主演作『とと姉ちゃん』以来、引っ張りだこで主演映画「浜の朝日の嘘つきどもと」も絶賛公開中の実力派女優・高畑充希。彼女の最新作となるのが、WOWOWの『連続ドラマW いりびと-異邦人-』だ。美術キュレーター出身の人気作家・原田マハの小説を基に、美術界の人々が繰り広げる熾烈な駆け引きと、天才画家の死の謎が描かれるミステリー。高畑は、稀代の美術蒐集家だった祖父の審美眼を受け継ぐ篁（たかむら）菜穂を演じる。類まれな才能を持ちながらも控えめな性格で、間近に迫った出産に不安を感じているという繊細な役どころだ。療養先の京都で、無名画家の描いた一枚の絵に魅了されたことから、菜穂の運命が大きく動き出していく。ドラマW初主演となる高畑が、撮影秘話を語ってくれた。
菜穂という主人公
「彼女の周りの人々だけが色々画策しているっていう(笑)」
ドラマ版の菜穂は原作とは違い、つかみどころのないキャラクターになっているんです。主人公なのに、感情表現は乏しいし、派手なアクションも起こさない。彼女の周りの人々だけが色々画策しているっていう(笑)。監督が「菜穂の心情は、映像で表現したい」とおっしゃっていたので、むしろ余計な演技はしないよう努めました。今作は、ずっと生きづらさを感じていた菜穂が、徐々に「自分の生きやすい場所で、自由に生きて良いんだ」と気付く物語です。全編5話を通じて、菜穂の小さな変化の積み重ねが、一本の線で繋がるようにと丁寧に演じていきました。
学びの多かった撮影
「原作者の原田さんに教えていただいた日本画の鑑賞方法は、空間全体を観ること」
撮影でクロード・モネの『睡蓮』など色々な絵画を見ることができました。普段美術館に行く機会があまりないので、役作りで絵画に触れたり、その歴史を学べたのは嬉しかった。特に興味深かったのは、原作者の原田さんに教えていただいた日本画の鑑賞方法。「人間は自然界に生かされている」という考え方から、まず飾ってある部屋に座り、低い視点から絵だけでなく窓の外の景色や軒先の庭なども含めて、空間全体を味わうのだそうです。知らなかった世界を覗かせていただき、とても勉強になりました。
お芝居で知らない世界に触れられるのは楽しいですが、今回は審美眼のある天才という役だったので“怖い”と思いました。美術を嗜まれる方が見ると「いやいや全然そういう風に見えないよ～」と突っ込まれてしまう可能性もあって…。でも例えば、美術やスポーツ初心者の役であればリアルに自分も入門したての状態で学ぶことができるから、“楽しい”という感情の方が勝ちますね。
松重豊との本格共演
「長身の和装姿で上から睨まれると、小さな私には威圧感が物凄い！」
松重豊さんとがっつり共演するのは今回が初めて。以前、一緒に出演した音楽番組『おげんさんといっしょ』ではお互いコスプレ状態だったので、本来のカッコイイ松重さんが新鮮でした(笑)。松重さんが演じたのは、菜穂と対立する敵役の、京都画壇の日本画家・照山（しょうざん）。普段の松重さんは優しくて楽しい方ですが、長身の和装姿で上から睨まれると、小さな私には威圧感が物凄い！ 特に2人の目線だけの攻防シーンは緊張感が走ります。自分の作品の査定を申し出る照山と、彼の絵に価値を見出せない菜穂が、無言のまま心の裏側を探り合う2人の“バチバチ対決”は、個人的にお気に入りです！
自分自身とのギャップ
「役柄のイメージで『信念のある女性』だと思われることが多いけど、私自身は優柔不断(笑)」
菜穂のような「信念のある女性」を演じることが多く、私自身もそういう人なんじゃないかと思われることがよくあるんです。だけど、私は優柔不断な性格で、こだわりもあるような無いようなという感じ (笑)。以前は「自分を貫けるように強くならなきゃ」とも思っていましたが、今は色んな事が日々変わっていく世の中ですし、その都度「今を楽しく」というスタンスが、自分にはフィットしている気がしますね。
MITSUKI TAKAHATA
1991年12月14日生まれ。
2005年、ホリプロ主催の舞台で主演に抜擢され、女優デビューを飾る。代表作は、ミュージカル『ピーターパン』、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(16)など。今年は『浜の朝日の嘘つきどもと』を含む映画出演作が3本立て続けに公開されている。ミュージカル『ミス・サイゴン』が2022年夏に上演予定。
Photo：SHIN ISHIKAWA(Sketch) Text：水越小夜子 Styling：番場直美 Hair&Make：犬木愛（AGEE）
熱心な美術蒐集家で祖父から受け継いだ美術館の副館長を務める篁菜穂（高畑充希）。無名画家が描いた一枚の絵を追っていくうちに、菜穂は語られざる京都画壇の深みに踏み込み、その巨魁と対峙する。
監督：萩原健太郎
出演：高畑充希ほか
（情報は記事公開時点の内容です）
