今年3月8日に劇場公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が、8月13日(金)よりAmazon Prime Videoで配信開始となる。公開当時は緊急事態下で足を運びづらい状況だっただけに、配信をきっかけに本作に触れる方もいるはず。そこで今回は、はじめて『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観るという方に向けた記事をお届けする。
まずは知っておきたい「新劇場版シリーズ」
1990年代の日本においてアニメブームを巻き起こし社会現象とまでなった、庵野秀明監督によるオリジナルアニメ作品『新世紀エヴァンゲリオン』。
その物語を再構築し、2007年公開『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を皮切りに全4部作でスタートした所謂「新劇場版シリーズ」の最終作となるのが、この『シン・エヴァンゲリオン劇場版』だ。
「新劇場版シリーズ」 のうち、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』ではTVアニメの第1話~第6話までを描き、続く『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』ではTVアニメのストーリーをもとにしながらも新たなキャラクターを登場させ、その後の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』からは従来とは全く異なるストーリーが展開。
そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、「序」から約13年、TVアニメから考えると約25年にもおよぶ、「エヴァンゲリオン」シリーズのクライマックスが描かれる。
そもそも『新世紀エヴァンゲリオン』がどんなストーリーかをおさらいしておくと、西暦2000年におきた大災害「セカンドインパクト」によって人口の半分が失われた世界、その15年後の日本を舞台に、汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとなった少年少女たちと謎の敵「使徒」との戦い、そして彼らの成長を描いた作品だ。
当時は、主人公の成長や周りとの人間関係という小さなスケールが、世界の命運という大きなスケールとつながっていくストーリーが斬新で、以降、類似するようなストーリー展開を見せる作品が多く制作されていった。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観る前に振り返り映像を
前述の通り、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は「新劇場版シリーズ」のクライマックスにあたる物語であり、一つ前の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のラストから続く展開としてスタートするため、これだけ見てもストーリーを理解することは恐らくできない。
そのため、基本的には順を追ってシリーズ作品を鑑賞することをおすすめしたいのだが、そこまでするのは腰が重いという方もいるだろう。
そんな時は、製作を担う株式会社カラーの公式YouTubeチャンネルで公開されている『これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版』を見ると良い。
こちらの動画は監督の庵野秀明が構成しているため、振り返り映像としては一番信頼度が高いと言えるだろう。
なお、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』公開時は、「Q」から約8年半経過していたことから、前3作品が動画配信サービスで配信されたり、カラーの公式YouTubeチャンネルで期間限定無料公開されたりしたほか、本編開始前にダイジェスト映像が流れるなど、クライマックスに向けたフォローがあった。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観るにあたって
今回初めて『シン・エヴァンゲリオン劇場版』および「新劇場版シリーズ」を観る場合、筆者が考える大事なパートは大きく2つではないかと思う。
まず一つ目は、冒頭のパリを舞台にしたEVA8号機とNERVのEVAによる戦闘パートだ。
画面を縦横無尽に駆け巡るEVA8号機の戦い方は、まさに“劇場版らしさ”と言えるワクワク感があるし、「対立しあう組織があって、EVAで戦っている」という構造を把握するうえでもポイントとなるパートと言えるだろう。
もちろんそれ以外にも、(ネタバレ回避のため詳細は割愛するが)CGを駆使して画面いっぱいに迫力を感じるような戦闘シーンがあるので、ぜひ実際に観て楽しんで欲しい。
その次の、「第3村」でシンジたちが過ごすパートも大事。
日本の避難村である「第3村」で生きる人々とシンジ(主人公)たちの交流がかなりしっかりと描写されるパートで、これまでシリーズに触れてこなかった方が、「どんな世界で人々は生きているのか」「登場キャラクターたちはそれぞれどんな性格をしていて、どんな関係性なのか」を理解するのにはうってつけ。
加えて、「第3村」で過ごした時間が、シンジたちにとっても大きな変化をもたらすことになるので、物語全体としても集中して観たい重要なパートになっている。
もちろん他にも見どころはあるのだが、“初めて”観る場合は上で紹介したことを意識して観てみると、少なくとも「概要が分からなくて置いて行かれる」ということは避けられるのではないだろうか。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観た後は…
冒頭より『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と「新劇場版シリーズ」について触れてきたが、“新”とつく以上は当然“旧”劇場版も存在する。
1997年に公開された第1弾『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』、その続編として同年に公開された第2弾『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』だ。
TVアニメの第25話と第26話(最終話)は、主人公たちの内面を深く描くことに注力したため、第24話までの伏線や謎を回収することがおろそかになってしまっていた。
そのことを受け、改めて完結させるために製作されたのがこちらの旧劇場版。
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』は、TVアニメ第1話~第24話までを再構築した「DEATH編」と、リメイクした第25話の前半部分「REBIRTH編」の2部構成。
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は、第25話と第26話(最終話)をリメイクした完全新作となっている。(第25話が「Air」、最終話が「まごころを、君に」)
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』および「新劇場版シリーズ」を観た後は、TVアニメと旧劇場版も観てみると、庵野秀明監督が『新世紀エヴァンゲリオン』を通して何を描きたかったのかという内面的な違いや、約25年でアニメーションの表現がどう変化したのかという外見的な違いを見比べて楽しむことができるだろう。
配信情報
配信日:2021年8月13日(金)
配信サービス:Amazon Prime Video