「高橋文哉」インタビュー

東野圭吾作品初のアニメーション映画
『クスノキの番人』で主人公の声に挑む

高橋文哉

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「1人の青年が自分にできることは何なのかと
模索する姿に非常に心打たれました」

小説家・東野圭吾の同名小説が原作の、東野作品初のアニメーション映画となる『クスノキの番人』。理不尽な解雇により職を失った青年・直井玲斗は、亡き母の腹違いの姉だという柳澤千舟から命じられ、月郷神社に佇む<クスノキの番人>となる。玲斗役を担当し、長編アニメーション映画で初主演となる高橋文哉に声優としての苦労や千舟役の天海祐希と共演した感想などを語ってもらった。

声の仕事ならではの難しさを痛感

原作を読んでクスノキの存在そのものに強く惹きつけられましたし、1人の青年が自分にできることは何なのかと自分なりに模索する姿に非常に心を打たれました。
玲斗は迷いがあったり運まかせなところがあったりしますが、とても人間味があるキャラクターだと思います。誰かのために自分を犠牲にできるところは純粋にすごいと思いましたし、身近に居たらペースを狂わされそうな人だなと思うけれど、憎めないところがあって、その感覚は大切にしたいと思いました。不思議な力を持つというクスノキのことも、頭ごなしに否定するのではなく、答えを見出そうとしていく姿がとても魅力的です。
この作品には玲斗が自分の中に火を灯される瞬間と、それが消されるかのような瞬間の両方が描かれていて、彼が自分の光が何色かも分かっていない中からその色を見つけに行くような物語だと思うんです。その必死にもがきながら探す様子を声だけで演じるのは初めての経験で、とても大変でした。
声の仕事はセリフの尺やタイミング、表情も決まっていて、そこに順応して役になりきるという作業は実写作品の俳優の仕事とはまた全然別物だと思います。僕は声優としての経験がとても浅かったので、どうしても迷いが出てしまうのではないかと思いました。そこが、玲斗の人生において迷いが出る部分とリンクできたのは、芝居を作る上で役立ちました。

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緊張のなかで救ってくれたのは伊藤監督の言葉

僕のそういった揺れのようなものを見越して、伊藤(智彦)監督が、迷いも含めて序盤から流れに沿って録っていけば良い効果が出るのではないかとおっしゃってくださったことはありがたかったです。それを踏まえて全部録り終わったときに、一番最初に録った声を聞かせてくださって、僕が「もう一回やらせてください」と言ってやらせていただいたこともありました。臨機応変にやってくださって本当に感謝しています。
『ソードアート・オンライン』は見させていただいていますし、あの伊藤監督だということもすごく嬉しかったです。伊藤監督は非常に面白い方です。ユーモアがあって、つっこみにくいボケをしたりするんです(笑)。僕は緊張していましたが、初めて会ったときからその温度感で来てくださったので、親しみやすく、困ったことがあればすぐ相談することができました。
あるときに伊藤監督が「高橋文哉という声優の経験の浅い俳優が、玲斗とともに何かを乗り越えて成長していく姿を一緒に描いていきたい」ということをおっしゃって、その言葉に僕は非常に救われました。
無理に背伸びをしてやるのではなく、等身大でいいんだと思えました。玲斗として、その瞬間自分ができることをやり続けて伊藤監督に付いていけば、道は外さないと思えました。とても感謝しています。
映像やキャラクターの表現のひとつひとつのこだわりについても現場にいて、ひしひしと伝わってきました。背景に描かれたヤカンの位置ひとつにしても細かく吟味するんです。クリエイティブというか、すごいなと思って感動しました。
千舟役の天海さんと共演させていただけたことも表現面で大きな支えになりました。千舟に声を吹き込まれた瞬間、僕自身が圧倒されて。「あぁ、初めは圧倒されてしまうんだな」と実感できたので、劇中で最初に千舟と出会うシーンなどはとても演じやすかったです。そこから徐々に天海さんのお人柄に救われながら打ち解けていって、玲斗と千舟としても距離を近づけていく関係性を築くことができました。天海さんの包容力に身を任せて、芝居に臨むことができたと思います。

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玲斗の挑戦が背中を押してくれるはず

僕は壁にぶつかってしまったとき、壁が強靭だと思って挫折するのは違うと思っていて。自分が勝手に想像して硬く大きな壁だと思いこんでいるだけなので、挑まないのはもったいないと思うんです。要は心の持ちようだと思っているので、玲斗が壁に真正面から挑もうとすることにはとても共感しました。
注目していただきたいのは、やはりクスノキの全体像がわかるシーン。映像の迫力はアニメーションならではで、東野先生がこの作品をアニメーションにしたいとおっしゃった理由がとてもわかるように思います。実写では表現が難しい部分というのもありますし、アニメーションという形で具現化するのがぴったりだと感じました。
実はパワースポットといったところには、旅行した際に近くに名所としてあれば行く程度です。願いが叶うというのは、パワースポットそのものが叶えてくれたのではなくて、その願いを今自分が一番に切実に願っているということを自分が自覚して、願いを叶えるために自分が具体化していくことが大事だと思っています。今自分が本当に叶えたい願いを自分が確認することで努力の方向性が明確になるという気がします。
その行為のきっかけとしてパワースポットは存在意義があると思っていますし、僕の考え方はこの作品に通じるものがあると思っています。この作品に登場するクスノキは日本のどこかにあるのかもしれないと思わされる説得力がありますし、僕も出演したことによってパワースポットの見方が変わりました。
2026年の抱負は…年明けや節目によく聞かれるのですが、僕は先々の抱負を持たないタイプなんです。ずっと昔から変わらず「今を頑張ろう」と、ただそれだけです。
この作品はどの世代の方にも見ていただきたいですし、世代によって感じることも違うのではないかなと思います。とくに僕と同世代の20代前半の方たちは玲斗に感情移入することで、何かにぶつかっていく姿に背中を押される瞬間があると思うので、そこを見ていただけると嬉しいです。

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クスノキの番人


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©東野圭吾/アニメ「クスノキの番人」製作委員会

理不尽な解雇により職を失った青年・直井玲斗は、追い詰められた末の過ちで逮捕される。運に身を委ね、人生の選択を自ら決める意志もない玲斗の前に、亡き母の腹違いの姉だという柳澤千舟が現れる。釈放する条件として命じられたことは、月郷神社に佇む<クスノキの番人>になることだった。

●1月30日(金)全国公開
原作:東野圭吾「クスノキの番人」(実業之日本社文庫刊)
監督:伊藤智彦
声の出演:高橋文哉、天海祐希 ほか
配給:アニプレックス

FUMIYA TAKAHASHI

2001年3月12日生まれ。
2019年の『仮面ライダーゼロワン』で主演を務めデビュー。アニメ映画『ブラッククローバー魔法帝の剣』(2023)で声優に初挑戦した。その他では、NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(2025)などに出演。2026年GWには映画『SAKAMOTO DAYS』の公開も控える。

Photo:平野司 / Text:入江奈々 / Styling:TOKITA / Hair&Make:大木利保(CONTINUE)

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