戸田奈津子のスターこのひとこと:Pick Up Movie『ブラックバード 家族が家族であるうちに』
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ブラックバード 家族が家族であるうちに

■6月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
配給:プレシディオ、彩プロ

【STORY】海辺の家で夫のポールと暮らすリリーは、2人の娘を育て上げた母親。しかし、病気の影響で思うように動けなくなってきた彼女は、ひとつの決断をする。とある週末、リリーの親友と2人の娘の家族や恋人が、海辺の家に集まった。皆で過ごす楽しい週末だったが、それぞれの秘密が浮かび上がる…。

このコーナーでは、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが最新映画のセリフから、「生きた英語」を学ぶヒントをピックアップしていきます。

 コロナ蔓延によってハリウッドの大手スタジオが撮影中止を余儀なくされた昨年の影響からか、最近の公開作もアクション系の大作はごくわずか。小ぶりの作品が多いようです。しかも、前号でご紹介した『ファーザー』を筆頭にほとんどが<認知症><離婚><終活>など暗いテーマばかり。とはいえ、人生を見つめ直し、どんな最期を迎えるか? に思いを馳せる内容が身近に思える人も多いはず。かく言う私もそのひとりです。
 本作は、病状が進む中で、自分の体が自分の意思で動かせなくなる前に“死”を選択したリリーが主人公。物語は、彼女と最期の週末を過ごすために集まった家族の思いを綴ったもの。リリーが決断した選択の是非をジャッジせずに、見る人の判断に任せ「考えさせる映画」をつくろうという作り手の姿勢を評価しましょう。
 最初のフレーズは、夫と15歳の息子がいる生真面目な長女ジェニファーと恋人を連れてきた次女アナの再会シーン。

アンナ:I can make my own bed.

自分のベッドメイキングはするわ。

ジェニファー:Let me help. We can catch up at the same time.

手伝うわよ。ついでに最近のこと、話しましょ。

 <catch up >の本来の意味は「追いつく」。<catch up on>は、仕事の作業や勉強の「遅れを取り戻す」時に使われます。たとえば「I am catching up on homework.(宿題を終わらせようとしているの。)」。会話でよく使われるのは、久しぶりに会った人に「Let’s catch up over coffee.(コーヒーを飲みながら、近況報告しようよ。)」などです。
 また、リリーが季節外れのクリスマスを祝うことを提案するシーンにも便利なフレーズが。

リリー:I’d like to celebrate Christmas just to keep you on your toes.

クリスマスを祝いたいわ。あなたたちの気を引き締めたいから。

 <on one’s toes>は「爪先立ちでいる」。<keep you on your toes.>は「ずっと爪先立ちでいる=気を抜かない、気を引き締める」となります。また<be careful(用心して、気をつけて)>と同じ意味なので、「The Covid alarm is on. Keep on your toes.(コロナ警報が出た。用心して。)」といった使い方もできます。<Be careful.>より、英語に慣れた感じの言い回しなので、こちらも覚えておきましょう。
 家族ドラマの深い味わいを際立たせているのは、キャスト陣の名演。融通の利かない優等生タイプの長女を演じたケイト・ウィンスレットの巧いこと。さすが英国の舞台で鍛えたオスカー女優。そしてなにより、強い意志と繊細な感受性を併せ持つリリーを演じたスーザン・サランドンの存在感! 以前にちょっとお話したことがありますが、スーザンは私の知人である故ロビン・ウィリアムズ夫人の親友ということで、ニューヨーク訪問の際にはランチをご一緒したりしています。最初にお会いした時の印象は、「あら、こんなに小柄なの?」。スクリーンで見ると、たとえばオスカーを受賞した『デッドマン・ウォーキング』でも存在感が大きいから、長身の女性をイメージしていましたが、じつは小さくて華奢な体型にびっくり。性格は朗らかで、本作のリリーのようにシニカルなユーモアもある素敵な女性。ご自分の意見もはっきりおっしゃるのは、ハリウッドでも有名ですしね。それにしても、いまやカルト映画の傑作として名高い『ロッキー・ホラー・ショー』(’75年)で脚光を浴びてから、約45年間。常に第一線で活躍しているのですから、お見事ですね。

▽アカデミー賞主演女優賞を受賞したケイト・ウィンスレット主演のラブロマンス

『愛を読むひと』より

世界的なベストセラー『朗読者』を、『リトル・ダンサー』(’00年)のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。第二次世界大戦後のドイツ。15歳のマイケルは年上のハンナに恋心を抱くが、彼女が姿を消してしまうというストーリー。ひとことは、ハンナのセリフから。

I will run your bath.

お風呂にお湯を入れてあげるわ。
Point

これはいわゆる“お茶の間言葉”で、ごくごく日常でよく使われるフレーズ。この場合の<run>は「蛇口から水が流れること」をイメージして覚えてください。たとえば「The tap is running.(蛇口から水が出ているよ。)」というように。

(情報は記事公開時点の内容です)

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