9月23日に金曜ロードショーでの放送が予定されている細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』。2021年7月に公開された本作、まだチェックできていない方はこの機会を見逃さずに観てみてほしい。
本作は、2006年の『時をかける少女』から数えて細田監督の6作目にあたる。すでにその存在感を確立している細田監督の作品は、もはやアニメ映画ファンだけでなく、全映画ファン必見である。
『竜とそばかすの姫』とは?
2018年公開の前作『未来のミライ』に次ぐ作品である本作。「宮崎駿に続くアニメ映画監督」とも言われる細田監督の注目の最新作注目はいったいどんな内容なのか……?
【あらすじ】
自然豊かな高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。
母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。
曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加することに。<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。人前では上手く歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。
数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。
やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探し(アンベイル)。
<U>の秩序を乱すものとして、正義を名乗るAsたちは竜を執拗に追いかけ始める。<U>と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが――。
(オフィシャルサイトより)
オフィシャルで公開されているあらすじは上記のようなものだが、実は特筆すべきポイントはほかにもっとある。
そこで、絶対に見るべき3つの理由を紹介する。
『竜とそばかすの姫』を絶対に見るべき3つの理由
理由①主人公の「歌」が圧巻のクオリティ
あらすじにもあるように、本作は主人公による「歌」が大きなカギを握っている。そして、その「歌」が圧倒的な存在感を放っている。
歌っているのは、主人公の声も担当している京都出身のミュージシャン、中村佳穂(なかむらかほ)。
2018年11月にアルバム『AINOU』をリリースし、音楽ファンの間では注目を浴びていた存在だが、一般的にはあまり知られていなかったのではないだろうか。
何も情報を得ないまま観ていたら、「大御所アーティストが歌っているのでは?」と思ってしまうくらい、とてつもなく歌がうまい。
この人選からしても、本作における「歌」に込める細田監督の想いが非常に強いことが伺える。
理由②ネームバリューだけではない実力も兼ね備えた豪華声優陣
主人公はまさかの人選だが、その周りの人物は成田凌、染谷将太、玉城ティナ、役所広司、佐藤健など、人気・実力を兼ね備えた俳優陣が固める。
そして驚くべきは、主人公の親友役で、あの人気ユニット、YOASOBIのボーカル幾田りらが初演技で参加していることだ。なかなかのハマり役なので、ぜひ楽しみながら観てみてほしい。
さらに面白いポイントとしては、主人公の面倒を見ている女声合唱隊5人組の声優に、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世が起用されていることだ。遊び心があるというか、それだけでも気になること必至だ。
理由③現代版の『美女と野獣』とも言える巧みな描写
細田監督作品はどれをとってもそうだが、とにかく映像が綺麗である。それは本作においても不変で、見る者を映像美で圧倒する。
それでいて、本作で強く意識されているのではないかと思うのが、『美女と野獣』の構造だ。
孤高の存在である「竜」と、世界中から注目される歌姫「ベル」の両極端な存在が運命に翻弄されながら関わっていく様はさながらそれで、親しみやすさとわかりやすさが良い。
もちろんストーリー的なところも大きいが、さらにその光と闇の描写を映像で魅せる手法が見事であることは伝えておきたい。
細田監督ならではの家族の描写は必見!
主人公は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らしをしているわけだが、序盤に生前の母との良き思い出のシーンから事故が起きるまでの流れが一気に描かれる。
気づいたら終わっているくらいの短いシーンだが、『おおかみこどもの雨と雪』や『未来のミライ』などで描かれてきたような、細田監督ならではの家族の形の丁寧な描写は、個人的には必見だと思う。
上記ポイントの一つでも気になったところがあれば、まずは観てみることをおすすめする。細田監督・アニメ映画ファンはもちろん、全映画ファンがチェックしておくべき作品だろう。