
「自分の人生を変えてくれた幸四郎さんに20年分の想いをすべてぶつけました」
「鬼平、暗殺。」という衝撃的なキャッチコピーとともに情報解禁された、松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」最新第6弾「暗剣白梅香」。この7月、時代劇専門チャンネルでの独占初放送を前に、長谷川平蔵(幸四郎)を狙う刺客・金子半四郎役、早乙女太一に今回の役柄や見どころについて話を伺った。ついに訪れた2人の初共演の機会。特別な想いがこもった作品になったそうだ。
半四郎は凄腕の剣士ではあるのですが、まるで亡霊のような……最初に人を殺めた時に自分自身の心も殺してしまった、そんなイメージを強く感じていました。自分が生きているのか死んでいるのかわからないような、心に孤独や闇を抱えた役柄は10代の頃から何度もいただいていたんです。集大成といったら少し大袈裟ですが、久しぶりに過去の自分の空気感を思い出しましたね。13歳の頃に舞台で幸四郎さんを観て、ものすごい衝撃を受けました。幸四郎さんの立ち回りは極端に言うと、「カッコよさとカッコ悪さの共存」。ヒーローなんだけど、動きのなかに危ない部分もお芝居として入れている。でもそれがあるからこそ、敵を斬った時の見栄えの良さが引き立って見える。こんなにカッコよくて面白い世界があるんだと知って、それが立ち回りをしっかりと勉強するきっかけになりました。今考えると、僕の人生が変わった瞬間と言ってもいい。だから今回の共演はそれ以来、20年越しの目標と夢がやっと叶って、とにかくうれしかったです。今までの自分が少し報われたような気持ちにもなりましたし、そのきっかけをくれた幸四郎さんに、学んできたことや想いをすべてぶつけたつもりです。
本作で最初に幸四郎さんと剣を構えて対峙した時、少しずつ間合いを詰めていきながら、あの時見ていた人がここにいるんだと、自分の過去と目の前がつながっていくような感覚がありました。これは個人的な感情なんです。幸四郎さんからしたらすごく重たい奴だったかもしれないですが(笑)、「厄介な人に惚れられてしまったな」という平蔵の気持ちとも重なりますし、お互いの思考の流れ、性格までが見えてくる場面になりました。僕が幸四郎さんの姿をカッコいいと思ったように、これからの若い世代の俳優さんにもカッコいいと思ってもらえる作品であってほしいですね。観てくださる人たちにとっても、時代劇の面白さや魅力を知ってもらいながら「鬼平犯科帳」の歴史はつながれてきた。これこらも人から人へ、つながる作品になればいいなと思います。
凶賊・蛇(くちなわ)の平十郎が、座頭を装う配下の引き込み役・彦の市(マキタスポーツ)を香具師の元締・三の松平十(中村吉之丞)のもとに送り込む。平十郎は、平十に長谷川平蔵(松本幸四郎)の暗殺を依頼。ある晩、平蔵は異様な殺気と妖艶な芳香を纏う凄腕の刺客・金子半四郎(早乙女太一)に急襲される。刺客の纏う芳香が髪あぶら「白梅香(はくばいこう)」だと突き止めた平蔵は、半四郎と彦の市の意外で皮肉な運命を知るのだった。
出演:松本幸四郎、、早乙女太一、仙道敦子、火野正平、マキタスポーツ他
© 日本映画放送
時代劇専門チャンネル 7月5日 後1.00~3.00 再放送=5・27
Photo:平野司/ Text:真鍋新一