんな沢田を演じるのはディーン・フジオカ。
会社への信頼と疑惑のはざまで揺れ動く沢田の葛藤を、ディーンらしいまっすぐな演技で表現しています。
そしてもう一人、高橋一生が演じる井崎一亮もキーパーソン。
「ホープグループ」の中核を担う大手銀行「ホープ銀行」の本店営業本部に所属する井崎は、赤松・沢田に比べて表立った活躍はしないものの、銀行員らしく数字を着眼点として、「ホープ自動車」の闇に迫っていきます。

会社の中から立ち向かおうとする沢田、グループ会社という中間の立場で闇を暴こうとする井崎。
赤松だけではなく、この二人がいたからこその交差する展開で視聴者を楽しませてくれます。

おわりに

窮地に追い込まれた中小企業が巨大企業に対して下剋上を仕掛ける熱いドラマ性と重厚感あるストーリーは、池井戸潤原作だけあってさすがの一言。
心が折れそうになりながらも強大な敵に立ち向かっていく男たちの姿に勇気づけられる、そんな仕上がりの作品になっていると思います。
豪華キャストによって紡がれる不正との戦いをぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。

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(情報は記事公開時点のものです)

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余談ですが『空飛ぶタイヤ』は、2009年にWOWOWにて仲村トオル主演でドラマ化されています。(全5話)
こちらも配信サイトなどで見ることができますので、興味のある方は見比べてみても面白いかもしれません。

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