映画『ワンダー 君は太陽』は実話?原作執筆のきっかけとは

映画『ワンダー 君は太陽』の主人公の少年・オギーは人と違う見た目で生まれてきた。小学5年生の10歳になる年に初めて学校に通うことになったオギーは、顔を隠すためにヘルメットを被って登校する。見た目が原因でいじめや裏切りにあうが、勇気をもって生きるオギーの姿や周りの人々の温かさに胸打たれる名作を紹介する。実話ではないものの、もとになったという原作者の体験とは?

泣ける映画『ワンダー君は太陽』は実話?

原作は世界で大ヒットした小説本「ワンダー」 

原作「ワンダー」の著者R.J.パラシオは元グラフィックデザイナー。「ワンダー」は世界で800万部以上を売り上げた人気のベストセラー小説だけあって、日本でも多くの方が知っているのではないだろうか。処女作にしていきなり世界中で大ヒットとなった名著だ。そんな感動のベストセラーを映画化したのが『ワンダー 君は太陽』である。

本作の執筆のきっかけは、原作者のパラシオが現実で頭部の骨格に障害のある少女と遭遇したこと。まだ3歳だった娘が少女を見て怯えた反応をし、泣いてしまったそうだ。パラシオは少女を傷つけたくないと、娘の乗ったベビーカーを遠ざけた。すると、少女の母親は「そろそろ行かなくちゃね」と穏やかに告げて去っていった。

パラシオは大人として、母親として、少女とどのように接するのが正しいのか、自分のとった行動は少女を傷つけはしなかっただろうかと感じたそうだ。病気や障害を持つ相手や、普通の人と違う見た目の人とどう接することが良いのか、そして子どもにはどのように伝えれば良いのかわからなかったと言う。

人は見た目で判断してはいけないことや、普通の人と違う外見をしているからといって好奇の目を向けるのは良くないということを頭で理解していても、実際にその場面に出くわした時の最善の立ち居振る舞いではなかったのではないか――。
この現実の社会での体験から「ワンダー」のストーリーが誕生したそうだ。

映画『ワンダー君は太陽』あらすじ【ネタバレなし】

人と違う見た目の少年が奇跡を起こす感動の物語

10歳のオギー・プルマンは、遺伝子の疾患(トリーチャ―コリンズ症候群)で生まれつき変形のある外見で生まれてきた。度重なる手術を受けながらずっと自宅で学習をしてきたオギーは学校に通ったことがなかったが、頭が良くて勉強が得意な少年だった。オギーが5年生の10歳になる年に、母親のイザベルは夫のネートの反対を押し切ってオギーを学校に行かせることを決意する。

初めて学校に通うことになったオギーは自分の顔を隠すために、宇宙飛行士さながらのヘルメットを被って登校初日を迎える。これまでどこへ行っても自分の顔が理由で嫌な思いをしてきたからだ。
校内を親切に案内してくれる生徒たちだったが、先生の姿が見えなくなるとオギーを傷つける言葉を言い放ってきた。そして待ち受けていたのは、顔や体の見た目が原因でいじめやいやがらせが続く日々。なぜ見た目が違うだけでこんな辛い思いをしなければいけないのかと思いつめ、友達がほしいけれどできないことに悩むオギーは1人でふさぎ込んでしまう。

ある日オギーはクラスメイトのジャックに、理科の小テストの答えをこっそりと教えた。そのことがきっかけでオギーとジャックは仲良くなるのだった。しかしハロウィンの日事件が起きる。ジャックが仮装をしたオギーに気が付かず、オギーの悪口を当人の目の前で友達に言ってしまう。オギーは友達だと思っていたジャックに裏切られ、やはり自分は嫌われていたのだとショックを受ける。だが、周りの友達はオギーの賢くユニークな魅力に少しずつ気付き始めていた。

その後無事にオギーとジャックは仲直りし、オギーの周りには本当の友達が増えていった。理科が大好きなオギーは理科研究大会に向けて一生懸命準備をしたり、野外学習で起こる騒動を友達と乗り越えたりしていく。そして5年生の1年間が終わる修了式の日、一生忘れられない出来事が彼らを待っていた─。

主演:ジェイコブ・トレンブレイ
2006年10月5日カナダ・バンクーバー生まれ。第88回アカデミー賞作品賞などにノミネートされた『ルーム』(2015年)では監禁された部屋で長年母親と暮らす少年を演じて天才子役として話題になった。本作『ワンダー 君は太陽』は第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞へのノミネートをはじめ、各映画賞の若手俳優に贈られる賞にもノミネートされている。その後も多くの作品に出演し、『グッド・ボーイズ』(2019年)では大人にあこがれる多感な少年を演じ、幅のある芝居みせた。

“太陽”の周りを回る家族や友人たち

オギーの温かい家族

主人公のオギーはもちろんのこと、オギーを中心とした周囲の登場人物にも注目したい。
オギーを支える人たちは、彼の存在に大きく影響されて変化していく。生きていくうえで本当に大切なものはなにかをオギーが教えてくれるのだ。

母のイザベルはオギーが生まれてから、オギーのことを最優先に考えて過ごしてきた。家族、特に息子のオギーに対しては「 あなたは絶対に醜くないわ 」と常に励まし、勇気づけるしっかり者の母親。自分の夢を我慢し、娘のヴィアのことも気に留める余裕がなくなっていく。

父のネートも母のイザベルと同じく家族を愛している。明るく面白く振る舞うネートはムードメーカー的な存在だ。「理科の授業は積極的に行け!」とオギーを励ます言葉で送り出すなど、オギーが好きなことや彼の賢さを誰よりも理解してる。人として本当に大切なことを心得ているとても素敵な両親である。

娘のヴィアは、弟のオギーには手がかかるから自分のことで家族に迷惑をかけまいと、悩みや葛藤があっても相談することはあまりない。一番の理解者であった祖母が他界してしまってからは、一層孤独になったようだ。

印象的だった場面は、愛犬のデイジーがイザベルに噛みついたシーン。家族みんなの心のよりどころだったデイジーだが、体調の悪化に誰も気が付くことができずデイジーは息をひきとってしまう。みんな自分のことに必死で、周りが見えなくなっていることが描かれている場面である。

学校の友達や先生

オギーと親友になったジャックも、最初は他のクラスメイトたちと同じようにオギーに好奇の目を向けていたが、次第にオギーの魅力に惹かれていく。しかし小学5年生の子どもである彼にとって、オギーと仲良くしたいという自分の感情を他のクラスメイトたちに素直に気持ちを伝えるのは難しいことだ。その場の流れでジャックは思ってもいないことを言ってしまい一度は仲たがいしてしまう2人だが、仲直りした後は一層絆が深まっている。オギーはジャックの立場や気持ちを理解していたのだろう。

学校の先生たちはオギーの見た目で判断したり特別扱いしたりすることはなく、他の生徒たちと同じように接していく。理科の授業でズバズバと正しい答えを回答するオギーの頭の良さには先生も驚いたようだ。理科研究大会に向けて一生懸命準備をする姿や周りに何を言われても強い気持ちを持って生きる彼に、大人である先生たちも大きな影響を受けている。
トゥシュマン先生の「オギーは見た目を変えられない。私たちの見る目を変えなくてはいけない」というセリフが作品の核心をついている。

さいごに一言感想

涙なしでは観ることのできない感動のおすすめヒューマンドラマ『ワンダー君は太陽』を紹介してきた。各サイトのレビューが軒並み高い評価であることからも、本作で心動かされた人の多さがわかる。
人は見た目じゃないとわかっていても、現実にその状況になったときには動揺してしまうことがある。人にはそれぞれ輝いている部分があって、その点を理解しあえれば世の中平和だ。
障害を持つか、病気かどうか、見た目も含めて人間は完璧でない生物である。お互いに補い合って、認め合って自分に自信をもって人生を生きていきたい。

映画『ワンダー 君は太陽』作品情報

『ワンダー君は太陽』

原作:R・J・パラシオ「Wonder」
原題:Wonder
監督:スティーブン・チョボウスキー
脚本:スティーブン・チョボウスキー 、スティーブ・コンラッド、ジャック・ソーン
出演:ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、イザベラ・ビドビッチ、ノア・ジュプ、マンディ・パティンキン、ダビード・ディグス ほか
製作国:アメリカ
製作年:2017年
公開年:2018年
上映時間:113分
配給:キノフィルムズ

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