大林宣彦監督が最新作にこめた思いとは『海辺の映画館―キネマの玉手箱』

2020年4月10日にこの世を去ってしまった“映像の魔術師”こと大林宣彦監督。
昨日、未発表の白黒短編作品「海外特派員 ある映像作家の場合」が発見され、10月15日~18日に開催される京都国際映画祭で上映されることが発表されました。
そんな大林監督が最後に手掛けた作品が『海辺の映画館―キネマの玉手箱』。

新型コロナウイルス感染症の影響で一度公開延期になってしまい、残念ながら大林監督は公開前にお亡くなりになってしまったため、この作品にどんな思いを込めたのか、実際に聞くことは叶いません。
しかし、作品を見れば、そこに込められた思いは伝わってくるもの。
大林宣彦監督が最後に残したメッセージを紐解くべく、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』をご紹介していきます。

あらすじ

瀬戸内海に面した海辺の街・尾道にある「瀬戸内キネマ」。
嵐の夜、閉館が決まったこの古い映画館で「日本の戦争映画大特集」のオールナイト上映が始まった。
ひょんなことから観客席に集まった3人の青年は、気が付くとスクリーンの世界にタイムリープ。
乱世の幕末、戊辰戦争、日中戦争、太平洋戦争と、次々と否応なしに戦いに巻き込まれていく。
やがて3人は、原爆が投下される直前、1945年8月の広島へ。
そこで彼らが出会ったのは、劇作家・丸山定夫と看板女優の園井恵子ら、若い女性たちが中心の劇団員―被ばくした全員が非業の死を遂げた移動劇団「桜隊」のメンバーであった。
3人はどうにか彼女たちを運命から救おうと奔走するのだが…。

大林宣彦監督の生まれ故郷が舞台

80歳を超えても精力的に活動していた大林宣彦監督。
映画を通して鮮烈なメッセージを発信し続け、映画人をはじめ多くの人々に影響を与えてきました。

『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は、そんな大林監督が生まれ育った故郷であり、名作『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の舞台にもなった広島県尾道市で20年ぶりに撮影を敢行。
3時間という長さをまったく感じさせない、ポップな感性にあふれた脅威の映像が目まぐるしく展開する作品に仕上がりました。

まさに“玉手箱”!ジャンルにとらわれない大林ワールドが展開

その映画人生で数多くの映画作品を世に放ってきた大林宣彦監督。
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』では、時代劇、アクション、ラブロマンス、SF、ファンタジー、ミュージカル…と、いくつものジャンルを華麗に横断して見せています。
まさに“キネマの玉手箱”のと呼ぶにふさわしい本作は、「映画への情熱」と「平和への想い」をもち続けた大林監督だけにしか撮ることができない作品であると言えるでしょう。

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