『スーパーマン』『グーニーズ』『リーサル・ウェポン』などのエンタメ超大作を数多く手がけた映画監督リチャード・ドナーが、2021年7月5日に91歳で亡くなりました。今回は彼の遺作、『16ブロック』を紹介します。
映画『16ブロック』のあらすじと見どころ
『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスがまたまたくたびれた刑事役に
『16ブロック』の舞台はニューヨーク。
映画が始まると、夜勤明けでくたびれ果てた刑事・ジャックがさっそくやってきます。
ブルース・ウィリスが演じる主人公・ジャックは、仕事への意欲がまるでなく、殺人現場の棚にあった酒を勝手に飲むなど、勤務態度も最悪の刑事。
ブルース・ウィリスは代表作となった『ダイ・ハード』シリーズでも、愚痴をこぼし続けながらもテロリストと懸命に闘う刑事を演じていました。
こういう役を演じさせたら流石ですね。
今日の仕事はおしまいとばかりに帰宅しようとしたところを上司に呼び止められ、残業として囚人の護送を命じられます。
「楽な仕事だ。2時間ほどでザコを16ブロック送るだけだ。」
留置場から裁判所まで、たった16ブロック(約1.6km)の仕事。
しぶしぶ残業を引き受けた彼の運命は、これによって大きく変わってしまうのです。
仕組まれていた証人殺し…一瞬にして全警察が敵に!
人気ラッパーでもあるモス・デフが演じるのは、裁判所で証言をするために護送される囚人のエディ。
おしゃべり好きで陽気な彼は、とても罪を犯すような人間には見えないのですが、すべてはすでに仕組まれていました。
彼は警察の暴力行為を目撃し、それを証言しようとしていたため、一部の悪徳警官たちから命を狙われていたのです。
口封じのため彼を殺そうとする人間たちが、ジャックとエディを取り囲みます。
しかも、応援を求めてジャックが呼び出した仲間たちも、全員ズブズブに汚職に手を染めていた悪党だったことが判明。
腐敗は警察の全組織に及んでいました。
護送中の死亡事故に見せかける偽装工作を始めた仲間を見て耐えられなくなったジャックは、エディを連れて逃げ出します。
たった16ブロックの道のりは、1つ間違えれば死が待っている危険地帯になってしまいました。
ジャックは全警察を敵に回したこの勝ち目なき状況で、いったいどうやって闘うのでしょうか?
まるで日本の刑事ドラマのような人情味
映画を観ていくうち、エディは天涯孤独の身でありながら、ケーキ屋になる夢を持つ若者であることが徐々にわかります。
一方で仲間たちの汚職を見過ごし、自身の身辺もすっかり汚れ切っていたジャック。
この2人が行動を共にすることで、ある種の友情が芽生えていきます。
激しいアクションの合間に見られるこのあたりの細やかな演出は、『リーサル・ウェポン』などのいわゆる「バディ・ムービー(相棒もの)」を得意としてきたリチャード・ドナー監督の真骨頂。
まるで日本の刑事ドラマを思わせるこのあたたかな人情味は、昔ながらのハリウッド映画を思わせる、まさにベテラン監督ならではの職人技と言えるものです。
「ダイ・ハード」ファンからもお墨付き?あの人気カードゲーム『遊☆戯☆王』も登場
事件に巻き込まれた2人の男がニューヨークの街を逃げ回る映画といえば、同じブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード3』が思い出されます。
その後の「ダイ・ハード」シリーズは、『ダイ・ハード4.0』『ダイ・ハード/ラスト・デイ』と続きますが、その出来に満足しなかった映画ファンからは、本作をして「これが本当の『ダイ・ハード4』だ!」と強く推す声もあります。
ところで、本作の製作当時、『ポケットモンスター』に続けとばかりに、日本のカードゲーム『遊☆戯☆王』が全米に進出していました。
日本ではアニメも製作され、海外でも人気を博すことになるこの『遊☆戯☆王』が、なんと本編中に登場しているのです。
どこでどんなふうに出てくるのか、ストーリーには直接関係のない部分ですが、こちらもちょっと気になるところですね。