日本映画の不朽の名作『人情紙風船』が〈4Kデジタル修復版〉(2Kダウンコンバートにて放送)として、7月4日(日)に日本映画専門チャンネルでTV初放送される。
この作品を「人生の1本」と敬愛するシンガーソングライターの山下達郎が音声と写真のみながら映画番組に初出演。
『日曜邦画劇場』の放送20周年、1000回記念のゲストとして登場し、〈劇場支配人〉の軽部真一フジテレビアナウンサーとのスペシャル対談が収録された。
山下達郎の「人生の1本」……『人情紙風船』とは?
『人情紙風船』は1937年(昭和12年)の8月に公開された時代劇映画で、今からなんと84年前に作られた作品です。
時代は昭和初期、日本を含めた全世界が激しい戦争へと向かっていった時期でした。
歌舞伎の演目『髪結新三(かみゆいしんざ)』の物語をアレンジし、貧乏長屋で暮らす庶民の悲哀を徹底したリアリズムで描き出したこの作品には、日中戦争が勃発する前後(同年7月)に大衆が感じていた不安や閉塞感といった時代の雰囲気が刻み込まれています。
活劇(アクション)を中心としたいわゆる「チャンバラ映画」とはまったく異なる演出のスタイルは《ちょんまげをつけた現代劇》とも呼ばれ、日本映画史上の傑作として評価されています。
伝説の天才監督・山中貞雄
監督の山中貞雄は当時27歳にしてすでに20本以上の作品を監督し、アメリカやヨーロッパの映画の演出技法を時代劇映画に持ち込んだ、期待の若手監督でした。
しかし、本作の公開日に赤紙(召集令状)を受け取った山中は徴兵され中国戦線へ。
翌1938年(昭和13年)に病のため戦地で亡くなり、本作が遺作となりました。
戦前に制作された日本映画のフィルム(映像・音声)は戦中・戦後の混乱もあってほとんどが失われてしまい、山中監督の作品はこの『人情紙風船』を含め、きちんとした形で観賞できるものはわずかに3本しか残されていません。
生きていればもっともっと素晴らしい作品を残したであろうと、日本映画史の伝説的な存在として現在も語り継がれています。
実は大の映画ファン・山下達郎
山下達郎さんは「RIDE ON TIME」「クリスマス・イブ」などのヒット曲で知られるシンガーソングライター。
かつて、ミュージシャン仲間の大瀧詠一さんとラジオ番組でたびたび映画談義を交わしていたほどの映画好きで、『人情紙風船』と初めて出会ったのは「1980年代のレンタルビデオ店」だったといいます。
山下さんは「私は映画の専門家ではないので……」と謙遜しつつも、『人情紙風船』の作品紹介と批評が掲載された84年前の『キネマ旬報』誌や、山中監督が大幅に内容を書き換える前段階のシナリオ(脚本)を収録現場に持参するなど、その知見は非常に本格的なもの。
さらに、「映画というメディアは文学というよりも音楽に近いと思っています」と、ミュージシャンならではの鋭い指摘も飛び出し、すでに『人情紙風船』を何度も観ている映画ファンにとっても新たな発見があること間違いなしの対談となりました。
この対談の全貌は、7月4日(日)『人情紙風船』の本編終了後に放送されます。
放送情報
日曜邦画劇場SP 放送開始20周年・1000回記念
『人情紙風船』〈4Kデジタル修復版〉TV初放送 (2Kダウンコンバートにて放送 )
7月4日(日)21:00~23:15ほか
※本編放送後、軽部真一劇場支配人とシンガーソングライター・山下達郎のスペシャル音声対談を放送。