演劇にのめり込む男とそれを支える女――切ない恋の行方を見届ける映画『劇場』

作家・又吉直樹の原点とも呼べる同名小説を映画化。『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)『ナラタージュ』(17)を手掛けた行定勲監督が恋愛の幸せ、葛藤、すれ違いを丁寧に描き上げました。

あらすじ

現実と理想の狭間で悩み続けた永田(山﨑賢人)は、言いようのない孤独を感じていた。
そんなある日、永田は自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)を見かけて声をかける。
こうしてお金のない永田は沙希の部屋に転がり込み、ふたりは一緒に住み始める。
沙希は自分の夢を重ねるように永田を応援し続け、永田もまた自分を理解し支えてくれる彼女を大切に思いつつも、理想と現実と間を埋めるようにますます演劇に没頭していく。

演劇にのめりこむ男

永田は高校からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で、脚本家兼演出家を担っています。
ですが、上演のたびに前衛的な作風は酷評され、客足も伸びず、ついには劇団員にも見放されてします。そんな彼を孤独から救いあげたのが、沙希だったのです。
沙希と暮らし始めた永田は、次第に演劇に傾倒していきます。脚本を書き上げ、公演を重ね、成功への階段を登り始めます。しかし、沙希との関係も徐々に変化していき…。
役作りで無精ひげを生やして挑んだ新境地の山﨑賢人に注目です!

けなげに支え続ける女

沙希は女優になる夢を抱いて上京し、服飾の学校に通っている学生です。永田と同棲をはじめ、演劇に没頭する彼を献身的に支えていきます。しかし、永田の機嫌を損ねないよう怯えながら、言いたいことも言えずに我慢してしまいます。それが次第に沙希を追い詰めていきます。苦しくてつらいけど好きだから彼を手放せない。そんな思いをしたことがある女性は、沙希にとても共感をしてしまうかもしれません。
沙希を演じる松岡茉優の憔悴していく姿は圧巻です。

終わりに

幸せだったはずのふたりは次第にすれ違い、いつしかともにいるだけで疲れてしまうように…。ふたりの恋はどこへと向かい、どこに終着するのか。映画のラストシーンは物語のすべてを包み込み、きれいにまとめ上げています。あまりの美しさに涙がこぼれてしまいました。
ふたりの恋の行方を、最後までじっくりと見届けてください。

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