中川奈月監督×福永朱梨主演|映画『彼女はひとり』をレビュー
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10/23(土)に公開される映画『彼女はひとり』。中川奈月監督の長編監督デビュー作で、主演は深田晃司監督『本気のしるし』に出演した福永朱梨。孤独を感じるがゆえに狂気に走ってしまう思春期の少女像を映し出す圧巻のドラマだ。

映画『彼女はひとり』あらすじ

飛び降り自殺から生還した少女は孤独な復讐をはじめる

高校生の澄子(福永朱梨)はある出来事をきっかけに橋から身を投げるも、死ねずに生還する。
そんな澄子に対して父は引っ越しをしようと誘うが、彼女はそれを断り、自分の意思で街に残ることを選んだ。

1年留年して学校に戻った澄子は、同級生となった幼馴染の秀明(金井浩人)を執拗に脅迫し始める。
身を投げる原因を作ったのは秀明であると主張する澄子は、秀明が教師である波多野(美知枝)と密かに交際していると言う秘密を握っていたのだ。
ひとつ、またひとつと要求に応える秀明だが、澄子の脅迫行為は次第にエスカレートしていく。
そこには過去の出来事、そして澄子の家族に関わるもうひとりの幼馴染・聡子の幻影があった…。

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インディーズの登竜門で福永朱梨が俳優賞を受賞

残酷な行為の裏に隠された思いとは…?

冒頭、主人公の澄子が橋から飛び降りるという衝撃的なシーンから始まる本作。
その後も、澄子から秀明への脅迫、澄子に襲い掛かる幻聴や幻覚、不純異性交遊や嘘の告白を強いられる秀明など、思春期の少年少女を取り巻くヘビーな展開が続く。
澄子が行っているのは疑うべくもない残酷な行為なわけで、容赦なく秀明の生活を壊そうとする彼女に不快感を覚える人もいるだろう。
しかし、それをただ残酷な行為として片づけてしまうのではなく、「何が澄子をそこまで駆り立てるのか?」「秀明は澄子に何をしてしまったのか?」という興味を持ちながらぜひ鑑賞してみてほしい。

また、孤独ゆえに狂気に走ってしまった思春期の少女を見事に体現した、主演・福永朱梨の力演も見逃せない。
普段は何かに苛立ち絶望していて、めちゃくちゃにすることを楽しんでいる澄子だが、そんな彼女の表情が普段とは違う様相を見せるシーンが時折挿入される。
その瞬間、福永朱梨の目つきがガラッと変わり、澄子という人物がただ残酷な少女ではないことを思い起こさせ、観客の心をグッと掴んで離さないのだ。
福永朱梨は本作での演技が評価され、インディーズ映画の登竜門と称される「田辺・弁慶映画祭2019」にて、みごと俳優賞を受賞している。

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学生時代の卒業制作ながら完成度の高い脚本

黒沢清、森崎ウィンらが絶賛!

たった1時間という短い映画尺にもかかわらず、孤独と狂気に振り回される少年少女たちがたどり着く結末を、等身大の学園ドラマの中で描ききった本作。
十分に練り上げられた高いクオリティの脚本でありながら、中川奈月監督が立教大学大学院の修了制作として撮影した“学生映画”であるというのだから、なお驚きだ。
その出来栄えには、中川奈月監督が師事した『CURE』『スパイの妻』などの黒沢清も拍手を送るほど。

また、本作の主演を務めた福永朱梨と、映画『本気のしるし』(深田晃司監督)で共演した俳優の森崎ウィンが福永の演技を絶賛しているほか、映画『風の電話』監督の諏訪敦彦、『ほんとにあった怖い話』シリーズの鶴田法男といった映画監督からも称賛のコメントが寄せられている。

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公開情報

彼女はひとり

公開日:2021年10月23日(土)より、K’s Cinemaほか全国公開
    ※公開劇場は公式サイトにてご覧ください。
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
脚本・編集・監督:中川奈月
出演:福永朱梨、金井浩人、美知枝、中村優里、三坂知絵子、櫻井保幸、榮林桃伽、堀春菜、田中一平、山中アラタ

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