菅野よう子の音楽が彩るNetflixシリーズ『カウボーイビバップ』

1998年に放送され、世界中で人気を誇るアニメ『カウボーイビバップ』が、Netflixで実写ドラマとなった。アニメのテーマ曲でもある名曲「Tank!」を世に送り出した菅野よう子が再び音楽を担当している。

Netflixシリーズ『カウボーイビバップ』あらすじ

ビバップ号クルーは賞金目当てに今日も宇宙を征く

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カウボーイと呼ばれる賞金稼ぎのスパイク・スピーゲル(ジョン・チョー)は、相棒のジェット(ムスタファ・シャキール)とともに宇宙船ビバップ号に乗りながら、賞金目当てに宇宙を渡り歩いていた。
ある日、カジノでの一件を解決したスパイクたちは、賞金首の受け渡しの際に次のターゲットの情報を聞きつける。
その男の名はアシモフ。
彼は犯罪組織の元構成員で、組織から「レッドアイ」と呼ばれる非合法薬物を盗み出して恋人とともに逃亡しようとしていた。
アシモフを捕まえるため、とある惑星に降り立つスパイクたち。
だが、裏切り者のアシモフを始末しようとする犯罪組織に雇われた謎の女・フェイ(ダニエラ・ピネダ)に襲撃されてしまい…。

ビバップと言えば菅野よう子のジャズ!

テーマ曲はアニメ版と同じく「Tank!」

アニメ版テーマ曲「Tank!」、劇中に流れるジャズミュージックなど、音楽で『カウボーイビバップ』の独特な空気感を生み出した菅野よう子。
あの雰囲気をドラマ版の世界にも生み出すべく、本作でも音楽担当として起用された。
本作の音楽について語ったインタビューがYouTubeで公開されており、その中で彼女は「こんな人生だけどまぁいっか」というサウンドを作りだそうとしたと語っている。
劇中では、賞金稼ぎを追う中でさまざまなトラブルに巻き込まれ、散々な目にあってしまうこともあるスパイクたち。
しかし、明くる日にはまた別の賞金を求めて宇宙をわたっているのだから、菅野よう子が語ったまさしくその通りに「まぁいっか」という言葉が腑に落ちる。

本作のテーマ曲は、アニメ版テーマ曲「Tank!」をアレンジして使用。
毎話、テーマ曲にあわせたオープニングムービーが流れるたびに「やはりこれがなくては…!」と思わせてくれるのだから、「Tank!」が作品にとってはもちろん、いかにビバップファンにとっても大事な曲なのかということを実感する。

もちろんテーマ曲だけではなく、劇中で流れる数々の曲も菅野よう子仕込み。
ビバップ号クルーたちの会話で聞こえてくる何とも気の抜けてしまうような音楽や、打って変わってスパイクの過去に触れるシーンでは雰囲気のあるメロディーが流れるなど、菅野よう子ディレクションによるジャズバンド「シートベルツ (SEATBELTS)」が奏でる音楽で、ドラマの世界感をしっかりと支えているのだ。

YouTubeチャンネル「Netflix Anime」にアップされた音楽制作の舞台裏に迫る動画。

アニメ版のストーリーをベースにドラマ版にアレンジ

単に原作をなぞらない実写版のオリジナリティ

「人気アニメ『カウボーイビバップ』を実写ドラマ化」と言いつつも、実は単に原作をなぞっただけではないのが本作のミソ。
各話のベースとなっているのはアニメ版のストーリーで間違いないのだが、少しずつ設定を変えたり、登場人物の関係性が変わっていたりと、ドラマ版としてのアレンジが見られる。
例えば、スパイクとジェットがフェイと初めて出会うのは、アニメ版だと第3話(フェイがカジノのディーラーをしていた時)だが、ドラマ版では第1話でアシモフを狙う謎の女として接触する。
他にも、組織の幹部として登場する「マオ」はアニメ版だと男性だがドラマ版では女性となっている、原作では雑貨屋だったアニーが本作では「アナ」に名前が変わって大きなバーを営んでいるなど。
また、本作のストーリーにもかかわるところでいうと、ジェットに娘ができていたり、スパイクと因縁をもつ男・ビシャスの戦友であったグレンがアナの店で働く従業員になっていたりと、キャラクター像が異なる大幅なアレンジをきかせているところも。

ネタバレになってしまうので多くは語れないが、本作は第2シーズンの構想が既にあることが公表されており、そのためか、ラストは原作とは違う展開で幕を閉じる。
アニメ版をベースにしながらも実は別物なんだというつもりでいると、ドラマ版ビバップワールドを存分に堪能できるのではないだろうか。

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タマラ・チュニー演じるアナ。本作ではジャズバーのオーナーとして登場。
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メイソン・アレクサンダー・パークが演じるグレンは、アナの店の従業員として登場する。

字幕でも吹替でもビバップの空気感を楽しんで

原作に近いセリフ回しは吹替版

主演を務めたのは『アメリカン・パイ』シリーズでおなじみジョン・チョー。
原作のスパイクは27歳なのに対し、ジョン・チョー自身は49歳とだいぶ年上。
しかし、ピッタリとハマっていると感じさせてくれるのは、スパイクの軽やかでありながらも過去に苛まれる“深み”を説得力のある芝居で体現しているからだろう。
ジェットを演じたムスタファ・シャキールの頼りがいがある良い奴な感じも、フェイを演じたダニエラ・ピネダのスレているくせにちょっと可愛らしい感じもキャラクター像をよくとらえており、バッチリなキャスティング。
字幕版で観る方は彼らの掛け合いをぜひ楽しみながら観てほしい。

吹替は、アニメ版でジェット役を務めていた故・石塚運昇氏に代わって参加した楠大典を除き、スパイク役の山寺宏一、フェイ役の林原めぐみ、スパイクと因縁をもつ組織の男・ビシャス役の若本規夫ほか、全て原作オリジナルキャストが担当している。
字幕と吹替ではセリフ回しが少し異なるのだが、原作の雰囲気に近い方で観たければ吹替版がおすすめだ。
おなじみの音楽に載せながら、おなじみの声でおなじみの会話が聞こえてくるのだから、それだけでもうビバップの世界が目の前に広がってくる。
一方で前述のとおり、ドラマ版とアニメ版はちょこちょこ設定が異なるため、同じ名前のキャラクターでありながらも新鮮さを感じることができるのも本作の魅力だろう。

ところで、ジェットとフェイのほかに、ビバップ号のクルーで忘れてはならないのがもう一人と一匹。
「ラディカルエドワード」の異名をもつ天才ハッカー・エドと犬のアインだ。
アインは本作第3話で登場して以降スパイクたちと旅をともにすることになるのだが、実写となると本当にただの犬で、『カウボーイビバップ』の独特な世界感によく見知った存在がポンと現れるだけで、なんだかちょっと笑ってしまうのは筆者だけだろうか。
そしてエドについては、ある話数で名前だけ登場したため実写としては出てこないのかと思いきや、意外な場面でその姿を見せてくれる。
思わぬシーンでの登場に、原作ファンなら「ここで来たか!」と思うこと間違いなしの演出だ。
日本語吹替はもちろん、アニメ版でエド役を務めた多田葵が担当している。

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Netflixシリーズ『カウボーイビバップ』

2021年11月19日(金)より独占配信中(全10話)
出演:ジョン・チョー、ムスタファ・シャキール、ダニエラ・ピネダ、エレナ・サチン、アレックス・ハッセル ほか

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