昭和の日本映画が生んだ大きな人気ジャンル「特撮映画」。映画賞や芸術的な評価とは無縁でしたが、実は世界のSF映画に大きな影響を与えているジャンルです。1968年公開の『ガンマー第3号 宇宙大作戦』は、特撮を含めたすべてのスタッフを日本人が務め、欧米のスターが出演した日米合作映画。その後に世界で大ヒットしたSF映画の要素を密かに先取りしていた隠れた傑作です。
「天体衝突SF」の魅力
映画は宇宙ステーションの緊迫した様子から始まります。謎の遊星が発見され、このままでは地球と衝突してしまうことが判明。「天体衝突SF」と呼ばれる映画が本作の前にも数多く作られており、パニック描写やスペクタクル場面、そして衝突の危機をどのように回避するかが見どころになるのですが、ユニークなのは本作での解決方法です。それは、「宇宙ロケットで飛んでくる星に着陸し、強力な爆弾を仕掛けて爆破する」というもの。偶然かどうかはわかりませんが、これはブルース・ウィリス主演の大ヒット作『アルマゲドン』と同じ解決方法です。
未知の星から持ち帰ってしまった物体
着陸した星でのミッションは、本来の予定よりも爆破時間が繰り上がってしまうというトラブルに見舞われ、混乱気味に爆破が決行されます。失敗すればロケットごと爆発に巻き込まれてしまうという緊張感のなかで、命からがらの脱出。ここで隊員たちは、謎の液状物体が宇宙服に付着していたことに気づかぬままに宇宙ステーションに戻ってしまいます。帰投して間もなくこの物体が急激なスピードで成長、怪物化して隊員たちに襲いかかります。
増殖する不死身の宇宙生物との戦いへ
ここからは宇宙ステーションという限定された狭い空間のなか、遭遇したらまず命はないという状況で宇宙生物と隊員たちの戦いが展開されます。これはまさに、のちに『エイリアン』で描かれる狭い宇宙船内での戦いと同じで、未知の物体を船内に持ち込んでしまうまでの経緯もよく似ています。日本のB級映画をこよなく愛するクエンティン・タランティーノ監督もこの作品の先見性を見抜いていた1人で、深作欣二監督と対面した際にはこの作品のLD(レーザーディスク)を持ってサインを求めたそうです。
日本公開版の吹替も超豪華!
キャストは全員外国人。日本で知名度の高い俳優はそれほど出演していませんが、ヒロインを演じたルチアナ・パルッツィは『007/サンダーボール作戦』で悪のボンドガールを演じたことで知られています。また、本作と同時期に『キングコングの逆襲』でヒロインを演じたリンダ・ミラーも彼女の同僚役で出演しています。日本公開版では主人公のランキン中佐の声を納谷悟朗が演じているほか、村越伊知郎、北浜晴子、富田耕生ら、現在でも伝説として語られる洋画吹替のプロフェッショナルたちが集結しています。
ガンマー第3号 宇宙大作戦
3日 21:30~23:00 [再]=10・16・26