かつて、妻夫木聡と池脇千鶴の共演で実写映画化もされた芥川賞作家・田辺聖子の小説『ジョゼと虎と魚たち』が、この度アニメーション映画となって12月25日(金)に公開となります。
タムラコータロー監督の手により、アニメーションならではの幻想的で想像力あふれる映像、主人公の恒夫とジョゼがお互いと自分を知りながら前に進んでいくストーリー、恒夫役の中川大志とジョゼ役の清原果耶による等身大の演技など、心を揺さぶる魅力にあふれた“新しいジョゼ”として生まれ変わりました。
今回は、そんな『ジョゼと虎と魚たち』の見どころをネタバレなしでご紹介!
あらすじ
趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。
幼い頃から車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを大学生の恒夫に助けられる。
海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。
そんな恒夫に、ジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅはあるバイトを持ち掛ける。
それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。
しかし、ひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。
そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。
触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫とともに飛び出すことを決めるが…。
アニメーションならではの想像力あふれる映像が印象的
本作の見どころは、何といってもアニメーションならではの表現力。
ジョゼの趣味である絵や本の中に広がる世界が幻想的に映し出されるほか、恒夫がダイビングをするシーンでは海中の美しい光景が描かれたり、物語の進行にあわせて舞台となる大阪の街並みが表情を変えていったりと、想像力あふれる印象的な映像で作品の世界感に引き込んでくれます。
特に、幼い頃から車椅子生活を送ってきたジョゼが憧れている想像の世界を描き出せるのは、アニメーションならでは。
「ジョゼ」というキャラクターを深く理解できるシーンに仕上がっています。
印象的といえばもう一つ、本作は音楽が素晴らしいのもポイント。
アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』での壮大な音楽でアニメファンからも高い評価を受けるEvan Callが本作の音楽を担当しており、時には細やかできらびやかだったり、時には優しく寄り添ったりと、思わず聞き入ってしまう音楽を創り上げています。
また、主題歌と挿入歌では、アニメ『呪術廻戦』のOP曲「廻廻奇譚」で話題沸騰中のEveが参加。
時代を超えても色あせないものは何か?人見知りで不器用なジョゼとの共通項を探しながら楽曲を創り上げたといいます。
中川大志と清原果耶による等身大の演技が心に刺さる
好きなことに一生懸命だがどこか天然で鈍感なところもある 主人公の恒夫を演じるのは、ドラマ『家政婦のミタ』などで知られる俳優の中川大志。
恒夫が少しずつ男らしく成長していく過程や、ジョゼと互いに影響されながら変化していくふたりの関係性を確かな演技力で表現しています。
ジョゼの声は、連続テレビ小説『あさが来た』で一躍注目を浴びた女優の清原果耶が担当。
世間との関わりをあまりもたずに生きてきたジョゼを演じるにあたり、彼女の実年齢(24歳)よりも幼く、小学生のような感覚で演じたとのこと。
また、大阪出身の清原が日常で使っている関西弁をセリフに落とし込むことに挑戦したり、ジョゼが車椅子から降りてほふく前進するシーンでは、息遣いや力み方を研究するためにアフレコブースの中で実際にほふく前進をしてみたりと、ストイックに役作りに挑んでいます。
そんな二人の等身大で瑞々しい演技は、恒夫とジョゼにぴったりとはまる出来。
一つ一つのセリフがすっと心に入ってきて、観る者の感情は大きく揺さぶられること間違いなしです。
お互いと自分を知りながら前に進んでいく二人の行く末は…
最初はぶつかり合いながらも次第にお互いを理解して、夢に向かって手を伸ばしながら支え合う恒夫とジョゼ。
そんな二人の純愛を真っすぐに描いた本作は、青春恋愛映画の金字塔の名にふさわしい感動のアニメーション映画に仕上がっていました。
ぜひ劇場に足を運んで、このロマンに満ちた“新しいジョゼ”に出会ってみてください。
2020年12月25日(金)全国ロードショー
配給:松竹/KADOKAWA
出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎(見取り図)、リリー(見取り図) ほか
監督:タムラコータロー