2023WBC優勝 野球日本代表「侍ジャパン」映画 メンバー紹介

「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で優勝した日本代表「侍ジャパン」に密着したドキュメンタリー映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』が6月2日から3週間限定公開。選手情報をなど紹介。

WBC優勝 野球日本代表「侍ジャパン」世界一への軌跡

チーム専属カメラが完全密着したドキュメンタリー

野球“世界一”を決める「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が2023 年3月8日~3月21日に開催され、日本代表「侍ジャパン」が見事3大会ぶり3度目の優勝に輝き幕を閉じました。

3月21日、アメリカ・フロリダにある決勝戦の舞台となるローンデポ・パークでは、アメリカとの大一番を前に、侍ジャパンのロッカールームでは選手・スタッフで円陣が組まれ、大谷 翔平選手がメンバーに向けて「憧れるのを止めましょう」と切り出しました。

野球の最高峰リーグ「メジャーリーグベースボール(MLB)」の選手で構成されるアメリカ代表との対戦を前に、MLBで活躍を続ける大谷 翔平選手が緊張や高まる期待で一杯の侍ジャパンメンバーの気持ちを引き締めました。

その決勝戦、優勝が決まる瞬間のマウンド上には大谷 翔平選手が仁王立ちし、所属チーム「ロサンゼルス・エンジェルス」の同僚マイク・トラウト選手を得意のスライダーで空振り三振に斬って取り、帽子やグラブを放り投げ喜びを爆発させたシーンが印象的でした。

今大会、侍ジャパンの指揮を執ったのは栗山 英樹監督です。栗山 英樹監督は侍ジャパンに召集したいメンバーに自ら電話をし、直筆の手紙をしたため、熱いメッセージを送りました。それを受け、日米のプロ野球選手が集結して見事に覇権奪回を果たしました。今回のWBCでの侍ジャパンの熱闘はとても印象深いものでした。投手・打者の「二刀流」大谷 翔平選手や、日本人の母を持つラーズ・ヌートバー選手などが活躍し、これまでの大会以上に注目を集め、社会現象にもなりました。その侍ジャパンの代表選手選考会議から大会を終えるまでの様子をチーム専属カメラが完全密着した映像がドキュメンタリー映画『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』が2023年6月2日より3週間限定で公開されます。

目標は「世界一」。勝利を信じ、全員でつかんだ世界一。世界に「日本野球は素晴らしい」ということを伝えた侍ジャパンの“真実”が公開されます。

本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』の公開について、栗山 英樹監督は「最高なチームの大会記録の映画化が決まり、大変嬉しく思います。ファンの皆様と共に勝ち取った「世界一」の舞台裏を是非、ご覧いただき、この映画が次の世代に伝わる日本球界の歴史の一ページとなることを心より願っています」とコメントしています。

侍ジャパンに密着したドキュメンタリー映画は本作が第3弾となります。第1弾は、前回大会となる「第4回WBC」に参加した侍ジャパンの舞台裏に密着した『あの日、侍がいたグラウンド』で2017 年7 月1 日から1週間限定で全国主要都市の限られた映画館で公開され話題に。

第2弾は2019 年 11月に開催された「第2回WBSCプレミア12」で同大会初の優勝を果たした侍ジャパンに密着した約800日間の記録『侍の名のもとに ~野球日本代表 侍ジャパンの800日~』が2020 年2月7日から2週間限定で公開され注目されました。

第3弾となる本作『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』は前2作よりも限定期間や劇場を広げての公開となります。主題歌を担当するのは人気シンガーソングライターあいみょんです。野球ファンを公言し、野球の“聖地”甲子園球場でライブを行うなど、野球とは親和性があるあいみょんが歌うのは「さよならの今日に」です。同曲はニュース番組のエンディングテーマ曲として書き下ろした一曲ですが、日常に起こった様々なニュースを振り返る瞬間にマッチした名曲です。

今大会のWBCでの侍ジャパンの熱闘には、様々なドラマ、名シーンがありました。その舞台裏で起こっていた真実が本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』で、どのように公開されるのか楽しみですね。

侍ジャパン30名選出まで苦悩する栗山 英樹監督

メンバーに直電・直筆の手紙で熱い思いを伝える

2023 年1月26日。野球日本代表「侍ジャパン」の栗山 英樹監督が会見を開き、「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」に出場予定の30人のメンバーを発表しました。

栗山 英樹監督は召集に際し、自ら選手に電話をして侍ジャパンへの参加を要請しました。さらには、各選手宛に直筆で手紙をしたためました。内容は各選手異なるもののようでしたが、「頂点を目指す」「次世代を担う子どもたちのために」などワードを共通でした。

30名のメンバーを決定するに際し、栗山 英樹監督は悩み抜きました。意中にあった選手の中にはコンディション不良で断られたこともあったようです。また、投手の選考においては「大前提として日本の特徴である投手の力を借りて勝つということを考えるなら、最後にそこで足りないということだけは許されないと思った」として、15人の投手を選考したことを明かしました。

栗山 英樹監督とは、どんな人物なのでしょうか。

今大会開催時61歳で、大学の特任教授にも就いている異色の監督です。1983 年にドラフト外でヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)に入団しました。国立大学出身で教員免許も取得していたインテリ選手で、テストを受けプロ野球の世界に飛び込んできた苦労人です。1990 年まで現役としてプレーし、持病などを理由に現役を引退。その後は北海道日本ハムファイターズで監督を務め、大谷 翔平選手の育成などに携わるなど、10年間でリーグ優勝2回、日本一1回の実績を残し、ファイターズの監督を退任後に野球日本代表「侍ジャパン」の監督に就任しました。

「侍ジャパン」監督就任後は、国内外の球場に自ら足を運び、いろいろな選手のプレーを視察しました。MLBでの大谷 翔平選手や鈴木 誠也選手、ダルビッシュ 有選手など日本人メジャーリーガーの元へも訪問。周りのスタッフからの情報や意見などもあったでしょうが、自らの足を使い、自身の目でみて、今回のメンバー召集に辿りつきました。

栗山 英樹監督と言えば、北海道日本ハムファイターズ時代から選手を責めず、「悪いのは俺」と自身で責任を被り、その人柄や選手想いのコミュニケーションが有名でした。そんな栗山 英樹監督については、WBC閉幕後、様々な特番などで選手、スタッフとの絆などエピソードが明かされていますが、本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』でも、未公開のシーンが発表されることが期待されます。

“陰のMVP”はダルビッシュ 有選手

キャンプから“存在感”を示した憧れの投手

「第5回WBC」開催を前に、侍ジャパンは南国・宮崎で強化合宿(2023 年 2 月 17~27 日)を実施しました。日本野球機構(NPB)に所属する候補選手は全員参加しましたが、MLBに所属する選手は、MLBがシーズン前のキャンプ中ということもあり、参加ができませんでした。その中で、1人だけ初日から強化合宿に参加したのがダルビッシュ 有選手です。

今年でMLB在籍12年目となるダルビッシュ 有投手は36歳のベテラン投手です。その技術はもちろん、日ごろの体調管理やトレーニング方法など一目を置かれています。その結果、今年から新たに6年間の契約を所属チームのサンディエゴ・パドレスと交わしました。

ベテランの域に入った選手に長期大型契約がオファーされ締結できるのは異例のことだそうです。そんな信頼があるダルビッシュ有投手はだから、強化合宿への参加を所属チームから容認されたのでしょう。

MLBで活躍し続けるダルビッシュ有選手の存在は、多くの侍ジャパン選手に大きな影響が及びました。オーラ溢れるダルビッシュ有投手ですが、気さくに若手投手に声掛けをし、キャッチボールの相手をしたり、投球術を惜しみなく伝授したり、投手陣たちとの距離を縮めました。

年齢とか一切関係なく、世界一になるために一番良いチームを作りたい

ダルビッシュ 有選手はチームの雰囲気つくりを大事にし、投手陣の結束を強めるために球場内外でコミュニケーションを図っていたことが、各選手のSNSなどで公表され、メディアやファンの間で大きな話題になりました。

とりわけ「宇田川会」は代表的な例です。「宇田川会」とは、オリックス・バファローズ所属の宇田川 優希選手を囲み、親睦を図った食事会のことです。24歳の宇田川 優希選手は2020 年の育成ドラフトでプロ入りし、昨年(2022 年)に支配下契約を勝ち取り、日本シリーズなどで活躍した160キロの速球と、落差の大きいフォークボールが持ち味の投手です。その活躍や能力が栗山 英樹監督の目に留まり、侍ジャパン入りを果たしました。

プロ野球選手の誰もが憧れる侍ジャパンのメンバーになれた宇田川 優希選手ですが、元来人見知りで、多くの実績があるプロ野球選手揃いの中で「気疲れも出ています」と自身のSNSでコメントをしました。宇田川 優希選手を心配する声がファンから上がり、ダルビッシュ 有選手が人肌脱いだのです。宇田川 優希望選手をはじめ、投手陣との食事会を設定し、親睦を深めました。ダルビッシュ 有選手は「宇田川会」開催の真意について、「元々は投手会という形」だとした上で、育成から侍ジャパンのメンバーに選出されるなど、急な環境の変化を心配し、「あまりにも一人の人間が背負うには大きすぎる」と宇田川 優希選手を気遣いました。

「宇田川会」の開催により、宇田川 優希選手の緊張は徐々に解れ、環境にも馴染んでいった様子が各選手のSNSなどで公開され、関係者やファンをホッとさせました。「宇田川会」は宇田川 優希選手だけでなく、他の投手陣にも好影響を及ぼし、世界に誇れる「侍ジャパンの投手陣」の絆はより強固になっていきました。

ダルビッシュ 有選手の気遣いは、「宇田川会」だけに留まらず、変化球の投げ方や投球術について、若手投手から質問攻めに遭い、その都度、丁寧に教授していたそうです。その結果、本来はアメリカでのキャンプ中だったにも関わらず、強化合宿に参加し、自身のことよりも後輩投手らの力になり、調整が思うようにできていませんでした。そのことは栗山 英樹監督以下、スタッフも認識しており、感謝しつつ申し訳ない様子でした。

ダルビッシュ 有選手の成績にはあらわれない貢献度に対し、スタッフやファンの間では「“陰のMVP”はダルビッシュ」という声も多く上がっていました。

調整不足がたたり、本来のダルビッシュ 有選手の投球ではない姿を試合で目にしてしまいましたが、ダルビッシュ 有選手は言い訳一つせずに、世界一奪還まで突き進みました。そんなダルビッシュ 有選手はアメリカ・フロリダに場所を移して、行われたメキシコとの準決勝を前、ベンチ前での円陣で声出しを担当し、「控え目に言ってチームワークも実力も今大会ナンバーワンだと思います」とチームの完成度を評価しています。ダルビッシュ 有選手が今大会で侍ジャパンにもたらした貢献は他にもあったことでしょう。そんなシーンが本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』でも見られることができたら嬉しいですね。

MLBも認める球界随一の守備職人・源田 壮亮の覚悟

骨折をおして出場「絶対に世界一になりたい」

本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』の予告動画に苦悩の表情を浮かべている選手が登場しています。埼玉西武ライオンズ所属の源田 壮亮選手です。2016 年にドラフト3位でプロ入りした源田 壮亮選手は球界随一と言われる守備の職人で、2018 年から5年連続で守備の名手に贈られる「ゴールデングラブ賞」を遊撃手として受賞しています。その高い守備力は日本代表「侍ジャパン」でも発揮されていました。1年目オフの2017 年11 月に開催された韓国・台湾と争われた「アジア プロ野球チャンピオンシップ」に日本代表「侍ジャパン」のメンバーに選出され全3試合スタメン遊撃手として優勝に貢献しました。

その後も、2019 年「プレミア12」、2021 年「東京五輪」でも侍ジャパンのメンバーとして選出をされました。しかし、源田 壮亮選手はレギュラー遊撃手ではありませんでした。レギュラー遊撃手として、殆どの試合でスタメンに名を連ねたのは読売ジャイアンツのスター選手である坂本 勇人選手です。坂本 勇人選手は史上2番目の若さで通算安打2000本を達成するなど実績もあり、人気の高い選手です。2019 年「プレミア12」でも2021 年「東京五輪」でも期待通りの活躍を見せ、日本を優勝に導きました。WBCについても2013 年「第3回大会」、2017 年「第4回大会」と連続してレギュラー遊撃手として試合に出続けました。

しかし、今回の「第5回WBC」については選出のオファーがありながら、坂本 勇人選手はコンディション不良で辞退をしたという報道がありました。そのため、源田 壮亮選手への期待はさらに高まり、本人も強い覚悟で臨んだ大会だったことでしょう。

「守備職人」の源田 壮亮選手については、今大会前、MLB公式サイトで「侍ジャパンの心臓」だと表現し、源田 壮亮選手の守備力などを高評価していました。

前評判も高かった源田 壮亮選手ですが、1次ラウンド2戦目の韓国戦で思わぬアクシデントが起こりました。3回裏に四球で出塁し、二塁に進塁した後、けん制を受け、帰塁した際に右手小指を負傷、その後、骨折という診断結果が下されました。右手小指はあらぬ方向に曲がり、通常では離脱必至の状態に陥ります。

栗山 英樹監督は源田 壮亮選手がチームに必要不可欠な存在であると認めた上で、源田 壮亮選手の今後の選手生命などを慮り、決断を下そうとしていました。しかし、源田 壮亮選手は「絶対に栗山 英樹監督と世界一になりたい」と強い覚悟を涙ながらに訴えたといいます。そのことは大会閉幕後に放送されたテレビ番組などで明かされていますが、本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』でも、より詳しく公開されるといいですね。

レギュラー遊撃手として期待され、覚悟を持って臨んだ今大会での源田 壮亮選手の存在は本当に大きかったです。怪我をおして強行出場した源田 壮亮選手のプレーはいつも通りに安定をしていました。源田 壮亮選手が栗山 英樹監督などに強い覚悟を示したシーンなどが見られると、熱いものがこみ上げてきそうですね。

侍ジャパンの人気者は初の日系人選手

社会的ブームにもなった「ペッパーミル」ポーズ

今大会で注目を集めたのは大谷 翔平選手やダルビッシュ 有選手だけではありません。ある意味、「一番愛された選手」と呼べるのがラーズ・ヌートバー選手です。ラーズ・ヌートバー選手はアメリカ人の父と、日本人の母を両親にもつ25歳のMLB期待の若手外野手です。セントルイス・カーディナルスに所属するラーズ・ヌートバー選手は、初の「日系人」選手として侍ジャパンのメンバーに選出されました。

侍ジャパンのメンバーに選出された際、初めて「ヌートバー」という名前を聞いたファンも多かったと思います。その後、東北楽天ゴールデンイーグルスの田中 将大選手や、元北海道日本ハムファイターズの斎藤 佑樹選手らの高校時代に交流があったことなどが話題になり、注目を集め始めました。

ミドルネームが「テイラー・タツジ」といい、母方の祖父・榎田 達治さんがその名の由来であることが明かされました。そこから「たっちゃん」「達治」とメンバーに呼ばれ、ファンにも浸透しました。人懐こい笑顔を見せるラーズ・ヌートバー選手が侍ジャパンに溶け込むのに時間はかかりませんでした。

また、プレーでも全7試合すべてで1番センターとして先発出場を果たし、活躍を見せました。その中で、多くの人にインパクトを与え、社会的ブームになったのが「ペッパーミル」ポーズです。「ペッパーミル」ポーズとはラーズ・ヌートバー選手が所属するカーディナルスで、ヒットなどを打った際に塁上で見せていたポーズです。胡椒を挽くようなポーズは「身を粉にして働く」「一生懸命働く」などの献身的にプレーする意味を示しているそうです。この「ペッパーミル」ポーズは日本国内でブームとなり、これまであまり売れることもなかった「ペッパーミル(胡椒挽き)」が一部で売れ出す現象も起こりました。

さらに、ラーズ・ヌートバー選手の家族もメディアで注目され、たびたびニュースや番組に登場していました。とりわけ、母親の久美子さんは、明るい人柄でラーズ・ヌートバー選手本人同様に話題になりました。母親思いのラーズ・ヌートバー選手の姿が日米の番組で映し出され、多くの人の感動を呼びました。

一躍人気者になったラーズ・ヌートバー選手ですが、侍ジャパンに並々ならぬ決意をもって臨んでいたようです。子どもの頃から「侍ジャパンの一員になるのが夢」と語っていました。張り切りすぎたのか、1次ラウンド1戦目の中国戦で足をつってしまいました。状態を気に掛けた栗山 英樹監督はラーズ・ヌートバー選手を次戦・韓国戦のスタメンから外すことを検討します。そのことを告げられたラーズ・ヌートバー選手は「絶対に何があっても出る」と強い決意を見せたといいます。栗山 英樹監督はラーズ・ヌートバー選手から「何のために日本に来たんだ」という鬼気迫る心中が垣間見えたといいます。

人気者でプレーやパフォーマンス、笑顔で侍ジャパンを盛り上げた「ムードメーカー」である“たっちゃん”の舞台裏でのシーンも、本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』では見られるのではないでしょうか。

今大会の“主役”はやはり二刀流の大谷 翔平選手

決勝の舞台ではロッカールームからドラマが始まっていた

今大会「第5回WBC」の最優秀選手(MVP)に選ばれたのは大谷 翔平選手です。今大会が始まる前からアメリカ本土でテレビ局などのプロモーション映像に大谷 翔平選手が数多くでていました。「投手」「野手」の“二刀流”選手として投打両方で好成績を残している大谷 翔平選手はMLBにおいても重要かつスター選手の一人となっています。

大谷 翔平選手は今大会が初のWBC参加になります。前回大会(2017 年)は参加を期待されましたが、コンディション不良などから参加を見送りました。大谷 翔平選手は今大会以前に日本代表「侍ジャパン」として、日米野球などに参加していましたが、大会としては2015 年「プレミア12」のみです。「プレミア12」では投手に専念し、韓国戦に2度先発して160キロの速球や決め球のスプリットを駆使し、いずれの試合でも2桁奪三振を記録するなど活躍しました。相手の韓国代表は「手も足も出ない」くらいに抑え込まれていました。その時のインパクトは凄まじく、「大谷は凄い」という印象を日本以外にも与えました。それから侍ジャパンとして、大谷 翔平選手を見ることはできずにいましたが、今大会で多くのファンが望んだ「侍ジャパンの大谷 翔平」の姿が見られました。

初のWBC出場となった今大会では全7試合すべてに出場し、“二刀流”の投手としても3試合に登板しました。投打に期待通りの成績を残してくれましたが、成績以上にグランドで“楽しそうにプレーする野球小僧”の姿を見せたことが印象深いです。

MLBでプレーしている大谷 翔平選手は所属するロサンゼルス・エンジェルスが優勝争いから早くに脱落する体たらくにあり、「勝ちたい」という強い想いを口にしていました。エンジェルスでも楽しそうにプレーする姿は見せてはいましたが、今大会では“喜びを爆発させる”姿や、“仲間を鼓舞する”姿など、これまであまり見せなかった姿も見せています。

今大会での大谷 翔平選手の名場面・名シーンはいろいろありますが、やはり決勝でのアメリカ戦が一番印象に残っている人が多いと思います。

まずは試合前のロッカールームでの円陣での声出し。これまでの声出しはラーズ・ヌートバー選手や牧 秀悟選手などユーモアのある声出しが多かったです。しかし、大谷 翔平選手のそれは一味違いました。決戦を前に大谷 翔平選手は「憧れるのを止めましょう」と切り出しました。野球選手の誰もが知っている選手が揃ったアメリカ代表に、“臆すること”を禁じ、世界一に向けての覚悟を促しました。大谷 翔平選手の声出しに、侍ジャパンの選手・スタッフの気持ちが一つになり、大舞台への気持ちが高まったと思います。

そして、試合前のセレモニーです。日米両チームがグラウンドに登場しました。先頭を歩くのは大谷 翔平選手と、エンジェルスの同僚マイク・トラウト選手です。二人は自国の国旗を担いで、仲間を従えて行進しました。まるで「西部劇の決闘のようだ」と評する声も見受けられました。

試合が始まり、侍ジャパンの投手陣が強力アメリカ打線に先制点こそ許しましたが、先発の今永 昇太選手からダルビッシュ 有選手まで6人の投手で2失点に抑え、打線は村上 宗隆選手の同点弾や、岡本 和真選手の貴重な追加点となる大きなホームランなどで9回まで日本が3-2でリードしました。ここからが今大会のクライマックスです。

まるで映画のワンシーンのようにレフト後方にあるブルペンからマウンドへ歩みを進めて行く大谷 翔平選手。迎えるアメリカの打者陣は強打者ばかりです。先頭打者を歩かせた大谷 翔平投手ですが、次打者を併殺打に打ち取り、いよいよ最大の見せ場です。

マイク・トラウト選手を打席に迎え、一流投手と一流打者との大勝負。力と力のぶつかりは3ボール-2ストライクとフルカウントに達しました。どういう決着を迎えるのか、固唾を飲んでテレビの画面に噛り付いていた人が殆どだったでしょう。そして、運命の瞬間…大谷  翔平投手が投じたのは得意の曲がりが大きいスライダー“スイーパー”でした。その一球はトラウト選手のバットに当てさせず、中村 悠平選手のミットに収まりました。その瞬間、球場は歓喜の声で溢れました。大谷 翔平選手は興奮を抑えきれず、帽子を投げ捨て、グラブも投げ捨てました。普段の大谷 翔平選手からは見られない姿に、驚きを覚えた人も多いことでしょう。

念願の世界一に予想外の姿を披露した大谷 翔平選手ですが、優勝後のアメリカメディアからの取材を受けた際、「僕らはアメリカの野球をリスペクトしていますし、彼らの野球を見本にしてこれまで頑張ってきたと思うので、今日はたまたま勝ちましたけど、これからもっともっと高いところを目指して、もっともっと頑張って行きたいなと思います」とコメントし、いつもながらの謙虚で控えめな姿に戻っていました。

本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』のタイトルの由来は大谷 翔平選手の言葉からでしょう。その大谷 翔平選手がWBC期間中に見せていた様々な裏側などが本作では公開されていることは間違いないと思います。恩師の一人である栗山 英樹監督とのエピソードや、大谷 翔平選手の“素顔”も垣間見られるといいですね。

第5回WBCは野球日本代表「侍ジャパン」が7戦全勝で優勝

侍ジャパンの戦績一覧

《1次ラウンド》開催地:東京ドーム

3月9日  中国戦 8-1 勝利投手:大谷 翔平 本塁打:牧 秀悟

3月10日 韓国戦 13-4 勝利投手:ダルビッシュ 有 本塁打:近藤 健介

3月11日 チェコ戦 10-2 勝利投手:佐々木 朗希 セーブ:宮城 大弥 本塁打:牧 秀悟

3月12日 オーストラリア戦 7-1 勝利投手:山本 由伸 本塁打:大谷 翔平

《準々決勝ラウンド》開催地:東京ドーム

3月16日 イタリア戦 9-3 勝利投手:大谷 翔平 本塁打:岡本 和真、吉田 正尚

《決勝ラウンド》開催地:ローンデポ・パーク(アメリカ・フロリダ)

3月20日 準決勝 メキシコ戦 6x-5 勝利投手:大勢 本塁打:吉田 正尚

3月21日 決勝 アメリカ戦 3-2 勝利投手:今永 昇太 セーブ:大谷 翔平 本塁打:村上 宗隆、岡本 和真

第5回WBC「侍ジャパン」メンバー&成績一覧

注目の大谷 翔平選手は2勝&打率.435 8打点 1本塁打

投手 

11ダルビッシュ 有(サンディエゴ・パドレス)3試合1勝2奪三振 防御率6.00

12戸郷 翔征(読売ジャイアンツ)2試合9奪三振 防御率1.80

13松井 裕樹(東北楽天ゴールデンイーグルス)1試合1奪三振 防御率0.00

14佐々木 朗希(千葉ロッテマリーンズ)2試合1勝11奪三振 防御率3.52

15大勢(読売ジャイアンツ)4試合1勝3奪三振 防御率0.00

16大谷 翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)3試合2勝11奪三振 防御率1.86

17伊藤 大海(北海道日本ハムファイターズ)3試合3奪三振 防御率0.00

18山本 由伸(オリックス・バファローズ)2試合1勝12奪三振 防御率2.45

20栗林 良吏(広島東洋カープ)登板なし*負傷により1次ラウンド終了時に離脱

21今永 昇太(横浜DeNAベイスターズ)3試合1勝7奪三振 防御率3.00

22湯浅 京己(阪神タイガース)3試合4奪三振 防御率0.00

26宇田川 優希(オリックス・バファローズ)2試合3奪三振 防御率0.00

28高橋 宏斗(中日ドラゴンズ)3試合5奪三振 防御率3.00

29宮城 大弥(オリックス・バファローズ)1試合7奪三振 防御率1.80

47高橋 奎二(東京ヤクルトスワローズ)1試合2奪三振 防御率0.00

63山﨑 颯一郎(オリックス・バファローズ)登板なし*栗林離脱により準々決勝ラウンドより追加召集

捕手 

10甲斐 拓也(福岡ソフトバンクホークス)4試合 打率.091(11-1)2打点

24大城 卓三(読売ジャイアンツ)3試合 打率.000(2-0)

27中村 悠平(東京ヤクルトスワローズ)5試合 打率.429(7-3)1打点

内野手

1山田 哲人(東京ヤクルトスワローズ)6試合 打率.267(15-4)2打点 3盗塁

2源田 壮亮(埼玉西武ライオンズ)5試合 打率.250(12-3)2打点 2盗塁

牧 秀悟(横浜DeNAベイスターズ)6試合 打率.200(15-3)2打点 2本塁打

5牧原 大成(福岡ソフトバンクホークス)5試合 打率.500(2-1)1打点 *鈴木辞退により追加召集

7中野 拓夢(阪神タイガース)5試合 打率.300(10-3)2盗塁 

25岡本 和真(読売ジャイアンツ)7試合 打率.333(18-6)7打点 2本塁打

33山川 穂高(埼玉西武ライオンズ)3試合 打率.200(5-1)2打点

55村上 宗隆(東京ヤクルトスワローズ)7試合 打率.231(26-6)6打点 1本塁打

外野手 

8近藤 健介(福岡ソフトバンクホークス)7試合 打率.346(26-9)5打点 1本塁打

9周東 佑京(福岡ソフトバンクホークス)5試合 打率.000(1-0)

16大谷 翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)7試合 打率.435(23-10)8打点1本塁打 1盗塁

23ラーズ・ヌートバー(セントルイス・カーディナルス)7試合 打率.269(26-7)4打点 2盗塁

34吉田 正尚(ボストン・レッドソックス)7試合 打率.409(22-9)13打点 1本塁打  

51鈴木 誠也(シカゴ・カブス)※負傷で1次ラウンド前に辞退

主題歌は人気ソングライターのあいみょんが担当

ニュース番組のエンディングテーマにも起用された名曲

本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』の主題歌「さよならの今日に」を歌うのは人気シンガーソングライターのあいみょんです。主題歌を歌うことになったあいみょんは

「とにかく驚きで目が飛び出そうでした。嬉しくてたまりません。言葉に上手くまとめられない気持ちで身体が揺れて、WBCで生まれた数々の名場面がぐるぐると頭の中を駆け回りました。」と喜びを露わにしています。

野球好きのあいみょんですが、WBC優勝に輝いた侍ジャパンについて「あの瞬間、涙が出たな。あの瞬間、大きな声で万歳したな。改めて、侍ジャパンの皆さん、チームスタッフの皆さん、世界一おめでとうございます。かっこよかったです」と祝福した。

「さよならの今日に」について、あいみょんは「日々を切り捨て切り取られ生きていく中で、もう戻れない明日がある事は解っているけれど、それでも求めてしまうものがあったり、あの日あの時あの場所にいたあの人は、いったい明日をどう生きたんだろうか。あの人なら、明日をどう乗り越えるのか。そんな自身の疑問や過去への執着、後悔が自然と曲に言葉になって楽曲になりました」と説明をしています。

「さよならの今日に」は2020 年に配信限定シングル1作目としてリリースされた曲で、ギターを軸にアレンジされたマイナー超のフォーク/ブルース・ロックです。日本テレビ系ニュース番組『news zero』の2020 年のエンディングテーマソングとして起用され、日々のニュースを締めくくる一曲として、一日を締めくくっていました。

2026 年開催予定 次回大会「第6回WBC」への期待

参加へ意欲見せる大谷 翔平&ラーズ・ヌートバー両選手

今大会「第5回WBC」はこれまでの大会よりも各国で注目度が上がっています。

日本では全7試合すべてで視聴率40%超え(関東地区、ビデオリサーチ調べ)をしました。

3月9日中国戦41.9%/3月10日韓国戦44.4%/3月11日チェコ戦43.1%/3月12日オーストラリア戦43.2%/3月17日イタリア戦48.0%/3月21日メキシコ戦42.5%/3月21日アメリカ戦42.4%

これまでWBCへの関心が薄いとされたアメリカでも、前回大会(2017年)よりも試合の視聴者数がこれまでの過去最多記録を69%上回ったといいます。台湾やメキシコ、カナダや韓国などでも前回大会を上回る視聴者数を記録していたそうです。

これだけ日米を中心に各国で注目を集めたWBCですが、次回大会は2026 年に開催予定とされています。早くも侍ジャパンの連覇を期待する声も出ており、大谷 翔平選手は次回大会への参加について、「出たいですね。僕自身が一定のレベルにいるのが条件」と意欲を見せ、「最善の努力をしたい」と熱く語っています。その思いはヌートバー選手へも伝えられています。自身が付けていた腕時計をヌートバー選手にプレゼントし、「もし26年に(日本代表に)戻ってこなかったり、他のチームで出場したりしたら返して」と、“約束”を交わしたといいます。ヌートバー選手も次回大会も「侍ジャパン」の一員として出場したい希望を口にしています。

日本国内では、早くも次回大会の侍ジャパンメンバーを想像する人たちもいて、ネットなどでは今大会の侍ジャパンメンバーとほぼ変わらない予想をしたり、それぞれが期待する新鋭メンバーを選出したり、楽しそうな様子が所々に見られています。

2年後の2026 年、日米の野球界はどのような状況になっているのかわかりません。ただ、言えることは「侍ジャパン」の連覇を多くのファンが願っていること。その「侍ジャパン」のメンバーの中心には大谷 翔平選手がいるであろうことが想像に難しくないです。もちろん、今オフに過去例をみない大型契約によりエンジェルスからの移籍が噂されている大谷 翔平選手です。所属チームによっては出場を承諾しない場合もあるでしょうし、大谷 翔平選手が言うように怪我などで「一定のレベル」にない可能性も0ではないでしょう。その場合、大谷 翔平選手の真摯な性格から想像するに、「侍ジャパン」のメンバーには入らないこともあるでしょう。ただ、大谷 翔平選手のこれまでを見ると、その「一定のレベル」にない大谷 翔平選手は想像できないです。きっと次回大会でも二刀流でMVP級の活躍を見せてくれるでしょう。

2026 年の次回大会が待ち遠しいですが、その前に本作『憧れを超えた侍たち 世界一の記録』を観て、今大会「第5回WBC」の侍ジャパンの栄光への軌跡を噛みしめましょう。

『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』スタッフたち

ナレーションは『情熱大陸』でおなじみの窪田等

<作品情報>
監督・撮影:三木慎太郎(『あの日、侍がいたグラウンド』(2017 年公開)、『侍の名のもとに ~野球日本代表 侍ジャパンの800日~』(2020 年公開))

ナレーション:窪田等(TBS系『情熱大陸』など多数)

主題歌:あいみょん「さよならの今日に」((unBORDE / ワーナーミュージック・ジャパン、ENS Entertainment Inc.)

制作:J SPORTS/NPBエンタープライズ

配給:アスミック・エース/J SPORTS

上映時間:130分

協力:日本野球機構/World Baseball Classi,Inc.
オリックス・バファローズ/福岡ソフトバンクホークス/埼玉西武ライオンズ/
東北楽天ゴールデンイーグルス/千葉ロッテマリーンズ/北海道日本ハムファイターズ/東京ヤクルトスワローズ/横浜DeNAベイスターズ/阪神タイガース/読売ジャイアンツ/広島東洋カープ/中日ドラゴンズ

公開:2023 年 6 月 2 日(3週間限定)

ジャンル:ドキュメンタリー

出演者:侍ジャパントップチーム(栗山 英樹/白井 一幸/吉村 禎章/清水 雅治/吉井 理人/厚澤 和幸/城石 憲之/村田 善則/ダルビッシュ 有/戸郷 翔征/松井 裕樹/佐々木 朗希/大勢/大谷 翔平/伊藤 大海/山本 由伸/栗林 良吏/今永 昇太/湯浅 京己/宇田川 優希/高橋 宏斗/宮城 大弥/高橋 奎二/甲斐 拓也/大城 卓三/中村 悠平/山田 哲人/源田 壮亮/牧 秀悟/牧原 大成/中野 拓夢/岡本 和真/山川 穂高/村上 宗隆/近藤 健介/周東 佑京/ラーズ・ヌートバー/吉田 正尚/鈴木 誠也ほか)  

あなたにオススメ