映画『銀河鉄道の父』(2023年5月5日公開)は第158回直木賞を受賞した門井慶喜の同名小説を映画化した作品。詩人・作家の宮沢賢治と父、家族を描いた感動の物語について、あらすじなどの情報を紹介します。
家族への愛情が詰まった映画『銀河鉄道の父』の作品紹介
宮沢賢治とその家族の物語 主人公は賢治の父・政次郎
宮沢賢治は、「銀河鉄道の夜」や「風の又三郎」、「雨ニモマケズ」など唯一無二の物語や詩で、今なお世界中から愛される詩人で作家。しかし、その作品が有名になったのは37歳で他界して以降でした。賢治の才能を信じ続けた家族が、賢治の作品を世に送り続けたため、高い評価を得るようになりました。
今作『銀河鉄道の父』の原作は「第158回直木三十五賞」受賞した門井慶喜氏の同名小説「銀河鉄道の父」(講談社)です。「宮沢賢治はダメ息子だった」という驚きの視点から、賢治への無償の愛を貫いた宮沢家の人々を父・政次郎の視点から描かれた物語です。宮沢賢治、その作品は有名ですが、それらを支えた家族は意外にもスポットライトを浴びずにきました。門井氏が家族への丹念なリサーチを実らせ、「見たこともない賢治の物語」「深い愛に涙が止まらない」などと読者を絶賛させた傑作小説が待望の映画化となりました。
『八日目の蝉』や『いのちの停車場』など、人と人とのふれあいや絆を描いた作品を描いてきた成島出監督が、見る者の心を揺さぶり、熱い涙を誘う希望の物語を完成させました。脚本はジブリ映画『かぐや姫の物語』(共同脚本)など数多くの映画やドラマの脚本を積み重ねてきた坂口理子氏が担当。
主人公で宮沢賢治の父・政次郎を演じたのは「日本アカデミー賞最優秀主演男優賞」を3回受賞した名優・役所広司です。宮沢賢治を演じたのは役所と同じ「日本アカデミー賞最優秀主演男優」受賞経験もある若手演技派俳優の菅田将暉が熱演。賢治の妹で一番の理解者であるトシ役には、大ヒットアニメ映画『天気の子』で主演を務めた森七菜がつきました。
自由気ままな息子・賢治や、賢治に翻弄される夫・政次郎を支えるイチ役には、数多くのドラマや映画に出演し、多彩な演技に定評がある坂井真紀が務めています。賢治の祖父で、一代で質屋を築いた喜助を演じたのはダンサーで俳優としても大河ドラマや連続テレビ小説などにも出演し、存在感のある演技を見せつけている田中泯が演じています。若手やベテランの演技派俳優たちが感動のドラマを創り上げています。
また、主題歌は「ありがとう」など数多くのヒット曲を発表してきた「いきものがかり」が担当し、今作のために書き下ろした「STAR」で作品の世界観を高めています。ボーカルの吉岡聖恵とギター・ピアノの水野良樹の2人体制になってから、初の映画主題歌となります。
水野が作詞・作曲を担当し、穏やかなメロディを紡ぎ、吉岡の透き通るボーカルが宮沢家の大きな愛を体感させる楽曲となっています。
感動の“実話” 直木賞受賞・門井慶喜原作の映画『銀河鉄道の父』あらすじ
成島出監督・坂口理子脚本 映画『銀河鉄道の父』は宮沢賢治の父とその家族の物語
質屋を営む宮沢家の長男として生まれた賢治(菅田将暉)は、跡取り息子として大事に育てられるが、質屋という稼業が「弱い者いじめ」だといい、家業を継ぐことを断固として拒んでいる。農業や人造宝石に夢中になり、父・政次郎(役所広司)や母・イチ(坂井真紀)を振り回していた。
さらには、宗教に身を捧げるといい家出をし、東京へ向かう。そんな中、賢治の妹で一番の理解者であるトシ(森七菜)が、不治の病と言われる結核におかされてしまう。賢治はトシを励ますために、幼い頃に約束した「いっぱいお話しを作る」という約束を果たすため、一心不乱に物語を書き続け読み聞かせる。だが、賢治や家族の願いは叶わず…トシは旅立ってしまう。
「トシがいなければ何も書けない」と慟哭する賢治に、政次郎は「その程度で諦めるのか。私が宮沢賢治の一番の読者になる」と励まし、賢治に再び筆を執らせるのだった。「物語は自分の子どもだ」と打ち明ける賢治に、政次郎は「それなら、(賢治の物語は)自分の孫だ。大好きで当たり前だ」と勇気づける。ようやく自分が進む道を見つけた賢治に、避けられない運命が降りかかる…。
映画『銀河鉄道の父』の主人公は息子想いの親バカ
キャスト紹介① 主人公で宮沢賢治の父・政次郎を演じるのは役所広司
今作『銀河鉄道の父』で主演を務めるのは名優・役所広司です。役所と言えば主演と務めた『Shall we ダンス?』(1996年公開)、『うなぎ』(1997年公開)、『孤狼の血』(2018年公開)で「日本アカデミー賞最優秀主演男優」を受賞した見る者を魅了する俳優です。その役所が今作で演じたのは「銀河鉄道の夜」などで知られる作家で詩人の宮沢賢治を溺愛する親バカな父・政次郎です。
政次郎は一代で質屋を築いた賢治の祖父・喜助の息子で、厳格に育てられ、家業の質屋を継ぎました。商才があり、地元の名士として周囲からも一目置かれる存在です。しかし、跡継ぎとなるべく長男・賢治に期待を寄せつつも、「親の心子知らず」とはよく言ったもので、肝心の賢治は質屋という稼業を「弱い者いじめ」と酷評し、家業に見向きもしません。わが道を行く賢治に振り回される親バカの父親を演じています。ただの親バカではなく、心から息子・賢治を想い、彼の作品を世の中に伝えようと奔走する素敵な父親を役所は熱演しています。役所が演じる家族想いの政次郎の姿に涙する人が多いと思います。
成島出監督は原作を手にし、映画化を想像した際、厳しさと愛らしさが同居する宮沢政次郎役は「役所広司しかいない」と思ったそうです。これまで演じてきた役柄でコメディぽい役や、ユーモラスのある役、鋭い眼光みなぎる役柄を演じてきた役所への絶対的信頼があるようです。
役所は『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(2011年公開)、『ファミリア』(2022年公開)に続く、成島出監督とのタッグとなります。役所の良さを知り尽くした成島出監督が描き、役所広司が演じる宮沢賢治の父が楽しみですね。
偉大な詩人・作家の宮沢賢治はダメ息子だった!?
キャスト紹介② 成島出監督が惚れ込んだ菅田将暉
主演・役所広司の向こうを張って、ダメ息子・賢治を演じているのは菅田将暉です。菅田も役所同様に「日本アカデミー賞最優秀主演男優」受賞経験があります。2017年公開の『あゝ、荒野前編』で栄冠に輝きました。2009年にドラマ『仮面ライダーW』でデビューして以来、多くの映画・ドラマ作品で幅広い役柄を演じてきました。現在年齢が30歳の菅田ですが、すでにキャリアは十分で、年々、その演技の深みや存在感が増しているように感じます。
今作の賢治役でも、多面的な表情を見せてくれます。家業を継ぐことを嫌い、己の道を行く放蕩息子でありつつも、病に倒れた妹を想い、ひたすらに物語を作る良き兄でもあります。そして、自らも病に倒れて弱っていく姿をリアルに演じています。
成島出監督は役所同様にダメ息子賢治役についても「菅田将暉しかいない」と直感で思ったといいます。成島出監督は菅田の出演作品を何本も見たといい、「感性がずば抜けている」と感心したとし、父・政次郎や家族を振り回す賢治役に適任だと思ったそうです。
劇中の賢治は坊主頭ですが、菅田と言えば、演じる役柄・キャラクターに合わせ、アフロや坊主など独特のスタイルを披露してきました。今作での坊主頭も自然体で、時代背景にマッチしています。もちろん、坊主頭だけでなく、発する方言なども堂に入っています。成島出監督が描いた【親バカ×ダメ息子】は、初共演となる【役所広司×菅田将暉】でケミストリーが起こり、完成度の高い作品になっていると思います。
天才・宮沢賢治の理解者でかわいい妹・トシ
キャスト紹介③ 「昭和を感じる」平成生まれの森七菜
ダメ息子であった宮沢賢治が、詩人・作家として進むきっかけとなった存在が妹のトシです。トシは賢治の一番の理解者で幼い頃に「いっぱいお話しを作る」という約束を賢治にさせます。しかしながら賢治は家業に背を向け、行く道が定まらず、トシをはじめ宮沢家のみんなをヤキモキさせます。一方、頭脳明晰なトシは女学校の教師として働いていましたが、結核におかされてしまいます。当時、結核は「不治の病」といわれる難病でした。そんなトシを励ますために、賢治は「物語」を書き、それを読み聞かせることにしました。
賢治にとって重要な存在であったトシを演じたのは森七菜です。菅田とはドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(2019年放送)と共演しています。その時は教師と先生という役柄でした。森もまた成島出監督が惚れ込んだ存在のようで、森が出演した映画『ラストレター』(2020年公開)の演技を見て絶賛。「昔の昭和の女優さんのような魅力がある」と、若干21歳の若手俳優に注視しています。
森はトシを演じたことについて「名作(「銀河鉄道の父」や「風の又三郎」)たちが生まれた時間を肌で感じることができたことは、今後の人生においてもとても貴重で豊かな経験になりました」とコメントし、感無量の様子でした。“昭和の魅力”を感じさせる“平成生まれ”の森が演じるトシを、“令和”という現代でみて、“タイムリープ”的な感覚を味わってみましょう。
偉大な宮沢賢治の父が主人公 映画『銀河鉄道の父』みどころ
成島出監督に惚れられた役所広司が共演を熱望
今作は、キャッチコピー「きっと、家族に会いたくなる」とあるように、「家族愛」がテーマとなっています。宮沢家の大黒柱である宮沢政次郎を中心に描かれています。今作について、成島出監督は「希望は必ずあるという物語を描くことができた」と自信をうかがわせています。さらに「ここまで究極に人を愛することができるという、まさに今、必要な映画ではないでしょうか」と、自身が惚れ込んだキャスト陣が演じる、家族の物語に手ごたえを感じている様子。
また、主人公の宮沢政次郎を演じた役所広司は、息子・賢治役の菅田将暉について「大好きな俳優」といい、「いつか共演したかった」と共演を熱望していたことを公言。一方、菅田も役所について「役者としてはもちろん、人として本当にかっこいいなと思います」と、役所広司に対し、羨望のまなざしを送っていました。
そんな共鳴しあう二人が演じる「親子愛」がリアルに感じられるシーンが見どころだと思います。父子のぶつかり合いや、包み込むような愛情の重なりなど、「親子愛」や「家族愛」を感じるシーンが満載です。
本年2023年は宮沢賢治がその生涯を終えてから90年となる年です。昭和、平成、令和と時代が変わろうとも「家族愛」や「親子愛」は変わらないと思います。今作『銀河鉄道の父』では、宮沢家の「家族愛」や「親子愛」、「兄妹愛」があふれています。『銀河鉄道の父』を見れば、ちょっとでも自分の家族や大切な人に会いたくなる作品ではないでしょうか。さらには、今作の原作である門井慶喜氏の同名小説「銀河鉄道の父」を読んでみたいという気持ちになる人も増えることでしょう。
現代の日本は「少子化」が問題視されており、未婚率は高くなり、出生率は低くなっています。「家族愛」や「親子愛」などを特集するニュース番組や、メディアの記事なども目につきます。それだけ、現代の日本や世界にとって大切にしたいのが「家族愛」や「親子愛」なんだと思います。今作はそんな現代に必要なものを投げかけているように感じてなりません。まさに「日本中に届けたい感動の物語」です。
映画『銀河鉄道の父』の主題歌は愛情が伝わるメロディ
いきものがかりが歌う主題歌「STAR」を紹介
今作の主題歌を担当したのは「いきものがかり」です。1999年に男女3人で結成したグループ。これまでドラマやアニメ、映画の主題歌を数多く担当してきました。今作の主題歌「STAR」は『銀河鉄道の父』のために書き下ろした楽曲。ボーカル担当の吉岡聖恵と、ギター・ピアノを担当する水野良樹の2人体制となり、初の映画主題歌となります。
「STAR」について吉岡は同曲をレコーディングするタイミングが、出産間近だったといい「この曲に親子の関係をおもいながら、あたたかな気持ちで歌わせて頂きました」と、自身とお腹の中にいた自身の子どもとの親子愛に重ねて感情移入したこと告白。同曲を作詞・作曲した水野は「誰かが誰かを肯定することを、優しく包み込めるような楽曲にできればいいなと思ってつくりました」と、今作のストーリーに重ねて曲作りをしたことを明かしました。
「STAR」は作品のテーマである家族愛に寄り添い、温かいメッセージが詰まったミディアム・バラードに仕上がっています。編曲を担当したのは本間昭光で、いきものがかりとは大ヒット曲「ありがとう」(2010年発表)など多数の楽曲で携わっています。「ありがとう」はNHKの連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年放送)の主題歌として多くの人に愛されています。「ありがとう」もドラマのために水野が書き下ろし、本間がアレンジを加えて完成させました。「ありがとう」もドラマのストーリーに沿った「夫婦愛」「家族愛」が感じられる楽曲。「ありがとう」という感謝の言葉から始まる心が優しくなるメロディでした。「STAR」も穏やかなメロディを紡ぎ、吉岡の透き通るボーカルが宮沢家の大きな愛を体感させる楽曲となっています。
映画『銀河鉄道の父』スタッフ&キャスト情報
脚本、音楽担当も実績十分な面々
<作品情報>
監督:成島出(『八日目の蟬』『いのちの停車場』『ソロモンの偽証』)
脚本:坂口理子(『かぐや姫の物語』『メアリと魔女の花』)
原作:門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社)
音楽:海田庄吾(『百円の恋』『北の桜守』)
主題歌:いきものがたり「STAR」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作会社:キノフィルムズ/ツインズジャパン
製作会社:木下グループ
配給:キノフィルムズ
公開:2023年5月5日
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマン
出演:役所広司/菅田将暉/森七菜/豊田裕大/坂井真紀/池谷のぶえ/水澤紳吾/益岡徹/田中泯ほか